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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード6 雪の降る町
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純白に染まる町 その2

 部屋が空いていればここに泊まろうと考えていたシャルルは食後にカウンターで確認。空室ありとの事なのでここに泊まる事に決める。


 安宿のせいか風呂はなかったが体を拭く場所はあったので、シャルルはそこで魔術でお湯を出しステラたちと共にシャワーを浴びた。


 そして歯を磨いたりトイレを済ませたりしてから部屋に行く。


 シンプルで狭い部屋には二つのベッドと棚(というかイスの無いテーブル)が一つ。ベッドには薄い敷布団の上に毛布と薄い布団が一枚敷いてある。


 服をたたみインナー姿になったシャルルがベッドの一つに腰掛けると、同じく寝間着(と言ってもこの前まで普段に着ていた魔女風ワンピースだが)に着替えたステラも同じベッドに腰掛けてきた。


「しゃるー、いっしょにねよーね」


「えー……」


 せっかくベッドが二つあるのに一緒に寝ると狭いじゃん。


 そんな事を一瞬考えたシャルルだったが、今日は冷えるし体温の高い子供と一緒に寝れば少しは暖かいかも……と考え直す。


「……そうするか」


「うんっ」


「あ、わたしも~」


 そしてサンタ風の服を脱ぎいつもの格好になったシルフィも加え、三人で一緒のベッドに寝る事になった。


 そして深夜――


「しゃるー」


「ん?」


 ステラに揺らされシャルルは目を覚ます。


「どうした?」


「おしっこ」


「……そうか」


 夜、一人でトイレに行けないステラに付き添うのはこれが初めてではない。


 だが、今日は寒いから行きたくないなぁ……と思ったシャルルはシルフィを使う事を思いつく。


「シルフィ、ステラをトイレに連れて行ってやれ」


「ふぁーい」


 少し眠そうな返事で了承するシルフィ。だが、ステラは不満を口にする。


「えー、しゃるーじゃなきゃやっ」


「えー……シルフィがいれば怖くないだろ?」


「うん。わたしがいれば大丈夫!」


 シャルルの言葉にシルフィは誇らしげに胸を張るが、ステラは不安そうにつぶやく。


「だって……しるふぃ、ちっちゃいし」


「ちっちゃくたって大丈夫よ!」


 心外だとばかりに頬を膨らませるシルフィ。


 だが――


「しゃるーがいっしょじゃなきゃ、すてらいかない」


「しょうがないなぁ……」


 もらされてはかなわないのでしぶしぶトイレについて行く。


 そしてトイレの前でステラを待ちながら、今日は本当に冷えるなぁ……とシャルルは思った。





 閉じた窓の隙間から光の漏れる宿屋の一室。シャルルは光と共に窓の隙間から入ってくる冷気に目を覚ます。


 そして、朝か……とは思うが寒いのでそのまま布団に留まり続けていると、一緒に寝ていたステラがもそもそと動き始めた。


 布団の中で丸まっていたステラはそこから顔を出すとシャルルの顔を見ながら挨拶をする。


「しゃるー、おはよー」


 挨拶を返せば起きずにはいられないだろう。


 だが、まだ起きたくないと思ったシャルルは挨拶を返さず放置する事にした。


 ステラは返事が無い事に首をかしげたが、まだ寝てるのだろうと思い起こさぬよう、そーっとベッドから出る。


 そして、いつの間にか起きていたシルフィを見ると彼女を抱き寄せその頬にキスをした。


 するとシルフィもステラの頬にキスを返す。


「おはよーしるふぃ」


「おはよう、ステラ」


 ステラと挨拶を交わしたあと、シルフィはシャルルに挨拶しようとする。


 彼女の感覚は鋭く、感じる息遣いなどからシャルルが起きている事に気づいているからだ。


 だが――


「おはようございます、ごしゅ……」


 シャルルがまだ寝ていると思っているステラは、あわててシルフィの口をふさぐと人差し指を立てる。


「しー!」


 起きているはずのシャルルが静かなのは、もしかしたらもう少し寝ていたいからかも……と思ったシルフィはそれに頷くと、ステラも黙って笑顔で頷く。


 そしてステラはベッドから離れ窓際へ行った。


 ステラは手を伸ばし窓を開けようとするが窓の位置が高く手が届かない。


 一生懸命背伸びしているステラを見てシルフィは、『やれやれ』といった表情をしつつ彼女を持ち上げた。


 シルフィの協力を得たステラが窓を開けると冷たい外気と共に光が部屋に差し込む。


 そして――


「あっ!」


 窓から外を見たステラは驚きの声を上げるとシャルルがまだ眠るベッドに駆け寄った。

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