59 ようやく本題!?
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「これで分かったでしょう?あなたじゃルア様に意見することも烏滸がましいのよ」
「ぐっ!……くそっ!」
レリスが目を覚ましたティルシェに辛辣な言葉をかける。
私とティルシェの戦いが終わってから約一時間。ティルシェは悔しそうな顔をしながら飛び上がる。
「これで私の言う事聞いてくれるよね?」
「うぐっ、あ、あれは少し油断してただけで……ほ、本気を出せばお前なんて、」
「本気を出さないって言ったのは誰だっけ?」
本気を出さなくても余裕、なんて言ってるからああやって痛い目を見ることになるのだ。
まあ、若い子にありがちな事だよね。自分は本気を出さなくても出来るっていう根拠のない自信。しかもそれで何か自分に都合が悪くなっても、本気じゃなかったの一言でけりがつく。便利な言葉だ。
でも、この言葉は結構使い時を間違えると痛い目を見る。
自分は本気を出していなかっただけだし!と力強く答える。でも、だからといってそれで自身の力が高いという証明は出来ない。それどころか、じゃあもっと凄い事出来るよね?とハードルを二段も三段も上げられて自身の首を絞めることに繋がる。
いやー、これは結構その通りなんだよねー。
全然私がそうだったって事は無いよ?小学校とかの持久走で一番を取ろうとしたら追い抜かされて二番になったからって自分が見栄を張ったことなんてない!ないったらない!!
「く、くそっ!いいか?俺はお前を認めたわけじゃない!いつかお前の化けの皮を剥がしてやる!」
「おー、うん。いつかね?今は少し大変だからやめて?」
というか私はこれ以上皮を剥いでも特に中には何も無いからやめて欲しい。
人間みたいに消化器官とかも無いからね。ただただそこは幹!!
ティルシェは何やら小物感を演出しているいや、これは演出ではないのだろう。無いのだろうが、それでも溢れ出る小物感は抑えられていない。
「まあ、私としてはこれからそこまで突っかかってこなければそれでいいから」
「お、俺を馬鹿にしやがって!?」
「してないしてない」
実を言うとさっきの戦いだって、もう少し苦戦するかと思っていたのだ。
私の方が実力が上だったとしてもできるだけギリギリの戦いを演じてなるべくティルシェを納得させようと思っていたのだ。
そう、思っていたのだ。が、まさかあの魔法があそこまでの威力を秘めているとはかなりの誤算だった。もう少し弱いと思っていたらまさかの大威力だ。
「ティルシェ、それ以上の見苦しい真似はあなただけではなく私たち、ひいてはルア様の品位まで貶めかねません。これからは行動も言動も十分気を付けて行動するように」
「うぐっ……」
「分かりましたか?」
レリスから濃密なオーラと圧がティルシェを襲う。これには流石のティルシェも素直に頷くしかなかった。
「まあ、これで私の力の証明にはなったかな?」
周りの空気がやたら重くなっている。しかも、物理的に。
レリスのオーラのせいでみんななんだか重力が倍になったように少しきつそうにしている。
だからこそ、私が空気を読んで声を出す。
正直あの程度で力の証明も何もないわ!!
と、心の中で叫んでいると、レリスがオーラを引っ込めて満面の笑顔で答える。
「勿論です!私も今まで長く生きてきましたが、初歩的な魔法ですらあの威力。まさにルア様に相応しい魔法でしたわ!」
「いや、大げさ、」
「大げさではございません!あの魔法であの威力など本来ならあり得ないのです!」
「それは僕も同感かな。あんなの僕だって無理ですもん」
今度はレインがそれに追随する。今までずっと黙っていたレインだが、ここに来て口を開けたのだ。
だが、それも全ては次の瞬間の為だったのだと思い至る。
「あなたもそう思いますか!?レインにしては物分かりが良いじゃないですか!!」
「それは、それほどでも……あるかな?」
もうあの顔からしてきっと計算して放った言葉なのだとうかがえる。
遅れて来たが為にレインに対して少し当たりのきつかったレリスも、今の言葉で全てが無かったことになる。
凄い。あんな怠そうな顔をして結構計算高いらしい。
「私も、あれは凄いと思った、です」
今度はリニィが口を開く。
それに合わせるようにアルマも意見を述べる。
「私もあんな威力の水槍は見たことがありません。レリス様の魔法ですらかなりの間衝撃を殺せていませんでしたから、そこからも分かるように、相当な威力があるとみました」
こっちは中々によく見ていたらしく、威力の分析までしていた。
やはりさっき私の魔法を防いでいたのはレリスの魔法だったらしい。
ちなみに『万能者』で鑑定をしてみたところ、あれは結構上位の魔法障壁だったらしい。
それに当たっても威力が中々衰えなかったのだからあの魔法はかなり危険だったことが分かる。
もしティルシェの顔面になんて直撃していたら一発アウトの可能性もあったっぽい。
いやー、レリスがいて良かったね!
ハティはテーブルの横にちょこんと座って小刻みに尻尾を左右に振っている。
私が称賛されるのが嬉しいのか、それとも私が勝ったから喜んでいるのか。どちらにしても言えるのは、その姿が忠犬みたいで可愛い事だ。渋谷駅とかで私を待ってそう。
「まあ、なんにしてもこれで一件落着だね」
これで面倒事がようやく片付いた。
じゃあ、ここで帰ると……いや、待て!?
