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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード5 宿場町の灯火(ともしび)
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灯火(ともしび)の幼女 その2

 魔術の講義は長くやってもステラの集中力が持たない。そのため講義は一日一時間程度にしている。


 講義は基本的に朝食後に行うので講義が終わってから出かけるとすぐ昼食という半端な時間。なのでシャルルたちはいつも昼食まで家事を手伝ったり本を読んだりして過ごす。


 そして昼食後は商店街に行き、次の目的地である宿場町アンシュルツに行く馬車の情報を集めている。


 もちろん乗せてくれる馬車が見つかってもスージーの腰がよくならないと出発はできない。そのためすぐに乗せてくれる馬車ではなく、探し始めたらどれくらいで見つかりそうかという傾向を調べた。


 そして何日か情報収集を続けていると、今の時期は町の間を行き来する商人が多いらしい事がわかる。


 どうやら年末年始の準備でものが良く売れるかららしい。


 つまり今年中であれば乗せてくれるかはわからないが、アンシュルツ行きの馬車を見つけるのは容易。とはいえ状況が急に変わったりする可能性もあるので、散歩がてら情報収集は毎日やる事にしていた。


 そんなある日。シャルルは自分たちの服を購入した宿場町ヤーブには無かったシルフィに丁度良い服を売っている店を発見する。


 その店は雑貨屋で、見つけたのは服というかそこそこの大きさがある熊のぬいぐるみ。そのぬいぐるみが着ているサンタのような服が丁度シルフィに合いそうな大きさだった。


 シャルルはぬいぐるみを持ち上げるとステラに聞く。


「これ、シルフィに似合うと思わないか?」


「くまさん?」


 意味がわからないという感じでステラは首をかしげる。


「いや、熊が着ている服の方だ。ヤーブじゃ合う服が売ってなかったから、これならどうかと思ってな」


「おおー!」


 ステラは理解したらしく、シルフィと熊を見比べながら声を上げる。


 そこに熊を見て喜ぶ子供という構図に見えた店員が声をかけてきた。


「プレゼントですか?」


「ん? まあ、そうだな。こいつへのプレゼントだ」


 シャルルは自分の頭に乗っていたシルフィをぽんぽんと軽く叩く。


「え? エレメンタルへのプレゼントですか?」


「ああ。だが、欲しいのは服だけだ。本体はいらないから服だけ売ってもらえないか?」


 店員はシャルルの頭に乗るシルフィとぬいぐるみを見比べ、なるほどといった表情を見せるが首を振る。


「服も含めて一つの商品です。申し訳ありませんがバラで売る事はできません」


「うーむ……」


 ちなみにその服、所詮はぬいぐるみの服なので生地が薄く防寒性は皆無。とはいえエレメンタルに防寒は必要ないので特に問題は無い。


 この季節、半袖ワンピースと編みサンダルという格好は見てるこっちが寒くなる。なので見た目さえ暖かそうならそれで十分だ。


 ほかでシルフィの服を買うとなると、子供用の服では大き過ぎるのでオーダーメイドになるだろう。そうなればぬいぐるみを含んだ代金より高くなるのは必至。


 そう考えるとやむなしか……そう思ったシャルルは少しだけ粘ってみたが、やはり服だけでは売ってもらえず結局ぬいぐるみごと購入した。


 購入後、早速シルフィに着せてみる。


 そしてシルフィの服装は、ティアラから赤白の三角帽子、元々の半袖ワンピースの上にケープつきの赤白コート、黄緑の網サンダルから赤白の布ブーツというサンタっぽい格好に変わった。


 風のエレメンタル(と見た目が同じ)であるシルフィには羽がある。


 元々着ている半そでワンピースは、専用の服だけあって背中がかなり開いているので当然だが問題ない。だがコートだと羽が邪魔だ。


 なので羽を――とシャルルは思ったが、どうやら羽は服と違って取れないらしく、仕方ないのでコートの方に穴を開けて対応した。


「どうかな?」


「しるふぃかわいい!」


「えへへ」


 大興奮のステラにシルフィは照れ笑い。


「ごしゅじんさま、ありがとうございます」


「うむ」


 嬉しそうなシルフィを見てシャルルも微笑む。


 新しい服に上機嫌なシルフィとは逆に、哀れサンタ風だった熊のぬいぐるみはただの熊のぬいぐるみになった。


 ぬいぐるみはいらないので店に置いていこうかとも思ったが、なんとなくもったいない気がしたシャルルは持ち帰る。


 とはいえ旅に持って行くのは邪魔なので、結局スージーの家に置いて行く事になった。

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