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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード5 宿場町の灯火(ともしび)
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灯火(ともしび)の魔女 その1

 数日の旅を経て宿場町ヤーブに到着したシャルルたちは、適当な宿を取ると旅の疲れを取るべくゆっくりと休む。そして翌日から次の目的地である宿場町エンデルテまで乗せてくれる馬車を探し始めた。


 ヤーブも宿場町とはいえ都市であるベルドガルトに比べると行き交う馬車の数は圧倒的に少ない。したがってここで無闇に声をかけて回っても乗せてくれる馬車を見つけるのは難しいだろう。


 そこでシャルルは行商人や配送業者と取引がありそうな商店を回り乗せてくれそうな馬車の情報を集める事にした。


 シャルルたちは雑貨屋や魔法道具屋など、特に行商人などと取引が多そうな店を中心に回る。そんな店の中にこれからの季節に合った暖かそうな服を売っている洋品店があった。


 もう既に秋も終わり冬に入りかけている季節。鉱山都市マギナベルクを出て以来ずっと同じだったシャルルたちの服装は季節に合わずかなり寒い状態だ。


 そこで時期的に今更感もあるが、この機会に季節に合った服を調達する事にした。


 シャルルのこれまでの格好は、そのすべてがアナザーワールド2のアイテムだ。


 外は漆黒のローブとそれに付属している黒い指ぬきグローブと黒いブーツ。中はデフォルトのインナーである黒い長袖Tシャツと黒い長ズボン。


 アナザーワールド2のアイテムは、この世界のものを入れられないというアイテムボックスの特性のおかげでアイテムボックスに出し入れするだけで汚れが落ちるという利点がある。だがその利点を捨ててでも、やはりこれからの季節を考えると衣替えは必要だろう。


 ローブは薄手ではあるものの風を通さないので防寒具としてそのまま利用できる。なのでシャルルはそれ以外を変更する事にした。


 グローブはボアつきの茶色い革手袋、ブーツもボアつきの茶色い革のブーツ、シャツはTシャツの上にベージュの長袖シャツと茶色い革のベスト、そしてズボンは厚手の黒い長ズボンに変更。


 これで防寒はばっちりと言ったところだが、一つの問題が浮上する。それは一部の装備が換装(装備の瞬時入れ替え)できなくなるという問題だ。


 換装は該当部位のアイテムをアイテムボックスの中にあるアイテムと入れ替えるというもの。だが、この世界で入手したものはアイテムボックスに入れられないため、そういうものを装備していると換装ができない。


 もし、この状態で最初に身に着けていたドラゴン装備に換装しようとすると――


 頭は何もかぶっていないので兜は問題なく、剣や盾、マントなんかも阻害するものが無いので可能。しかしローブと入れ替えになる鎧を構成するパーツは、籠手は手袋、胴はシャツやベスト、腰当てはズボン、脛当てはブーツなど、邪魔する部分が多く換装できない。


 とはいえシャルルの持つ鎧は防御力以外の有用な特殊能力は少ないし、装備しないとならないほどの敵に会う事もまず無いと思われる。なので今はそんな事より寒さを防ぐ方が大事だろう。


 そしてステラは濃い紫の魔女風ワンピースと茶色いショートブーツという格好から、ベージュの毛糸の帽子、ボアつきの茶色い革手袋、フードとボアのついた薄茶のダッフルコート、茶色い起毛のケープ、厚手のベージュのシャツ、茶色い毛糸のベスト、厚手の黒ズボン、ボアつきの茶色い革のブーツに変更した。


 シャルルと似た部分が多いのは、購入のときステラが「しゃるーとおそろいがいい」と言ったためだ。


 ステラは「しるふぃにも」と言ったが、彼女に合う服は売ってなかった。


 そもそもシルフィは寒さをつらいとは感じないらしいので、別に衣替えの必要は無い。見た目が寒いというのはあるが、急ぐ必要もないのでまた今度という事になった。


 そしてこの町に到着してから数日。ようやく乗せてくれる馬車を発見したシャルルたちは、次の目的地である宿場町エンデルテに向け出発した。





 特に問題もなく数日に及ぶ旅は終わり、シャルルたちは空が茜色に染まる頃エンデルテに到着する。


 夕日が沈みかける中、シャルルはここまで連れて来てくれた行商人たちに礼を言うとシルフィを伴いステラの手を引いて歩き出す。


 ステラは時々後ろを振り向いては、見えなくなるまで行商人たちに向かって手を振っていた。


 しばらく歩くと道の左右に店が立ち並ぶ場所に出る。一定の間隔で街灯もあるので恐らくここは商店街なのだろう。


 街灯は灯している最中なのかまだ三分の一程度しかついていなかった。


 さて……どうしたものかな。


 時間から考えて食事が先か、それとも宿を見つけてそこで食事を取るべきか……シャルルがそんな事を考えつつ歩いていると、ステラが繋いでいた手を引っ張った。


「しゃるー」


「ん?」


 ステラが指す先にはまだ明かりのついていない街灯があり、そのすぐそばにはうずくまっている人がいる。


 髪はぼさぼさの白髪でそこそこの長さ。服装はなんとなく女性っぽいのでたぶん老婆だろうとシャルルは思う。


 どうかしたのだろうか? とは思いつつも、余計な事には係わりたくないと思いシャルルはそのまま立ち去ろうとする。が――いつの間にかステラが老婆に近づき話しかけていた。

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