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異世界大陸英雄異譚 レベル3倍 紅蓮の竜騎士  作者: 汐加
第一章 エピソード1 マギナベルクの新英雄
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英雄公 その3

 魔法道具屋と聞き、シャルルは店主の老婆がかめの中の泡立つ液体をかき混ぜているような店を想像したが、そこは想像に反しただの雑貨屋だった。


 あまり広いとは言えない店内には、デカンタやポット、ランプなどがシンプルなものからアンティーク調のものまでところせましと並んでいる。


 それらを見てシャルルは、あまり魔法の道具には見えないな……と思う。


「ここは魔法道具以外にも、魔術師や秘術師が使うスクロールなんかも売ってるんだ」


「ほう」


 スクロールと聞いてシャルルは考える。


 魔術師や秘術師というのはたぶん魔法使いの事だろう。


 となるとスクロールはゲームにもあった使用すると魔法を覚えられるものである可能性がある。


 シャルルはダークナイトには使えない魔法レベル10の魔法を含め入手可能で習得できる魔法はすべて覚えているが、もしかしたらゲームで手に入らなかった魔法や知らない魔法が手に入るかもしれない。


「シャルル、着火具はこの辺よ」


 手招きするローザのところに行くと、そこには多数のライターが展示されていた。


 シャルルはその一つを手に取りスイッチらしきものを押してみる――が何の反応もない。


 その様子を見ていたアルフレッドが言う。


「燃料を入れないとつかないだろ」


「あ、ああ。そうだな」


 だが、ライターの裏にガス注入口は見当たらない。


 戸惑うシャルルにローザが言った。


「貸して」


 ライターを受け取ったローザが店員に言う。


「試したいから魔石を貸してもらえませんか?」


「はいよ」


 そして店員から紫色の石を受け取ったローザはライターの柄の部分をずらし、そこにその石を入れてからシャルルに渡す。


「はい」


「ああ」


 受け取ったシャルルがもう一度スイッチを押すと、先端についた赤黒い玉から1cm程度の場所に火が現れた。


 それを見てシャルルはなんとなく理解する。


 規模は小さいがこの現象は彼が魔法を試したときとほぼ同じ、つまり魔法だ。


 マジックポイントの代わりになる燃料が魔石なのだろう。


 そして少し考える。この現象が規模の小さい魔法だとしたら、この魔法を覚える事さえできればこの道具は必要ないのではないのかと。


「これって、魔法使いならこれがなくても同じ事ができるのか?」


 それに答えたのは店員だった。


「まあ、この辺の魔法道具は生活魔法の再現らしいからできるだろうな」


 ここでシャルルは思い出す。ここにはスクロールも売っているという事を。


 彼は着火具を持ちながら店員に聞いた。


「これと同じ魔法のスクロールってあるのか?」


「もちろん魔術も秘術もあるよ」


「ちょっと見せてもらえないか?」


「いいよ」


 そう言うと店員はカウンターの後ろにある棚の引き出しを開け、二枚の紙を取りだす。


「こっちが魔術でこっちが秘術」


 受け取ったシャルルは二枚の紙を見比べる。


 そこにはそれぞれ別々の、意味不明な記号のような文字のような良くわからないが適当だとも思えないものが書かれていた。


 それを見た瞬間、昨日は気づかなかった一つのスキルが使える事がわかる。



 ラーニング。ゲームでは自分が使える系統のスクロールを使うと魔法を覚えるというシステム。


 ここでは自分が使える系統の呪文を見たときに、その魔法の名称と魔法レベル、効果がわかり、使うとそれを覚えられるスキルとして存在する。



 左手に持った魔術にはラーニングが使えて右手に持った秘術には使えない。その事から彼は魔術がゲームでいう魔法で秘術が神聖魔法なのだろうと理解した。


 そしてラーニングを使い魔法レベル0ファイヤーを習得する。


 もしかしたらスクロールが消えてしまうのではと心配したが、とりあえず消えはしなかったし見た目にも変化はないようだ。


 この後も彼はいくつかの魔術をひそかに習得し、アルフレッドの「ハンターはライセンスプレートがあれば都市から補助が出て安く買えるから、買うならもらった後が良い」という助言を聞いた振りをして何も買わずに店を出る。


 その後シャルルのおごりで昼食を取ったり本屋で本を買ったりして、午後3時を告げる鐘の音が鳴り響くまで商業地区を巡った後、ライセンスプレートを受け取りにギルドへ行った。

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