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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード7 伝説と生きた男
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エトランゼ(よそ者) その1

 ヴィアントシティ到着早々、シャルルたちは五英雄の一人、竜狩りの魔導師の弟子だという老紳士と出会い、貴族居住区にある屋敷に招かれる事となった。


 屋敷に着くと執事らしき初老の紳士に迎えられ、シャルルたちは応接室に通される。そこは絵画や彫刻、花などで飾られ、見事な大理石のテーブルとそれを囲むように革張りのソファーが置かれていた。


 そして、シャルルたちが装飾品などを眺めながらしばらく待っているとノックの音が響く。


 扉の前に控えていた執事がすぐさま扉を開けると、老紳士がメイドを伴い入ってきた。


「では、私はこれで失礼致します」


「うむ。ご苦労」


 主人の入室を確認すると執事は深々と頭を下げ出て行く。


 それを見送った老紳士は立ったままのシャルルたちにソファーを勧めた。


「まあ、おかけくだされ」


「ああ」


 促されるままシャルルはソファーに腰掛ける。


 そしてステラは――シルフィを抱えたままシャルルのひざの上に座った。


 向かいに座った老紳士は微笑みながらその様子を見ていたが、シャルルはステラを持ち上げつつ立ち上がり右隣に座らせる。


 するとステラはシャルルのまねをして、抱えていたシルフィを右隣に座らせた。


 だが、シルフィは飛び上がるとシャルルの頭の上に乗っかる。


 それを見たステラは「しるふぃ、ずるい!」と言うとシャルルにのしかかるように抱きついた。


 そんな一連の流れを微笑みつつ眺めていた老紳士だったが、咳払いを一つすると言う。


「オホン……そろそろ良いかの?」


 それにシャルルは苦笑しつつ答える。


「ああ。まずは自己紹介かな?」


 老紳士はシャルルの言葉に軽く頷くと口を開く。


「では、ワシから。ワシはヴォルフ。ヴォルフ・ロットン。デクレシス魔導学院で魔法歴史学の研究と講師をやっておる。見ての通り魔導帝国の貴族じゃ」


 そしてヴォルフは斜め後ろに控えるメイドを軽く見て続ける。


「そしてこやつはメイドのリオーネ」


「リオーネです。どうぞお見知りおきを」


 紹介を受けてリオーネは優雅にお辞儀をした。


 自己紹介を受けシャルルは考える。


 デクレシス魔導学院。それは灯火の魔女ことスージーが卒業した学校で、帝都にある大陸有数の学府と聞く。


 この爺さんはそこの講師で帝国の貴族。しかも魔導帝国を興した竜狩りの魔導師の弟子。という事は、たぶんそれなりの地位の者なのだろう。


 そしてメイド。こいつは気配もそうだがアナライズで見る限り上限レベルも無いし、ただの魔族ではないはずだ。


 遺跡でみたゴーレムもそうだった事を考えると、マギアドール(魔法人形)というのは、ゴーレム(魔法巨人)の亜種かなんかで作り物である可能性が高いと考えられる。


 マギナベルクやここに来る間に見る事はなかったが、貴族は持っていて当然の魔法道具か何かなのだろうか? 遺跡から見つかったアーティファクトという可能性もあるが、これについてはあとで聞いてみるとしよう。


 そして、シャルルも自己紹介をする。


「私はシャルルだ。で、この子は――」


 シャルルが抱きついているステラの頭をなでながら紹介しようとすると、ステラは元気良く手を挙げ言った。


「すてら! すてらはすてら!」


「わたしはシルフィ! ごしゅじんさまのいちのこぶん!」


 ステラの自己紹介を見て、負けじとシルフィも自己紹介をする。


「ふぉっふぉっふぉ。二人とも元気じゃのう」


「うんっ!」


「はいっ!」


 ヴォルフにそう言われステラとシルフィは元気良く、満足げに答えた。


「さて、それでは何から――」


 ヴォルフが話を始めようとするが、そこにステラが口を挟む。


「じゅーすは?」


 首をかしげるステラに、ヴォルフは両手を広げ肩の辺りまで上げるという少し大げさなジェスチャーをする。


「おお、そうじゃったな。リオーネ、茶の準備を」


「かしこまりました、マスター」


 リオーネは礼をすると部屋を出る。


 そして、準備は既にできていたのか、すぐにお茶やジュース、そして菓子の載ったワゴンを押して戻ってきた。


「シルフィ」


 シャルルに呼ばれ、毒が無いか調べろという事だと察知したシルフィはワゴンのそばを旋回して戻ってくる。


「ごしゅじんさま、やなにおいしないよ」


「ご苦労」


 その様子を見てヴォルフは笑う。


「ふぉっふぉっふぉ。さすがに毒を盛ったりして英雄クラスの者を敵に回すほどワシは愚かではないぞ」


「英雄クラス……ね。なぜそう思う?」


 シャルルはいぶかしげにヴォルフを見るが、彼はなんでもないといったふうに言った。


「おぬし、さっきマギアクラスチェッカーを使ったときに『アナライズ』という言葉をつぶやいたじゃろ。 つまりおぬしは『アナライズ』を知っておるという事じゃ。 それに見させてもらったんじゃが――おぬしの魔法的潜在能力はクラス4。 じゃが、おぬしからはフォースの力も感じる。 それも並の実力ではないほどのな。 クラス4の魔法的潜在能力と並々ならぬフォース能力。 その上『アナライズ』を知っておるとなると――おぬしはズバリ『エトランゼ』じゃろ」


 不敵な笑みを見せつつ得意げな顔でヴォルフは言う。が――


「エトランゼ?」


 聞き慣れない言葉にシャルルは首をひねった。

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