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07 訪れる厄介ごとの匂い

 転生して、木になって、やることないから光合成。

 お日様の光は私に魔素を与えてくれて、大切な友達も出来た。


 しかも、最近はテティと話しているおかげで『念話』のスキルも手に入れた。

 これでテティからしか繋げられなかった念話を私からも出来るようになったわけだ。


 「それで、テティ。この子たちは?」

 「テティの友達、皆は樹霊と精樹霊。少しならお話しできるよ」


 そうか、これが、恐らく一番小さなもはや光の粒と化しているのが樹霊だろう。そして、ほんの少し光の粒が大きくなって、話をしているのが精樹霊だろう。


 「樹霊も精樹霊も結構小さいんだ」

 「うん。樹霊はお話も出来ないし、テティ達の簡単な話を理解できるだけだから。精樹霊になれば簡単な会話くらいなら出来るの」


 つまりは、樹霊さんは人間換算で約2歳辺り、精樹霊さんは大体4、5歳くらいと言う訳だ。 

 精霊以上になると生きてきた年月に応じてさらに知能は上がるらしい。大精霊さんや精霊王さんはさぞかし聡明な方々なのだろう。


 「それで、今日からこの子たちも一緒に?」

 「うん。ルアここに一人は寂しいでしょ?」


 はわわー、なんていい子なの!?ここが日本なら好きな物でも買ってあげたい。

 もうこの笑顔最高ですわ!この笑顔だけで1000年は持つね!

 

 そうして私たちはまた話に花を咲かせる。皆眠たくなると私の枝の上で眠っている。

 最近気づいたのだが、私、木なのに虫らしきものが一切見受けられないのだ。虫は前世からかなり苦手だったからありがたいのだが、それでも不思議だ。

 きっとこの森の魔素の多さ原因なのだろうが。その上自分で光を浴びて魔素を作りだしてはそれを溜め込んでいるので、結果虫なんてつこうものなら即死だろう。

 フハハハハハ!!この世界に来てどうやら私は完全なる虫耐性を獲得してしまったらしい。

 全く、素晴らしい能力だ。自分で自分が恐ろしいゼ!


 そんなこんなで毎日毎日話しては笑い、テティと出会った頃以上に賑やかになった。

 ここに来て何年かは分からない。それでも、私としての意識が覚醒した辺りから数えてももう既に数か月は経っただろうか?人間だった頃は多忙さゆえに時が早く流れていたが、今は楽しさから時が早くなるのを感じる。


 「それにしても、綺麗な場所だよねぇーここ」

 

 みんな寝ているためそれは単なる独り言。それでも、そんな声が漏れてしまうぐらい綺麗な森だ。

 森か、前世じゃ確か森林問題が結構ニュースやらでも取り上げられていた。身勝手な人間たちがこういった森を少しずつ破壊していく。

 私も人間だったからか、少ししょうがない気はするが、


 「この景色がなくなるのは、結構堪えるわ」


 別に、人間を否定してるわけじゃない。

 なんなら木に転生した今も、心は人間そのものだ。

 だから森を破壊して生活していることは誰よりもよく知っている。人間は少なからず木を切って生活しなければいけないのだから。


 それでもこの森は大丈夫なんだっけか?

 確か魔素濃度が濃くて、木の硬度が異常に高いから人間ではまず傷もつけられない的な事を言っていた。だから、多分大丈夫だろう。


 そんな事を考えながら、今日も光合成をして栄養と同時に魔素を溜め込んでいく。光合成、とは言ってもそれはスキルの効果なので酸素を吐き出したりとかはしない。もちろん魔素も。自分に有益なものは全て自分に溜め込んでおくのだ。

 私の枝の上で眠っているテティの寝顔はこれまた可愛くて、もう食べちゃいたいくらい!いや、それは嘘です。こんな可愛いもの、口になんて入れられません!

 

 あ、元々口なんてありませんでした!てへっ!


 「―――!!」


 そうやってテティ達を見守っていると、突然テティが怖い顔して起き上がる。


 え?まさか今のが癇に障ったとか?すんません!テティさんマジ寒すぎてすんません!

 

 凄い、今テティの速さが凄かった。マジでパネェっすわ!起きる速度えげつねぇわ!目が開いたと思ったら次の瞬間にはもう飛び上がってるんだもん。


 「て、テティ?どうかしたの?」

 「……やっぱり、来た」


 そうテティが呟く。その顔には呆れと少しの怒りが滲んでいる。

 よかったー、どうやら私に怒ってるわけではないらしい。

 

 すると、テティが見据える先、そこから一体の精霊らしきものが飛んで来る。恐らくテティの言ってた他の五人の精霊の一人だろう。


 「テティ!また来たよ!」

 「人数は?それに今度は何をしに?」

 「それが、なんか凄そうな斧みたいの持ってて、木を伐りつけてるの!」

 「それは本当!?」


 なんだ?なんの話だ?人数?斧?切りつける?


