表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード7 伝説と生きた男
156/227

エトランゼ(よそ者) その3

 しばし沈黙が続くシンキングタイム。クッキーを頬張りつつ茶を飲み、次は何を聞こうかとシャルルは考える。


 そんなときノックの音がして扉が少し開き、中を覗き込んでからリオーネがホールケーキを乗せたワゴンを押しながら入ってきた。


 それを見て、ステラが体を左右に揺らしながら謎の歌を歌いだす。


「けーき♪ けーき♪ あまくてふわふわ♪ くりーむもふわふわ♪」


 ケーキは切り分けられ、ステラ、シャルル、ヴォルフの前に並ぶ。そしてステラは不器用にグーでつかんだフォークを使い、器用にケーキを食べ始めた。


 それを横目にシャルルは尋ねる。


「そのメイド、人ではないだろ?」


「やはりわかるか」


「まあな」


 軽く笑うとシャルルは続けて聞く。


「貴族の家には良くいるのか?」


 すると今度はヴォルフが軽く笑う。


「まさか。リオーネは遺跡で見つかったアーティファクト。人造マナイーター、マギアドールじゃよ」


「人造マナイーター?」


「そうじゃ、古代魔族が作った人造のマナイーターじゃ」


 という事は、だいたい想像通りか……そう思ったシャルルは確認する。


「もしかしてゴーレムも人造マナイーターなのか?」


「そうじゃ」


「ならば、大別するとドラゴンもゴーレムもマギアドールも同じ種類という事か?」


 その質問にヴォルフは軽くあご髭を触って考える仕草をした。


「うーむ。まあ人造と天然の差はあれど、ざっくり分けるとそうじゃな。そういう分け方ならおぬしが連れているエレメンタルロードもそうじゃ」


「エレメンタルロード?」


「ん? 違うのか?」


 アナライズで見るとシルフィのクラスはエレメンタルマスターでエレメンタルロードではない。


 しかしクラスがファイター(戦士)の騎士だっているのだから、クラスと一般的な名称が違う可能性も十分に考えられる。


「お前ってエレメンタルロードなのか?」


 シャルルがそう聞くと、シルフィは首をかしげて言う。


「さあ……」


「じゃが、マギアクラスチェッカーではクラス3じゃった。普通のエレメンタルはクラス1じゃから少なくとも普通のエレメンタルではなかろう」


「んー。まあ、そうかもな」


 シャルルはそう言って言葉を濁す。


 彼は一瞬だけエレメンタルリングから召喚したと教えようかと思った。


 だが、たぶん教えたところでシルフィがそのエレメンタルロードという者なのかはわからないだろう。


 ならば教えてもメリットは無い。


 そう思い教えない事にした。


「そういえばさっきの眼鏡、マギアクラスチェッカーだったか。あれって魔法的潜在能力しかわからないといっていたが、なんでシルフィやリオーネのクラスまでわかるんだ?」


「それはマナイーターの能力が魔法的なものだからじゃよ」


 それを聞き、シャルルはドラゴンやゴーレムの生命力がマナに似た気配だった事を思い出す。


「という事は、ドラゴンやゴーレムはともかく、エレメンタルやマギアドールなら、スクロールを使えば魔法を使えるという事か?」


 シャルルの質問にヴォルフは軽く首を振る。


「いや、使えん。そもそも魔法とは、マナイーターの力をスクロールを使って才能がある人類にも使えるようにしたものじゃからな。それにエレメンタルはスクロールなど使わなくても魔法のような力を使えるしのう。マギアドールは魔法のような現象を起こすことはできぬが、マナをフォースやオーラのように使える事がわかっておる」


「なるほど」


 なんとなく納得しシャルルは頷く。


 そしてなんだか自分ばかり質問しているような気がするな……と思いヴォルフに聞いた。


「ところで、もう私に聞きたい事は無いのか?」


 するとヴォルフはあご髭を触りながら考える仕草をする。


 そして軽く頷きながら言った。


「ふむ。特には無いな。ワシが知りたかったのはその子――ステラがエトワールであるかどうか、そうであった場合はどこの遺跡に居たのかという事。あとはおぬしがエトランゼなのかどうかという事くらいじゃ」


「では、もう私に聞きたい事は無いと?」


「細かい事を言い出したら切りが無いが……一番聞きたかった事は聞いたかのう。おぬしはどうじゃ? もうワシに聞きたい事は無いのか?」


 逆に聞き返され、今度はシャルルがあごに手をあて考える。


「そうだな……ならば聞くが、あんたが会った事があるエトランゼはミルフィーユだけか?」


 その質問にヴォルフ少し考える仕草をしてから言う。


「確認が取れているのはそうじゃな。じゃが――恐らく聖銀の勇者もエトランゼじゃろう。彼の者がそう呼ばれるのは聖王と同じ鎧を身に着けていた事に由来するからな」


「他の五英雄にそれらしき人物は?」


「師はエスペランスじゃから違うじゃろうし、活火山の超戦士や魔剣美姫はミルフィーユや聖銀の勇者のように急に出現したわけではないから違うじゃろう」


「なるほど」


「他に聞きたい事は?」


「そうだな……」


 ヴォルフは英雄、竜狩りの魔導師の弟子。そして聖王こと白銀の聖騎士と会った事もあるという伝説と共に生きた人物。


 彼らの話は本で読んだが、この期を逃せばそれを実際に知る者から聞く機会などもう無いだろう。


「あんたの師匠、竜狩りの魔導師や共に戦ったという白銀の聖騎士の話を聞きたい」


「ふむ。かまわぬが……その話はちと長くなるぞ?」


 シャルルはいつの間にかシルフィを抱えながら自分に寄りかかって眠っていたステラの頭をなでながら言う。


「あんたさえ良ければ、この子が起きるまで聞かせて欲しい」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この話と同一世界で別主人公の話

『小さな村の勇者(完結済)』

も読んでみてください

よろしければ『いいね』や『ポイント』で本作の応援もお願いします

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