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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード3 辺境の町
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おねえちゃん その1

 ヘルマン邸、昼過ぎの食堂。今日も昼食が終わると全員で『ごちそうさま』の挨拶をする。


 そしてみんなそれぞれの仕事に戻るため食堂を出て行くのだが、夕方まで特に用事の無いシャルルはゆったりと食後の茶を飲んでいた。


 そんな彼の隣に座るステラのもとに、ネリーがプリムを連れてやってくる。


 いつも通り遊びのお誘いだ。


「ステラ! 今日はなにしてあそぶ?」


 ネリーの呼びかけにステラは嬉しくてしょうがないといった感じで答える。


「えっとね、えっとね。ぼーる! すてらぼーるがいい」


「ボール? じゃあ、お外であそびましょ」


「うんっ!」


 話がまとまったようだな。


 そう感じたシャルルは立ち上がるとステラをイスから降ろしつつ言った。


「外で遊ぶのは良いが、庭から出ては駄目だぞ」


「はーい」


 元気良く返事するステラ。それに軽く頷くとシャルルはシルフィを見る。

口には出さないが頼んだぞという意味を込めて。


 シャルルの意図を察したシルフィは胸を張りつつ言う。


「おまかせください、ごしゅじんさま」


「ああ、よろしくな」


 うまく意図が伝わった事に満足したシャルルは軽く頷き微笑む。


 話が終わったと感じたネリーはプリムと共に、シャルルに軽く会釈する。


「それじゃ、いってきます」


「いってきます」


「ああ、いってらっしゃい。ステラたちをよろしく」


「はーい。じゃ、行きましょ」


 シャルルが挨拶を返すとネリーはステラの手を取り歩き出す。


「いってきまーす」


「ごしゅじんさま、いってきます」


「ああ、気をつけてな」


 そしてシャルルはぶんぶんと手を振りながら歩くステラに軽く手を振り返し、彼女たちが食堂から出るまで見送った。




 ボールを持って庭に出るとステラは嬉しそうに駆け出し、そして転ぶ。


「あっ」


 ボールは手を離れて転がりステラは前のめりに倒れたが――すんでのところでシルフィがつかみ、ふわりと浮かせ事なきを得た。


「もー! そそっかしいんだから」


「えへへ、しるふぃありがと」


 それを見てネリーは言う。


「ねーシルフィ。それって……わたしにもできる?」


「それ?」


「そのふわっとするやつ」


 シルフィは首をかしげるが、ネリーの言葉で宙に浮かせて欲しいのだと気づく。


「あー。持ち上げるだけだから、もちろんできるわよ」


「じゃ、じゃあ、わたしにもやって! おねがい!」


「でも、あんまりやるとお腹へるのよね……」


「ちょっとだけでいいから!」


 手を合わせて拝むネリー。それに対し、しょうがないなぁ……という感じでシルフィは言う。


「ちょっとだけよ」


「やったー!」


 そして――


「すごい! ふわふわしてる! シルフィすごい!」


 浮かぶ高さは精々50cm程度。だが、自分の体重が無くなったような感覚にネリーは興奮する。


「ふふん、とうぜんよ。なんたって、わたしはごしゅじんさまのいちのこぶんなんだから」


 そう言うとシルフィは誇らしげに胸を張った。


「はい、おしまい」


「えー」


「ちょっとだけって言ったでしょ」


「そうだけど……」


 地面に降ろされると、心底残念だといった感じでネリーはため息をつく。


「あーあ。プリムもシルフィみたいだったら良かったのに」


 それを聞き、むっとしてプリムは頬を膨らませる。


「どーゆーいみよ」


「だって、シルフィはプリムとちがって力もちだしー、服もかわいいしー、冠もすてきだしー」


 確かにプリムはシルフィのようにネリーを持ち上げたりできないし、服は良く似てはいるもののシルフィに比べシンプルで冠も無い。だが、それを言ったらネリーだって同じだ。


「なによ。それなら……ネリーだってステラみたいに魔法つかえないくせに」


 言い返され今度はネリーが頬を膨らませる。


「それならってなによ!」


「ネリーこそなによ!」


 売り言葉に買い言葉。そんな二人のやり取りにシルフィはあまり興味を示さないが、ステラはどうして良いかわからないといった感じでおろおろする。


「けんかはだめだよぉ……」


 だが、言い合いは止まらない。


「わたしよりシルフィがいいなら、シャルルのうちの子になっちゃえばいいでしょ!」


「むー! プリムなんてきらい! 森にかえっちゃえ!」


 頬を膨らませにらみ合っていた二人はお互いにそっぽを向く。


「むむむ。もーおこった! ネリーなんてしらない!」


 そう言うとプリムは庭から外に出て行ってしまう。


「ど、どーしよ……」


 プリムを見送りながらステラはそう言うが――


「どうせおやつにはかえってくるわ。ほっといてあそびましょ」


 そしてネリーは特に気にする様子もなくボールで遊び始め、しばらく気にしていたステラもそれなりに楽しく遊ぶ。


 だが――そろそろおやつという時間になってもプリムは帰ってこなかった。

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