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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード3 辺境の町
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辺境の町と街灯 その2

「そろそろ時間です。行きましょう」


 ヘルマンの呼びかけに、シャルルはもうそんな時間かと思いつつ棚に置いてある時計を見る。


 時計の針は3時40分を少し過ぎた辺り。今の時期は午後4時くらいに始めると言っていたが、初日で説明しながらだから早めにという事なのだろう。そう思ったシャルルは軽く頷きつつ返事をした。


 ヘルマンを先頭にシャルルたちが玄関を出ると、メイドが見送りの挨拶をする。


「いってらっしゃいませ」


 それに対してヘルマンとシャルル、そして置いては行けないので連れて来たステラとシルフィ、一緒に行くと言ってついてきたネリーとプリムの計6人が、それぞれ『いってきます』という意味の言葉でメイドに挨拶を返す。


 特にステラは軽く手を振るメイドに対し一生懸命に手を振っていた。


 そんなステラの手を引きながらシャルルたちが向かうのは屋敷の目の前にある大通り。屋敷の敷地を抜けそこに出たシャルルが見渡すと、ヘルマンの説明通り道の左右には等間隔で街灯用の柱が立っているのが見えた。


 柱は3メートル近くあり、上の方に一辺が20cmくらいの箱のようなものが吊り下げられている。


 ヘルマンはそれを指差して言う。


「あの箱に魔法をかけて街灯にするんですよ」


「なるほど」


 シャルルはヘルマンの説明に頷きつつ考える。


 やはりあれが街灯か。マギナベルクのに比べると質素だが――まあ機能的には問題ないだろう。しかし……少し位置が高いな。


 シャルルの身長は決して低くはない。どちらかといえば高い方だ。


 だが、そんな彼でもちょっと手を伸ばせば届くという位置ではない。


「とりあえずやってみるか……」


 つぶやくとシャルルは軽く跳躍して箱にライトを付与するが――触れている時間が短いため箱の一部分にしか付与できなかった。


 付与魔法は付与する対象に術者が触れる必要があり、触れる時間は使う魔法によって異なる。


 ライトの場合、最大までかけるとなると数秒は触れている必要があるのだが、一瞬しか触れられないとこのような結果となってしまう。


 まねをして嬉しそうにぴょんぴょん飛び跳ねているステラを横目で見つつシャルルはヘルマンに聞く。


「なにか台のようなものはありませんか?」


「台ですか」


「ええ。ライトを付与するには対象にしばらく触れている必要があるので」


 少し考えるそぶりを見せたヘルマンは言う。


「前任者は杖を使って魔法をかけてました。予備の杖が屋敷においてあったと思うのですが、それを使ってはどうでしょう?」


「杖?」


 シャルルは少し考える。


 そういえば、ソフィが戦士のフォースみたいにマナを通せる杖があって、そういうのを使う魔術師もいると言っていたな。


 それにマギナベルクで街灯を灯していた魔術師も、何か棒のようなものを使っていた気がする。前任者が使っていた杖というのは恐らくそういうものだろう。


「たぶんそれでいけると思います。お貸しいただけますか?」


「もちろん」


 ヘルマンは頷く。


「ネリー、ちょっと杖を取ってきてくれんか? 玄関に置いてあったはずだ」


「はーい」


 ネリーはプリムと共に屋敷に向って駆けて行く。そしてしばらくすると何かでコーティングされたような光沢を持つ、1メートルちょっとくらいのシンプルな黒い棒を持って戻ってきた。


「はい、どーぞ」


「ああ、ありがとう」


 シャルルはネリーから棒を受け取ると、早速それを使って箱にライトを付与してみる。


 すると見事に成功し、箱全体が光を発し始めた。


「おお……」


「やったー」


「さっすがごしゅじんさま」


「光った!」


「わーい」


 うまく行ったのを見て、みんな喜びの声を上げる。


 ライトを付与しだだけでここまで喜ばれるとなんか恥ずかしいな……そんな事を思いつつ、初めての杖を通した魔術使用にシャルルは思わず感想を漏らした。


「なるほど……こういう感じか」


 説明は難しいがソフィが言っていたフォースを通すみたいなのとはかなり違う。(彼女はフォースが使えないからわからないのも仕方ないのだが)


 ものを拾うという動作に例えるなら、フォースは手袋をつけて拾う感じなのに対し、これはトングのような何か道具を使って拾うといった感じだろうか。まあ、慣れないからそう感じるだけなのかもしれないが。


 とりあえず問題は無いのでシャルルは作業を続行する事にした。


「次はあっちかな?」


 シャルルが道の反対側、対角線上に設置されている柱に向おうとすると――


「あ、違います。次は真っ直ぐ行った先にあるあれです」


 そう言ってヘルマンは直線状にある柱を指差した。


「片側ずつ灯して行くんですか?」


「ええ。前任者はそうしてました。そうすれば、ぐるっと回ってここに戻ってこられますので」


「ああ、なるほど」


 街灯は道の両端にジグザグに設置されている。


 それを近い順に灯していけば、片側ずつやるより少しだけ早く終わるだろう。


 だがその場合、終わったあとの帰り道を無駄に歩く事になる。


 しかしヘルマンの言う通り片側ずつ一筆書きのように灯していけば、すべて灯し終えたときにいるのはスタート地点のすぐ近く。なので灯す者が歩く距離はこっちの方が短くて済む。


 納得したシャルルは言われた通り片側ずつ街灯にライトを付与していった。

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