表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/58

捜査2日目~マイヤーとクラクスの推理

 マイヤーとクラクスは城に戻って、マイヤーの部屋でこれまでの聞き込み情報をまとめていた。


「整理してみよう」。マイヤーはゆっくりと話し始めた。「この遺産相続で誰が得をするか? ということだ。まず、父親のブルクハルトが亡くなった。遺言書によると、妻が現金、貴金属、屋敷。長男と長女の二人が会社を引き継ぎ、次男、三男にはほとんど遺産は無い。最初、誰も遺言書があることを知らないとして、父親が死んで一番得をするのは? 妻だ。そして、妻は長男を殺した場合、会社が手に入る可能性あるが、それより遥かに価値のある現金や貴金属、屋敷で十分すぎる遺産を相続する。彼女の相続分に比べると会社の価値はさほど大きくなく、遺産が格段に増えることにはならない。リスクだけを負って殺人を犯すかどうか」。

 会社の価値がさほど大きくないとはいえ、我々のような庶民から見ればかなりの価値の物だが。マイヤーは話を続けた。

「やはり、遺産目当てに長男を殺すのはリスクの方が大きい。遺言書の内容が分かった状況であればなおさらだ。そうすると、妻は犯人から外れる。すると長男を殺したのは次男か?、三男か?、長女か?」


 マイヤーはカップにエールを注いで、クラクスに渡した。

 クラクスはそれに口を付けて言った。

「これ酒ですか?」

「そうだ。エールだよ。今日はもう良いだろう」。

 クラクスはエールを二、三口飲んだ。


 マイヤーは話を続ける。

「長男が殺される。そうすると、長男の遺産はだれが引き継ぐ?妻や子供が居るのだろうか」。

「もし、妻や子供が居る場合は?」

「もちろん遺産は妻と子供で分配することになるだろう。ハーラルトの家族のことも聞いておく必要があるな」。

「ハーラルトに妻子が居た場合は、彼が死んでも、きょうだいには遺産は増えません」。

「その場合は、兄弟には殺人の理由がない。となれば、犯人はヴェールテ家の以外の者ということになる」。

「逆に妻子がいない場合は、犯人はヴェールテ家の者ということですね」。

「その場合は、犯人は次男か、三男か、長女か? 長女はオストハーフェンシュタットの会社を継いでいるから除外して、次男か三男?」

「いや、長女が強欲でズーデハーフェンシュタットの会社も欲しがったら?」

 クラクスが異論をはさんだ。

「可能性はなくはない。しかし、長女はオストハーフェンシュタットに居る。調べるのは少々骨だな。あそこに行く許可を得ないと」。

 都市間の移動は旧共和国の者は禁止されている。傭兵部隊もその例外ではなかった。

「そうすると、次男か三男の二人を先に調べますか?」。

「そうだな。しかし、思い出してくれ、内務局に言って圧力をかけられそうな人物は誰だ?」

「ああ、副市長の次男ですね!」

「今のところ、一番の怪しい人物だ。弁護士は、彼には遺産がさほど分配されないと言っていた」。

「しかし、待ってください、きょうだいが遺産を狙っているのであれば、遺産を一番相続された妻を狙うのではないでしょうか?」

「うむ。確かにその通りだな。明日、ヴェールテ家に言って夫人に気を付けるように伝えよう」。

 今日は遺言書があることが始めて分かったが、遺産目当ての殺人という事であれば、昨日のユルゲン・クリーガーの推理は正しいものとなる。

「一応、副市長からも話を聞いてみたい。明日、ルツコイ司令官にお願いして副市長を呼びつけてもらおう」。

 マイヤーはそう言ってカップのエールを飲み干した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