今までかなりの時間も経ってたし、ティルシェと戦ったせいでなんかひと段落した感じがしてついつい帰ろうとしちゃったけど、全然何一つ問題は片付いていなかったのだ。
それはエルフのレントが持ってきてくれた魔物の情報。
村及び周りの森林がフェルナンドとの諍いで少々被害を受け、そのせいでエルフたちの村が魔物の脅威にさらされているという事だ。
そして、その魔物たち数を減らし、出来れば戦力をしばらく貸す。
このエルフからの頼みについて色々と話し、出来れば協力してくれる精霊たちを探そうと思って今回みんなを呼び出したわけだ。決してティルシェの我が儘に付き合うために呼び出したわけじゃないのだ。
「それじゃあ、色々と終わったことだし僕はこれで」
流石レイン。話によるとレインが一番新参な筈なのに自重する気も全くないのか誰よりも真っ先にその場から去ろうとする。
「待ちたまえよレイン君」
「うえ、その気持ちの悪い呼び方やめてくれませんか?ちょっとなんだか気持ちが悪い気が……」
「まあまあ、実は私の話はまだ一ミリも始まってなかったんだよ」
「嘘でしょ!?」
「逆に聞くけど、私何か喋ってた?」
思わず聞き返す。最近物忘れが激しいのかもしれない。自分でもそれは分からないので、もしかしたら物忘れをしている事自体を忘れてしまっているのかもしれない。
いや、そんな事は無いだろうけど、それでもやっぱり少し不安になる。
もしかして私、皆を集めた理由喋ってた!?いやいや、まさかそんな事無いよね?
「そう言えば僕はここに呼ばれた理由を聞かされてないかった」
良かったー!どうやら私は物忘れが激しくなり過ぎたわけではなかったようだ。
でももうそろそろ話を始めるとしよう。これ以上何かに邪魔をされる前に。
「じゃあ、皆を呼び出した理由を話していこうと思う。まず、今回どうして集めたのか、それはいわば皆の力を借りたかったからなの」
そこから詳しく説明を始める。
この前のフェルナンドとの諍いの事。それによる被害、そして被害からの副次的災害とも呼べる魔物たちの脅威。
その問題によるエルフたちの現状。
それらを大まかに説明してからエルフたちの頼みと、その問題の解決策。つまり精霊たちの力を借りることが必要だという話をした。
「そうですか。そんなことが森の外で」
レリスが少し考えるようにそう呟く。
この問題の発端とも言うべきエインさん。元を辿ればもともとこの人が消えてしまったことにより魔物達が発生したわけなのだ。
しかもここらはやたらに魔素が多い。よって生まれて来る魔物たちは一体一体がとんでもなく強力なわけだ。
そんな話もしたからか大抵の人はしっかりと考えてくれているようだ。
だが、それに耳を科さない者もいる。
レインはまるで聞いても理解できてないとばかりに呆けた顔をしている。
ティルシェはというと理解はしてるが納得は出来ないという顔だ。というかティルシェの場合は私がいる限り何も納得出来なさそうである。
「それで私たちに力を貸して欲しいとエルフたちが?」
「うん。別に私だけ行っても良かったんだけど、その場合はテティだけ危険に晒すことになっちゃうから少し考えものでさ」
私たちだけだと、何かあった時にカバー出来る人がいないのだ。
私はテティに感覚を共有してもらっているだけなので何かあってもテティとの繋がりを切るだけで済むが、流石にテティはそうはいかない。
何かあって、その結果テティが大けがを負ったり、ましてや死んだりなんてすれば、私は多分生きていけない。
だからこそ、誰かカバー要因として、そして常時エルフたちのの交流の為にも向こうに出向いてくれる精霊がいると助かるわけだ。
「ってことなんだけど、誰か協力してくれるよって人いませんか?」
そこで周りの精霊たちに目を向ける。特にリニィ辺り。
だが、そこでレリスがまたも口を開く。
「アルマは私の仕事を手伝ってもらいたいですし、ティルシェはまずルア様のお隣にいるべきではないです。私も協力できればいいのですが中々ままになりません。ですのでリニィとレインを連れて行って行ってはどうでしょうか?」
ここで思わぬ指名が入ったことで名前を出された二人は驚いた表情を浮かべる。
「リニィは一応はテティに次ぐ古参の精霊ですので問題は無いかと。それにレインは毎日暇そうにしているのでいい気分転換になるでしょう」
「ちょっと、僕だってやることが……」
「何かあるのかしら?私には毎日寝ているようにしか見えないけど?」
「……イエナンデモナイデス」
最後は観念したのか棒読みになってそう答えるレイン。
「わ、わわ私でも大丈夫ですか?」
「まあ、リニィになら任せられるかな。私も最初は一緒に行くし、エルフたちもみんな優しいからリニィでも大丈夫だよ。それに仕事は魔物の退治だけだしね」
実際どれほどの魔物なのかは見た事が無いので分からないが、それでもリニィならば簡単に倒せるのだろう。だからそこまで心配はしていない。
他のみんなもそれで納得したのか特に何も言わない。
ハティはというと、今もまたさっきと同じように座りながら尻尾を振っている。
なんだかんだ色々あったものの、これで一先ずは最初の問題は解決だ。
協力者の確保が完了した。ならば次は実際に問題の排除に向かうのが良いだろう。
「それじゃあ、早速で悪いけど明日から仕事だからリニィとレインはよろしくね!あ、ちなみにレイン君。明日遅れると……」
私の遅れると、という言葉にレリスが反応してレインにするどい視線を向ける。
「あ、いやー、やだなー。遅れませんよ僕は。明日はしっかりと時間ピッタリで向かいますよ!」
レリスの眼光の鋭さに恐怖を覚えたのかそう素直に答えるレイン。
それを少し不安に思うものの、ここで少し遅刻しようがさしたる問題はないのでまあいいかと思う。
だが、せめてレリスさんには迷惑はかけないで上げて欲しい。と、そう思う今日この頃だったのです。
これ書かないと評価は要らないと思われるらしいので。
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