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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード10 手の届く範囲
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紅蓮の竜騎士、再び その3

 幸い帝国内でシャルルが紅蓮の竜騎士である事を知っているのはヴォルフだけ。なのでたまたまグリュンバルトに居た紅蓮の竜騎士がドラゴンを倒しても、対外的には特務騎士シャルルがドラゴンを倒したとはならない。


 そもそもドラゴンと戦うのに現在の装備(まともな装備は漆黒のローブのみ)では、負けはしないだろうが少し心許無い。それに引き替えドラゴン装備は対ドラゴン専用装備。ドラゴンには絶対的な威力を持つし、正体はばれないしで良い事尽くめだ。


 もちろん紅蓮の竜騎士としてドラゴンを倒した場合、問題がないわけではない。せっかくここまで逃げてきたというのに、グリュンバルトに居る事がリベランドに知られてしまうだろう。


 とはいえすぐには伝わらないだろうし、この件が終わればすぐ旅立つ。それに帝国で活躍すれば、紅蓮の竜騎士を敵に回すのは帝国と事を構える事になると勝手に勘違いしてくれるかもしれない。デメリットは許容範囲と言えるだろう。


 そう考え、シャルルは紅蓮の竜騎士としてドラゴンと戦う事に決めた。


 とはいえこっそり紅蓮の竜騎士となって倒してくるとなると、それはそれで問題が発生する。


 紅蓮の竜騎士として戦っている間、シャルルは現場から居なくなるわけだが――それをシャルルが逃げ出したとされてしまう可能性も否定できない。


 防衛参加のために子爵に移動手段まで借りているのだ。そんな事になったら大問題に発展する。


 そういう憂いをなくすには、やはり誰かのフォローが欲しいところ。それもなるべく理解がある有力な人物のフォローが。


 伯爵は領主なのでこの都市においては最有力者。彼にフォローしてもらえれば問題は解決する。


 確かに伯爵とは数日程度の付き合いしかないが――誠実で信用できる人物だと感じるし、子煩悩で職務に忠実、皇帝への忠誠心も高いと感じられた。


 娘の友人の家族で皇帝の友人でもあり、そしてドラゴンを倒し自らが治める都市の被害を防いだ恩人に対し不誠実な対応は取らないはずだ。


 そう考え、シャルルは伯爵だけに正体を明かす事を決める。そして、とりあえず彼は伯爵が紅蓮の竜騎士を知っているか確かめる事にした。


「閣下、つかぬ事をお聞きしますが……紅蓮の竜騎士なる者をご存知でしょうか?」


「ああ、一時期話題になっていたな。確かドラゴンを単騎で倒し、リベランドの英雄大公、聖王連合の再臨の聖騎士に続く第三の新英雄と噂される人物だとか……」


 伯爵の答えにシャルルは思う。


 ヴォルフが知ってたからラーサーとやりあったところまでが知れ渡っているのだと思ったが、そうでもないのだな……と。


 だが、ドラゴンを単騎で倒したという一番重要な部分は伝わっているので問題ない。


「帝国にも彼のようにドラゴンを単騎で倒せるような者が居れば良いのですが……」


「そうだな。だが、居ないものは仕方ない。我々はできる事をするだけだ」


「そうですね」


 あとは伯爵に自分が紅蓮の竜騎士だという事を打ち明けるだけなのだが、知られる人数はなるべく少ない方が良い。理想は伯爵一人だけだ。


 それに装備を換装するところは誰にも見られたくない。となると換装後に伯爵に打ち明けるのが理想。そこでシャルルは部屋を借り、そこに伯爵を呼ぶ事にした。


「現地に行く前に準備をしたいのですが……以前お借りした部屋をお貸しいただく事はできないでしょうか?」


「ああ、かまわんよ。清掃も終わっているだろうし、基本的に同じ部屋を連続で使う事はないから空いているはずだ」


 そして伯爵が片手を軽く上げると控えていた執事が言う。


「では、ご案内致しましょう」


 だが、シャルルは軽く手のひらを向け拒否のジェスチャーをすると言った。


「いえ、場所はわかるので案内は不要です」


「左様でございますか」


「それと、閣下にお見せしたいものがあるのですが――それは皇帝陛下にも関係するものなので、信頼の厚い者であったとしてもほかの人には見せられません。のちほど閣下お一人で部屋の方にお越しいただけないでしょうか?」

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