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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード11 環状街道の行商人
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生きる目的 その3

 安宿の硬いものではあるが久しぶりのベッドでの就寝。シャルルたちは旅の疲れを取るためゆっくりと休む。


 そしてもうすぐ昼という時間、従業員に追い出されるように宿を出た。


 適当な飲食店で朝食を兼ねた昼食、いわゆるブランチを取ると、シャルルは今日も倉庫街でザルツァーフェンまで乗せてくれる馬車を探す。だが、やはり長旅に子供を同行させる事を嫌がり乗せてくれる馬車は見つからない。


 そしてこの日も結局見つからず、空も茜色に染まりつつある夕刻になった。


「商店街に戻って夕食にするか……」


 ここは都市なだけあって人も多い。そのおかげで商店街にも活気があり、多種多様な飲食店もある。その中にはラーメンやカレーを出す店、お好み焼きっぽいものやとんかつらしきものを出している店もあった。


 どれもこの世界に来る前に良く食べたものだ。


 さて、何を食べようか……そうシャルルが思案していると、急にステラがその場に座り込んで言う。


「しゃるー。すてら、おなかぺこぺこ。もーあるけない」


「おぶってやるから店まで我慢しろ」


 あまり甘やかすのも良くないが、今日は結構歩いたしな。そう思いシャルルはかがむ。


 だが、今日は一食しか食べてないからなのか、それとも歩き回って疲れたのか……よほどお腹がすいていたらしく、ステラは癇癪を起こしたように空腹を訴えた。


「おなかすいた! おなかすいた! おなかすいた!」


「そう言われてもなぁ……」


 商店街に行くまで非常食の干し肉でもしゃぶらせておくか……そう考えたシャルルの目に、一軒の食堂らしき建物が映る。それはこういうところには良くある定食屋。近辺で働く人向けの店だ。


 恐らく値段は安く量は多いが味はそれなりで、メニューは少なくA、B、Cの定食から選ぶような感じだろう。


 もっとうまそうなものが食べたかったんだが……しょうがないか。


 そう考え、シャルルはステラをおぶうとその食堂に向かった。




 食堂に到着したシャルルは引き戸を開け中に入る。するとそこは絵に描いたような大衆食堂だった。


 複数のオイルランプが放つオレンジ色の光に照らされた店内は、暗いと言うほどではないがやや薄暗く、まるで傘つき裸電球に照らされたようなレトロな雰囲気をかもし出している。


 席は厨房と向かい合うカウンター席とシンプルな四角い机に丸イスで、これまたお約束通り。それらの席には倉庫街で働くのに相応しい体格の男たちが座り、そろそろ夕食の時間という事もあってか店内は混雑と言うほどでもないがなかなか盛況だ。


 メニューはおおむねシャルルの予想通りで、二種類の定食と追加の小鉢が数種類。定食は主食、おかず、汁物の三点で構成され、小鉢は漬物やミニサラダ、冷奴や酢の物など。そして、ほかには飲み物として酒とオレンジジュースがある。


 定食は量の割りに値段が安く、小額の追加で主食と汁物を大盛りにする事も可能。小鉢も安いが内容は値段なりで、酒は酒場より少し安いがオレンジジュースは少し高い。


 店員は数人居るが給仕は無し。カウンターで料金と引き換えに盆に載った定食などを受け取り自分で席に持っていくスタイルだ。


 シャルルは宿場町ランジュルングでの失敗を踏まえ、定食一つを大盛りで頼んで取り皿を頼む。そして、それだと店員が良い顔をしないだろうと思い、追加でミニサラダを二つ頼んだ。


 そのときステラがジュースをねだったが、高いので風呂のあとに買ってやると約束してここでは我慢させた。


 商店街の飲食店と違い、この店は小さな子が来る事を想定していない。そのため子供用のイスや普通のイスに乗せて高さを調節するものなどは無く、ステラを一人で座らせるとテーブルの位置が高すぎる。


 仕方ないのでシャルルはテーブル席の一つに着き、ひざの上にステラを座らせる事にした。


「ごっはん~ごっはん~」


「こら、動くな」


「はーい」


 嬉しそうに体を揺らすステラを落ち着かせ、買ってきた定食からステラの分を取り皿に取り分ける。買ってきた定食は、主食が米でおかずはチキンカツ。汁物はきのこが入った味噌汁だ。


 サラダは適当な大きさにちぎった数枚のレタスの上に、スティック状のきゅうり、セロリ、人参、大根が乗っていて、フレンチドレッシングがかかっていた。


「よし、食べよう。いただきます」


「いただきまーす」

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