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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード3 辺境の町
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スバルクでの生活 その1

 スバルクに来て数日。ここでの生活にも慣れ、シャルルたちはそれなりに充実した日々を過ごしていた。


 燃料などの問題もあり、夜間の明かりに乏しい村や辺境の町は日の出と共に起き日没と共に眠るところが多い。街灯が灯るようになったこの町も、日没と共にとまでは行かないが深夜まで起きている者はまれだ。


 寝るのが早ければ当然起きるのも早くなる。この町でも日の出と共に起きる者は少なくなく、町は早朝から動き出す。


 シャルルたちもさすがに日の出と共にとまでは行かないが、それなりに早い時間に起きて行動を始める。


 シャルルは起きるとまずステラを起こす。もちろんステラが先に起きた場合は逆に起こされる。


 ちなみにシルフィはシャルルやステラが起きると自然と起きる場合が多く、先に起きても基本的にシャルルやステラを起こしたりはしない。


 全員起きると洗面所で洗顔と歯磨きをする。そして食堂で朝食を取り、その後の午前中は旅の間できなかったステラの魔術の修練を行う。


 最初にやるのは実際に魔術を使うという修練。


 魔術はただ使うだけで微妙にではあるが鍛えられる。


 使う魔術は当人のレベルに合っていればなんでも良く、ステラの場合、基礎中の基礎である水を出す魔術、ウォーターを使う。


 魔術を使う事自体が目的であるため出した水はそのまま流してしまっても良いのだが、シャルルはこの水を厨房のかめに貯めさせている。


 これはもったいないからではなく、ステラのやる気を出させるためだ。


 屋敷には水道はもちろん専用の井戸も無い。なので使う水は使用人たちが町の共有井戸から汲んできているのだが、これは結構な重労働。


 当然ステラが厨房のかめに水を貯めたところで屋敷全体は賄えない。結局、水汲み作業は必要だ。


 とはいえステラが貯めた分はやらなくて良いのだから負担は減り、使用人たちは彼女に感謝しほめる。そして、ほめられたステラはもっとほめられようとやる気を出す。


 と、まあそんな好循環を期待してシャルルは水を貯めさせている。


 ちなみにステラの能力で出せる水は精々かめ半分程度。なので残りはシャルルが出す。これはサービスと言うか、中途半端だと良くないだろうと思っての事だ。


 水出しが終わると次は部屋に戻り集中力を鍛えるために瞑想をさせる。


 集中力が高まれば魔術の精度や制御能力が上がるからなのだが、落ち着きのないステラはこの修練が苦手だ。


 そして最後にイメージトレーニング。魔術は正確にイメージすれば効果が上がるし、イメージで多少のアレンジもできる。


 しかしステラの場合これに至っては苦手どころか瞑想と区別がついているのかも良くわからない。まあ、瞑想とイメージトレーニングはとりあえずやらせてみて、効果があれば良いなぁ程度のものだ。


 魔術の修練が終わっても昼食にはまだ早い。なのでここから正午までは勉強の時間にしている。


 勉強と言ってもステラは読み書きや計算はある程度できる(漢字はほとんど書けないが)ので、そういうのを教える必要はあまりない。教えるのは子供でも知っていて当然であろうと思われる一般常識だ。


 具体的に何をやるかと言うと、ネリーに借りた絵本や子供向けの本を読ませたり、シャルルが本を読み聞かせたりしている。


 ほかにはシャルルが知った知識の内、子供も知っているべきだと思った事を教えたり、前に教えた事をクイズ形式で聞いたりするのだが――まあ、わからなくても子供だから、なんとなく聞いた事がある程度で良いだろうというのがシャルルの考えだ。


 昼食の準備ができるとメイドが呼びに来るので、それまでシャルルたちはそんな感じで過ごす。そして今日もそんなふうに過ごしていた。


「じゃあ、ステラ。五英雄を全員、言ってみろ」


「はーい」


 手を挙げて返事をしたステラは指を折りながら名前を上げて行く。


「んとねー、りゅーがりのまじゅつしとー、えっと、えっと、はくぎんのゆーしゃとー、あとねー、あとねー……かっかさんのきし? あとは――まけーびき?」


 首をかしげながら言うステラに、軽く笑いながらシャルルは言う。


「んー、なんか混ざってるし微妙に違うぞ。しかも四人しか言ってないし」


「えっと、えっと……」


 考え込むステラを見てシルフィが口を開く。


「ごしゅじんさま、わたし言えるよ」


「よし。じゃあ、ステラに教えてやれ」


「はーい。いい、ステラ」


「うん」


「りゅー狩りのまどーしと、白銀のせーきしと――」


「おお、合ってる」


 シャルルの言葉にシルフィは得意げに続ける。


「せーぎのゆーしゃと――」


「ん?」


「火山のちょーせんしと、まけんきの五人よ」


 そこまで言うとシルフィは、どうだとばかり得意げに胸を張るが――


「惜しいが微妙に違うぞ」


「えー!?」


「ぷぷー」


 驚くシルフィを見てステラが口に手をあて笑うが、それを見てシャルルは思う。


 でもお前よりはだいぶマシだぞ……。


「正しくは、竜狩りの魔導師、白銀の聖騎士、聖銀の勇者、活火山の超戦士、魔剣美姫の五人だ」


「うーん……」


「うーん……」


 答えを聞いた二人は、首をかしげながらうなっていた。


 子供に丸暗記指せようとしたのが間違いだったのかもしれん……そう思いシャルルは考える。


 ここは魔導帝国なのでこの国の住人であれば、たぶん子供でも建国の始祖、竜狩りの魔導師くらいは知っているはず。しばらくはこの国で過ごす事になるであろう事を考えると、それくらいは覚えさせておいた方が良いだろう。


 マギナベルクにはリベランドを建国したリベリアスを主人公にした絵本があったので、たぶんここにも竜狩りの魔導師を主人公にした絵本くらいはあるはず。


 そういうのを使って物語と共に覚えさせるのが良いかもしれない。あとでヘルマンかテレーゼにでも聞いてみるとしよう。


 シャルルの考えがまとまった丁度そのとき、ノックの音が響く。


「はい。どうぞ」


 シャルルの返事にゆっくりとドアが開き、そこに立っていたメイドは一礼すると言った。


「昼食の準備が整いました。食堂にいらしてください」

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