 「ごめんルア!テティはこれから人間たちを追い返しに行かなきゃだから」

 「人間!?」


 いやいや、ちょっと待って欲しい。何がどうなっているのだろうか?それに人間が、え?人間ってこの森いても大丈夫なの!?普通死ぬんじゃないの?


 「場所はどこ?」

 「えっと、森の西側。また前と同じところ」


 二人でなんか話が進んでいる。森の西側?というか前にも人間が?


 「ちょ、テティ!人間がこの森に?」

 「うん。人間でも、魔法が使えたりすれば入ること自体は難しくは無いから。それでも、入るだけなら良いんだけど、森を汚くしたりするから。だから追い出さないと」

 「え?でも、この森の木は人間には傷つけられないんじゃ……?」

 「うん。その筈、なんだけど。それでもこの前来た人間に木を一つ伐られたんだ。だから、見て見ぬふりは出来ない。大丈夫。テティには万が一は無いから」


 その顔は少し悲しそうだ。それもそうだろう。自分の仲間が人間に切り倒されている。そんなの誰だっていやだろう。

 人間の事を分かっている私でも、木が切り倒されたと聞いて今物凄いショックを受けている。

 何故だろう?私は人間だったはずなのに?


 「ねえ、テティはその人間たちはどうするの?」


 聞いてしまう。だって、これは聞いておかないと。

 今までどう立ったのかは分からない。けど、こんなにも悲しそうな顔をしているのだ。

 木がこの前伐られた、そう言った。こんなにもみんなの事を大事にしているんだ。さっきだって他の樹霊を気にかけてしっかりと世話をしていた。まるで弟や妹を慈しむ兄の様に。

 

 そう言えば、兄さんも子供の頃は私にこんな風にしてくれてたな、なんて考えてしまったくらいだ。

 だからこそ、テティは優しいから、仲間が傷つけられるのを許せない。


 そして、何より、こういうお約束。精霊などが人間に忠告、警告をするとほとんどの確率でこれに逆らう。

 つまりはテティを傷つけようとするはずだ。そんな展開はよく知っている。盗賊やら密猟者やら、悪に準じる人たちは総じて警告を受け入れない。

 しかもテティのような小さな子供のような相手にならこれ幸いにと斬りかかること間違いなしだ。

 この森の資源を求めて、魔法まで使って入ってくるような奴らだ。きっと常識なんて無いし、この森の事についてもあまり知らないだろう。

 恐らくは精霊についても分かっていないはずだ。分かっていればこんなやばい存在のいる森にちょっかいをかけようとはしない。


 だが、それでも、私はテティが心配だった。

 テティが負けるとは思っていない。こんな何も出来ない私と違って、テティは進化確率0.8%を見事クリアして進化した凄い精霊だ。だから力に関しては信じていい。そう、力に関しては。


 こんな恐らく精神は子供のままのテティに、その力を人間に使わせるのか私は?

 絶対人間は警告を聞かない。一度見下せば増長して歯止めが利かない。それがチンピラのテンプレだから。そんな相手に何もしないわけにはいかない。

 精霊たちがどんなに勇者に加護を与えようと、人間の利益になることを助けようと、結局はこうして手の平を返したように森に、精霊に牙をむく。

 

 私にとっては初めての事だったが、凄くそれが悲しいものに感じた。


 だから、テティはきっとやりたくもないのに人間を手にかけることになる。

 なら、私にできる事と言えば……


 「分かった。行って来て、テティ。それでも、警告だけ、ね?絶対テティが人間を手にかけることが無いように。いい?」

 「……約束は出来ない」

 「そうしたら私が、何とか出来るかもしれないから」

 「本当!?」


 何とか、出来るかは分からない。

 それでも、やれば出来るのでは?なんて思う。


 「やってみる。多分、出来るはずだから!」


 何を?とはテティは聞かない。それでもその表情はいつもの可愛いテティのものに変わっていた。

 私はテティに私の案を離すべく考えをまとめる。


 いよーし!やるぞ!人間に恨みはないが!というか、元人間だし、その人間が凄い卑怯で最低な奴らっていうのも知ってるが、それでも今は仕方がなーい!

  

 フッフッフ!さあ、私のスキルが火を噴くぜ!


これ書かないと評価は要らないと思われるらしいので。

面白い、続きが気になる、などなど色々思われた方はページ下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして貰えるとありがたいです。

皆さんのその評価が執筆意欲に繋がりますのでどうかよろしくお願いします!

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