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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード3 辺境の町
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ベルドガルトからの来訪者 その2

 ティータイムの食堂。シャルルが紅茶を楽しんでいると、そこにおやつを求めステラやネリーたちがやってくる。


 そしてステラたちはシャルル、ネリーたちはテレーゼのところに行き、いつも通りおやつを食べ始めた。


 今日のおやつはクッキー。ステラはそれを両手で持つと、げっ歯類の如くカリカリかじり始める。


 ちょっと行儀が悪いな……シャルルはそう思いつつも注意はせず、その愛らしい姿を微笑みながら眺めていた。


 そんなシャルルのもとに一人の男がやってくる。シャルルの後任であるクラウスだ。


 彼は軽く頭を下げると遠慮がちに話しかけてきた。


「どうも。おくつろぎのところ申し訳ない。そろそろ時間かと思いまして……」


 クラウスの言葉に、そういえば今日の街灯点灯に同行してもらうんだったな……とシャルルは思い出す。


 そして、今まで忘れていたのだが(当然、行くときには思い出していたであろうが)、失礼にならぬよう無難な回答をする事にした。


「いえいえ、問題ありませんよ。私ももう少ししたら迎えに行こうかと考えていたところです」


「そうでしたか」


 クラウスは軽く頷くとシャルルの隣に座る幼女――ステラを見て思う。


 この人……子連れだったのか。


 一方、見られているステラは自分を見る見知らぬ人を見て首をかしげる。


「しゃるー、このひとだーれ?」


「彼はクラウスさん。私の仕事を引き継ぐ人だ」


「こんにちは」


 シャルルの紹介を受けクラウスが挨拶すると、ステラとシルフィも挨拶を返す。


「こんにちはー」


「こんにちは」


 そしてシャルルはクラウスにイスを勧めつつ言った。


「この子が食べ終わるまで少しお待ちいただきたい」


「ええ、かまいませんよ」


 クラウスがイスに腰掛けると、すぐにメイドが来て彼に茶を入れる。


「あ、どうも」


「いえいえ、ごゆっくり」


 そう言うとメイドは軽く会釈して去っていった。


 ごゆっくり……か。


 確かに茶を飲むときくらいゆっくりしたいものだ。


 しかし、今日は仕事の説明をしなければならないのでいつもより時間がかかる可能性が高い。なので早めに始めたいし、あまりゆっくりされても困る。


 そう思ったシャルルは、ちびちびとクッキーをかじるステラに言った。


「そろそろ街灯を灯しに行くぞ。早く食べてしまえ」


「はーい」


 元気良く返事したステラは残りのクッキーを、ほおぶくろにエサを押し込むげっ歯類の如く一気に頬張る。


 そしていつも通り玄関でネリーとプリムに見送られ、シャルルたちは屋敷を出発した。




 大通りに出たシャルルは一本目の街灯を前に考える。


 さて……どの程度の説明が必要だろうか。


 彼はそれを知るためクラウスに聞く。


「街灯を灯す仕事の経験は?」


「ありません。以前は飲食店に明かりや水を提供する仕事をしていました」


「なるほど」


 となると一から説明した方がよさそうだな。


 そう思ったシャルルはなるべく丁寧に教える事にした。


 とりあえず数箇所、シャルルが街灯を灯す手本を見せる。


「こんな感じで杖を使って街灯用の箱にライトを付与するんです」


「なるほど」


「では、私がやったようにこれを使ってあの箱にライトを付与してください」


 シャルルが杖を渡すとクラウスはそれを受け取り頷く。


「わかりました」


 そして彼が街灯用の箱にライトを付与すると、特に問題なく箱は光を発し始めた。


「これで良いでしょうか?」


「ええ、問題ありません。次はあっちの街灯にもお願いします」


 そう言うと、シャルルはステラの手を引いて少し先にある街灯に向かって歩く。


 それについていきながらクラウスは彼に尋ねた。


「私は普段使わないので持ってないのですが……杖を用意した方が良いでしょうか?」


「どうでしょう? 魔術用の杖をこの町で入手するのは困難でしょうし、その杖は私のものではなく町長から借りているものです。なので言えば貸してもらえると思いますよ」


「そうでしたか。では、あとで聞いてみます」


 そしてクラウスは二つ目の街灯も問題なく灯す。


 それを見て、特に問題なさそうだな……と思ったシャルル。


「今日は初日ですので、残りは私が――」


 杖を受け取るべく右手を差し出してそう言うが、言い終わる前にシャルルのローブを引っ張りながらステラは言った。


「しゃるー、すてらもー。すてらもそれやるー」

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