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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード9 国の行く末を憂う老人
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魔導帝国の皇帝 その4

 彼らが前に会ったのは約二ヶ月前。なので、久しぶりと言えばそうかもしれないし、そうでもないと言えばそうでもないかもしれない。


 そのせいか、二人は続く言葉が思いつかずしばし沈黙する。


 そしてその状態が少しだけ続くと、二人の会話を邪魔しないようにと黙っていたステラがしゃべっても良さそうだと思い挨拶を始めた。


「おじーちゃん、りおーね、こんにちは」


「ああ、こんにちは」


「あ、こ、こんにちは~」


「お久しぶりです。シャルル様、ステラ様、シルフィ様」


 ステラがぺこりと頭を下げるとヴォルフも挨拶を返し、流れに乗ってシルフィも挨拶をするとリオーネも丁寧に挨拶をする。


 だが、その挨拶に参加しなかったシャルルはヴォルフをいぶかしげに見ながらつぶやく。


「陛下……ね」


 シャルルのつぶやきにヴォルフはニヤリと笑う。


「ふむ。では改めて自己紹介でもしようかのう。ワシの名はヴォルフ。ヴォルフ・ロットン。またの名を魔導帝国皇帝ロットベルン二世と言う」


 得意げなヴォルフにシャルルは指先で額を押さえる。


 確かに初代皇帝の弟子なので、過去にはそれなりの地位にあっただろうと思ってはいた。例えば宰相、将軍とかそれに準ずる役職や地位に。


 だが――齢1000を越えていまだ現役というのはさすがに予想外。とっくに現役を退き隠居の身だと思っていた。だから学院で講師をしているのだろうと。


 それが現役、しかも皇帝だったとは……。


 シャルルがそんな事を考えていると、ヴォルフに続き部屋にいる者たちが次々と自己紹介を始める。


「じゃー、すてらもじこしょーかいするね。えっと、すてらのなまえはすてら。しゃるーのおくさんでいちのかぞく!」


「わたしはシルフィ。ごしゅじんさまのいちのこぶんよ」


 誇らしげに胸を張る二人に微笑むと、次は優雅にお辞儀をしながらリオーネが言う。


「私はリオーネ。ヴォルフ様の忠実なるしもべにして専属メイドでございます」


「……これ、私も言う流れか?」


 シャルルがそう言うと全員が彼を見て頷く。


 それを見て、これは逃げられない感じだな……と思い、彼は咳払いを一つすると口を開いた。


「私は――シャルルだ」


 そして、しばしの沈黙。


「それだけー?」


「もっとこう、なんかあるじゃろ」


「ごしゅじんさま、がんばれ!」


「皆様期待しておいでですよ」


 これはもう少し何か言わないと終わらない流れだな……そう思ったシャルルは観念すると――


「我が名はシャルル。かつては英雄、紅蓮の竜騎士と呼ばれた事もあったが――今はしがないただの旅人よ」


「おおー!」


「さっすがごしゅじんさま」


「ふぉっふぉっふぉ、なかなかやるのう」


「ふふふ、素敵ですよシャルル様」


「ぐっ……」


 思わず乗ってしまったが、なんという羞恥プレイ……。


 まあ、それはそれとして――


「ところでヴォルフ。あんた、学院の講師じゃなかったのか?」


 そこに突込みが入るとわかっていたのであろうヴォルフは、待ってましたとばかりに口角を上げる。


「それもやっとるぞ」


「……なるほど」


 ヴォルフ的にはシャルルが勝手に『学院の講師』だけをしていると思っただけで、『皇帝』である事は言ってないだけなので嘘はついていないという事なのだろう。


 シャルルとしては相手の勘違いを狙うのは嘘と同じだと思うのだが――実害があったわけでもないので今回はスルーする。


「ところであんた、この前『帝国で暮らすなら必ず大きな助けになるものをやろう』と言ってただろ? 今日はそれをもらいにきたんだが……何をくれるんだ?」


「ほう。帝国で暮らす気になったか。確かに帝国はそれなりに住みやすい国じゃしのう。その気になってくれたのならワシとしても嬉しい限りじゃ」


「特別住みやすいとまでは思わないが……悪くはないとは思う」


 ヴォルフはシャルルの発言に頷くと言う。


「悪くはない……か。なら、おぬし自身で特別住みやすい国にしてみてはどうかの?」


「どういう意味だ?」


 発言の意図が読めずシャルルは首をかしげる。


 するとヴォルフはニヤリと笑った。


「そのままの意味じゃ。のう、シャルルよ。ワシがお前にやりたいもの、それはこの国じゃ! おぬし、ワシのあとを継いで皇帝になってくれんか?」

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