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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第二章 エピソード3 辺境の町
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辺境の町と魔術師 その3

 中肉中背で白髪交じりの初老の男ヘルマン。この屋敷の主人でありスバルクの町長でもある彼は、書斎で書類の整理をしている最中に魔術師が来たという報告を受けた。


 待ちに待った魔術師だ。すぐに会いたい気持ちもあったのだが、混ざると困る書類もあるため書類の片付けが終わるまで応接室で待ってもらう事にした。


 そしてようやく片付けが終わり、ヘルマンは一階の応接室に向いながら思う。


 てっきり定期便と一緒に来ると思っていたが……まあ、早い分にはありがたい。


 スバルクは小都市ベルドガルトの交易ギルドと取引をしている。


 ギルドは奇数月の中旬から下旬に到着するよう定期的に隊商を派遣し、数日間荷下ろしや買い付け、交渉などをして帰って行く。魔術師の誘致は隊商のリーダーに頼んだので、それと一緒に来ると思っていたのだ。


 ようやく夜が楽になるな……そう考え少し安心しつつも、ヘルマンは魔術師がどんな人物か期待と不安を感じていた。


「お客さんは?」


「中でお待ちです」


 ヘルマンが応接室の前に控えていたメイドに聞くと彼女はそう答え扉を開く。


 そして彼が部屋の中に入ると、それを見てソファにかけていた人物――いかにも魔術師といった感じの真っ黒なローブを着た若い男が立ち上がった。


「お邪魔してます」


「あ、いえいえ。お待たせして申し訳ない。ようこそスバルクへおいでくださいました。私が町長のヘルマンです」


 頭を下げる男に対しヘルマンも頭を下げ名乗る。すると男もすぐさま名乗り、それに続けて幼女と風のエレメンタルが名乗った。


「私はシャルル。で、この子たちは――」


「すてらはすてら!」


「わたしはシルフィ。ごしゅじんさまのいちのこぶんよ」


「ははは。元気なお子さんたちだ。まあ、おかけください」


 ヘルマンが座るように促すと、シャルルとステラはソファに座る。ちなみにシルフィはステラが抱っこしている形だ。


 向かいに座りヘルマンはシャルルたちを観察する。


 しかし魔族の、それも親子が来るとは……。


 彼は誘致した魔術師の種族を聞いてなかったし家族構成も聞いていない。とはいえ人類のほとんどは人間なので、特に言及がなければ人間だと思うのが普通だ。


 それに妻に先立たれたという話から、なんとなく老人が一人で来るのだと思い込んでいた。


 子供を連れてくるというのももちろん想定外だが、逆にそれこそが住居や食事を求めた理由だと考えるとなんとなく納得も行く。


 男手一つで小さな子供の世話をしながら働くのは大変だろうし、食事の用意は特に大変に違いない。だから食事と住居を求めたという事なのだろう。


 町は魔術師に少しでも早く来て欲しい状態でえり好みできる状態ではない。だから子連れであると聞いたとしても、もちろん断ったりはしなかっただろう。


 だが、それならそうと事前に伝えておくべきではあるはずだ。


 今度会ったときに文句の一つでも言ってやらんとな。


 ヘルマンは誘致を頼んだ隊商のリーダーの事を考えそう思った。


 しかし……彼らは何歳だろう?


 魔族は非常にゆっくりと年を取る種族。なのでこのシャルルという魔術師は、もしかしたら自分よりずっと年上なのかもしれない。


 だが、魔族に限らず人類と呼ばれる四種族の成長は、生まれてから20年前後の大人になるまでは変わらないと聞く。なので子供の方は見たままの年齢と考えて良いはずだ。


 という事は、ステラという子は恐らく孫娘のネリーと同じくらいの年齢だろう。この子もネリーと同じで風のエレメンタルを連れてるし、仲良くなれるかもしれないな。


 そう思ったヘルマンは孫娘を呼ぶ事にした。


「ちょっと、ネリーを呼んできてくれないか?」


「あ、はい。わかりました」


 ヘルマンに言われ、メイドが応接室を出て行く。


「ネリー?」


 首をかしげるシャルルにヘルマンは説明した。


「ああ、孫娘ですよ。丁度ステラちゃんと同じくらいの年頃なので、仲良くなれると思いますよ」


「はあ……」


 ヘルマンはシャルルたちがこれから長い年月ここで暮らして行くと思っている。だからこそこう言っているのだが――シャルルは移動手段さえ見つかれば、明日にもこの町を出ようと思っているのだ。


 二人の感情に温度差があるのは当然だろう。


 そして数分後、メイドに伴われ一人の幼女と風のエレメンタルが部屋に来た。

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