辺境の町と街灯 その4
街灯を灯し終えたシャルルたちはヘルマンの屋敷に戻る。既に日が落ちているため外は真っ暗で、当然屋敷の中も暗くなっていた。
玄関や廊下には高さ1メートルくらいの棚がおいてあり、その上には火のついたガラス製のオイルランプが置いてある。ランプに火がついているので当然真っ暗というわけではないのだが、その程度の明かりではやはり薄暗い。
「しゃるー……くらくてこわい」
シャルルのローブをつかんでステラが言う。
歩くのが困難というほどではないが、確かにオイルランプの明かりでは少し暗いので危険かもしれない。そう思ったシャルルはヘルマンに言った。
「町長、オイルランプの代わりにライトを付与しましょうか? 子供が転ぶと危ないし、別に追加料金を取ったりはしませんので」
「おお、そうしてもらえると助かる。お願いするよ」
許可をもらいシャルルはオイルランプに近づく。
「では――」
そしてライトを付与しようとするとステラが言った。
「あ、すてらやりたい」
それを聞きシャルルは少し考える。
そういえば最近ずっと旅をしてたから魔術の修練をやらせてないな。
ソフィは水をいっぱい出せと言ってたが、それは単に魔術を使えという事なのでライトでも良いはずだ。そう考えるとこれをやらせるのは修練になる。ならばやらせてやっても良いだろう。
「いっぱい光らせたいところがあるんだが、ステラがみんなやってくれるか?」
「うん! すてらがやる!」
「じゃあ、まずはこれだ。このオイルランプを光らせるんだぞ」
「うんっ」
ステラは頷くと棚に近づき、そしてそっとオイルランプに触れると言った。
「ひかれ~ひかれ~ぴかぴかひかれ~」
そしてライトが付与されオイルランプは灯された火ではなく、ランプそのものが発光しはじめる。その明るさは小さい火とは段違いだ。
それを見てネリーとプリムがはしゃぐ。
「わー、あかるい!」
「ステラすごい」
「えへへ」
得意げなステラに微笑みつつ、シャルルはオイルランプの火を吹き消す。
「次はあっちだな」
「うん」
「じゃあ、わたしがあんないするわ」
こうしてネリーの案内で一階から三階までのオイルランプにライトを付与して回り、それが終わるとネリーが「そろそろ夕食よ」と言うので食堂に行く事になった。
ネリーを先頭にシャルルたちは食堂に入る。
そこは廊下と違い、いくつかの魔法灯(光を発する魔法道具)に照らされ明るかった。
食堂にはヘルマンとその妻、そして彼の息子とその妻(ネリーの両親)、ほかには屋敷の使用人などがいて、シャルルたちが入ってくると皆立ち上がり、拍手と歓迎の言葉で出迎える。
「ようこそ、スバルクへ」
「歓迎します。好きなだけ我が家にご滞在くださいね」
「ありがとうございます」
初めて会う人は皆それぞれにシャルルたちに挨拶をし、シャルルは丁寧に、ステラはシャルルに抱きつきながらおっかなびっくり、シルフィはマイペースにそれぞれ返事をした。
そして簡単な自己紹介のあと食事が始まる。
夕食のメニューは夕食と言うよりは、晩餐やディナーとでも言った方がよさそうなある程度良いものだ。
恐らくシャルルたちを歓迎するために用意したのであろう。
シルフィやプリムにも魔石が振舞われ、それなりに豪華な食事を食べデザートも食べたステラは終始ご機嫌だった。