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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード8 帝都までの道
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安住の地を求めて その1

 ヴィアントシティにしばらく滞在したシャルルは、酒場や商店などを回り交易都市ゼントルタッドまで乗せてくれる馬車を探す。そして丁度良い行商人を見つけ、水や明かりの供給を約束する事で格安で同行させてもらえる事になった。


 その行商人はヴィアントシティの東に位置する大都市、防衛都市ヴァイツェンフィールの交易ギルドに所属する行商人だが、今回は行商ではなくゼントルタッドまで荷物を運ぶ仕事をしているらしい。


 大陸北部でも有数の麦の産地であるヴァイツェンフィールに麦を買い付けに来たゼントルタッドの商社が、自前の馬車で運びきれないほど仕入れたため急遽運搬を依頼されたんだとか。


 なのでゼントルタッドまでは商社の隊商と同行なのだが、その行商人はあくまで部外者なので商社お抱えの魔術師や秘術師なんかは頼れない。


 もちろん危機的状況になればその限りではないが、基本的に水や明かりの供給なんかは期待できないので、魔術師のシャルルは大歓迎との事。


 そして隊商と共にヴィアントを出発したシャルルたちは、二週間程度でゼントルタッドに到着した。


 ゼントルタッドは大都市なので、当然中に入るには身分証が必要となる。


 シャルルたちは持っていないので、ここまで連れて来てくれた行商人とは門の外で別れた。


 行き交う人々を見ながらシャルルは考える。


 とりあえずの目的地までは来たわけだが――これからどうしよう?


 ゼントルタッドは帝国のほぼ中央にあるのでリベランドからはかなり遠い。さすがにここまで追っ手が来る事は無いだろう。


 そもそも来たとしても基本的には返り討ちにできるので、追っ手を恐れるのは気が休まらないからに過ぎない。今までも来なかったし、この辺で追っ手などいないと気持ちを切り替えて適当な町で落ち着くのもありだ。


 では、どこに落ち着くか?


 落ち着くにはやはり安心して住める場所である必要がある。なので、できれば町や村ではなく都市が良い。しかし都市に入るには身分証が必要だし、住むとなると恐らく居住権的なものも必要になるだろう。


 だが、シャルルはそれらを手に入れる方法を知らない。


 さて、どうしたものか……そこまで考えヴォルフが『帝都に来い。そこで帝国で暮らすなら必ず大きな助けになるものをやろう』と言っていたのを思い出す。


 ヴォルフは帝国の貴族。それもただの貴族ではなく、初代皇帝である竜狩りの魔導師の弟子だ。現在は魔導学院の講師らしいので隠居みたいなものだろうが、それでもそれなりの権限を持っている可能性が高い。


 くれると言っていたのは帝国で暮らすのに大きな助けになるものとの事だが、物理的な物ではなく市民権的な都市での居住許可なんかをくれる可能性もある。


 配下にしたがっていた事を考えるとできれば借りを作りたくはないが、ステラのためになら多少は受け入れる事を検討しても良いだろう。


 ここから帝都ロットブルクに行くにはとりあえず街道を西に進む必要がある。


 そこでシャルルは門から出て街道を西に向かおうとする馬車に声をかけた。


 当然だがいきなり頼んで乗せてくれる馬車など簡単に見つかるはずもなく、シャルルたちは門の前で夜を明かす事になる。


 小都市ベルドガルトのときはその日の内に見つかったのだが――あのときは単に運がよかっただけなんだな……とシャルルは思う。


 確かに門には警備の都市兵も居るし、門が閉まったあとには開門を待つ者なども居る。なので旅の途中でする野宿より遥かに安全だ。


 だが目の前に都市があり、その中には宿もある。そう思うと門の前での野宿というのはなんとなく気が滅入ってしまう。


 それがいつ終わるかもわからず何日も続くとなるとなおさらだ。


 結局二日目も見つからず、このまま四日目くらいまで見つからなかったら歩くか……とシャルルは思ったのだが、三日目の午前中に運よく乗せてくれる馬車が見つかった。


 馬車の持ち主は運送業を営む青年二人組み。彼らはこの都市と西にある宿場町イグナスを定期的に行き来していると言う。


 シャルルは明かりや水はもちろんの事、到着後に荷卸しも手伝うと言う約束で、彼らの馬車に同乗させてもらえる事になった。





 宿場町イグナス。この町は分類上、町となっているが、一般的な町とは少し違う。


 一般的な町の場合、近くにある都市の領主が領有している場合が多く、その場合は町長が統治を委託されている形になっている。


 だがこの町は子爵領で、領主が直接統治している完全に独立した町だ。


 規模も町としては大きく、それなりに立派な壁に囲われている。強いて言うなら準都市シティに準ずる感じなので、準々都市と言ったところ。


 とはいえ所詮は町なので、入場審査はかなりゆるくほとんど誰でも入れる。他の町と違うのは、シティより安いとはいえ入場料を取られる事くらいだ。


 そんなイグナスを目指し交易都市ゼントルタッドを出てから一週間ちょっと。シャルルたちは無事この町に到着する。


 そしてシャルルは入場後、約束通り馬車の荷卸しを手伝った。


 このときシャルルは雪かきでも活躍したアンチグラヴィティを使って重い荷物を軽々と運ぶ。


 その様子を見てここまで連れて来てくれた運送業の二人は驚き、いつも通り何もしていないステラとシルフィがなぜか自慢げに胸を張っていた。

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