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捜査4日目~クリーガーの毒

 クリーガーは朝遅い時間に覚めた。

 軍医のザービンコワに休みを強制されて四日目。昨日までの三日間は読書をしていたが、暇をつぶすのに苦労する。今日はどうしようか。

 クリーガーは、お湯を沸かすため部屋の端にある暖炉に魔術で火を起こしヤカンを置いた。

 朝食に干し肉を食べていると、扉をノックする音が聞こえた。マイヤーか?と思い、「どうぞ」、と中に入るように言う。

 すると、扉を開けて入ってきたのは予想に反してザービンコワだった。クリーガーは自分が肌着姿なのを気にして、部屋にあったガウンを急いで羽織った。


「おはようございます。こんな格好ですみません」。

 クリーガーは照れ隠しにいつも以上の笑顔で挨拶した。一方のザービンコワはいつもの様に冷静な口調で返事をする。

「いいのよ。ちゃんと休めていますか?」

「おかげさまで。昨日までは一日中読書をしていました」。

「そう、それは結構です。別に一日中部屋に閉じこもっている必要は無いのよ。私が行ってダメと言ったのは、兵舎と修練所だけです。気晴らしに街に出るのは大丈夫ですよ」。

 そうか、それは気が付かなかった。一週間ずっと部屋に閉じこもってしまうところだった。


 ザービンコワは部屋の中を見渡した。棚の上にある小さな瓶を見つけ、それを手に取ってクリーガーに尋ねた。

「これは毒?」

「そうです。以前、私が医療室に置いたのと同じものです」。

「これをどこで入手したの?」

「港に薬商人が居て、そこの店で買いました」。

「あなたは、この毒をどうやって使っているの?」

「投げナイフに塗っています」。

「投げナイフ?」

「そうです。文字通り敵にナイフを投げつけるのですが、毒が塗ってあると、かすり傷でも麻痺させることができます。そして処置が遅れると死にます」。

「なるほど。これは傭兵部隊の皆が使っているの?」

「いえ、私だけです」。

「なぜ、あなただけ?」

「以前、敵に意表を付く攻撃をと考えて、これに行きつきました。でも、皆がやれば“意表を付く”攻撃にはなりませんから」。

「なるほどね」。

 ザービンコワは納得したのか、小瓶を棚に戻した。


 クリーガーはお湯が沸くのを見て話題を変えた。

「お茶でも飲みますか? ラーミアイ紅茶という珍しい物があります」。

「ありがとう、いただくわ」。

 クリーガーはヤカンに茶葉を入れて少し待つ。クリーガーの背中からザービンコワが声を掛けた。

「私、明日は非番なんだけど、街を案内してくれない?」

「え?」

 彼女の予想外の言葉にクリーガーは少し驚いた。

「あなたに働きすぎと言っておきながら、私も、ちょっと働き詰めであまり休めていなかったから。あなたほどではないけど。それで私も三日間休みを取ったのよ。それで、私、この街に来て三か月経つけど、ほとんど城から出たことがなくて」。

「そうなんですね」。

「だから、街を案内してくれれば嬉しいわ」。

「わかりました」。

 クリーガーはカップにラーミアイ紅茶を注いでザービンコワに手渡した。

「この街で人気がある紅茶です。お口に合えば良いのですが」。

「ありがとう」。

 ザービンコワはカップを受け取って口を付けた。

「おいしいわ」。

 彼女は笑顔で言った。

「よかった」。

「ところで、確認だけど、この四日間は部屋から出てないのね?」。

「マイヤーの部屋には二度行きました。それぐらいですが、それがなにか?」。

「いえ、何でもないわ」。

 ザービンコワはそう言うと、カップの紅茶にもう一度口を付けた。

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