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58 予想外の威力

今日も遅くなりました!すみません!

 外に出て、レリスが張った結界の中にて私は自分の能力の確認を行っていた。

 いくら体がテティの物とはいえ、これは一応私とティルシェの戦いなのだ。なので今回はテティの力は貸してもらわないようにする。

  

 では、そんな事が可能なのか?

 これについてだが、テティが人間であれば少し難しかったかもしれない。

 今回私は特に『森林支配』を使うつもりは無い。あれは個人に対しては使いづらい。仮に使うとなると微妙な調整が出来ないのでこの村ごと相手を殺してしまうからだ。

 

 ならば今回は何を使って戦うのか?

 まず使うのは私の能力の中でも一二を争う最強能力『万能者』だ。

 『鑑定』や『検索』で敵の力やら何やらを暴きながら、危なくなればその時にその時に応じたスキルを獲得する。

 これだけでも十分に強いのだが、今回実験も兼ねて使ってみようと思った力がある。

 それがこの『精霊魔法』というものだ。なんでもこれは精霊たちの固有能力らしく、これこそがテティが人間であったらかなり勝負が厳しかったかもしれないと言った理由なのだ。

 というのも、この『精霊魔法』だが、大気中の魔素に干渉して効果を及ぼす魔法なのだ。

 本来の魔法は自分の内なる魔力によって魔法を放つが、この魔法は自分ではなく大気中の魔素を使う。

 だが、これだけでは人間の一部の術者でも使えてしまう。


 しかし、この私の力には秘密があるのだ。私と言っても精霊全体の秘密なのだが。

 この『精霊魔法』は大気中の魔素に干渉して行使すると言ったが、これではまだ真実の五割程度にしか届いていない。 

 この『精霊魔法』とは、その名の通り精霊の魔法だ。そしてこれは大気中の“精霊”に力を貸してもらうことで発動することが出来るのだ。

 

 と、ここで疑問が生じたと思う。

 精霊とはテティ達のような者を指すのではないのか、と。

 これも色々複雑らしいのだ。というのも、この『精霊魔法』で言うところの“精霊”とは言い換えると“元素霊”とも呼べるらしく、その一体一体には微弱な自我しかない。

 いわばこの森における樹霊たちのようなものだと言える。

 元素霊はその名の通りこの世界の魔法の元素である火、水、風、土とそれぞれ存在しており、そのほかにもいろいろな属性の者たちが存在している。

 そして、その精霊――元素霊が進化した者ははっきりとした自我を確立し、精霊たちの上位者として君臨するのだ。

 

 つまり、この森における精霊たちは、全てがユニーク個体と言う訳だ。

 通常の元素霊が進化したような安い存在ではないという事だ。


 そして、私はこの精霊――元素霊に力を貸してもらうことで魔法を使えるわけだ。

 一応私も精霊の仲間?なので私一人でも『精霊魔法』は行使出来るのだが、やはりここは基本通り周りこの精霊たちに力を貸してもらうことにする。

 基本は大事だ。何事も基本に則ってこそ真価が発揮されるのだから。


 私は通常の魔法が使えない。

 通常の魔法はほとんどが詠唱なのだそうだ。 

 つまり少なくともその詠唱を覚える必要があるわけで、でもここは精霊の森。

 精霊たちは皆『精霊魔法』が使える。だから通常の魔法がいらないのだ。『精霊魔法』通常の魔法と違って詠唱も必要ないし、自分の魔力はほとんど使わない。

 これはこの森の精霊たちに与えられた特権ともいえる。

 人間たちの中にも精霊――元素霊との親和性の高い者は稀にいるらしい。だが、それも本物には届かない。 


 私は今、目の前のティルシェと同じ土俵に立っているのだ。

 テティが人間だったら、同じ土俵に立つことも出来なかった。

 人間の使う『精霊魔法』と精霊の使う『精霊魔法』では差があり過ぎるのだ。

 人間は精霊にいちいち語り掛けなければいけない。大気中の魔素への直接的な干渉がほとんど出来ないからだ。

 だが精霊なら話は別だ。大気中の元素霊に語り掛ける行為そのものが私たちには必要ないのだから。


 「それじゃあ、準備は出来た?」


 私はティルシェにそう問いかける。

 

 「準備?そんなものはいらない。偽物を倒すのに本気なんて出してたらみっとも無いからね」

 「……あ、そう」


 もう腹が立ったりすることは無い。そんなの通り越して逆に感心してしまう。

 私だったら戦ったことも、ましてやその戦いぶりすらも見たことが無い相手にあそこまでの大口は叩けない。相当な自身だ。もしかしたらものすごく強いんじゃ?


 「ご主人様。私が相手をしましょうか?」


 少し緊張している私にハティがそんな事を聞いて来る。

 

 「ううん。ハティの言葉は嬉しいけど、でもこれは私の戦いだし。それに逃げたりしたら何言われるか分かんないしね」

 「そうですか。ではお気をつけて!ご主人様が負けるとは思っていませんが」


 なんとも重い期待だ。

 それに一応相手は精霊だ。元素霊と同じではない、ユニーク個体だ。幾ら進化したと言ってもハティではまだ荷が重い。それにハティはまだ子供だ。そんな事は任せられない。ハティが死んでしまったら私は多分生きる希望を失ってしまう。

 

 とまあ、そんな風に思ったものの、実は私も危なくはある。

 何せ私はスキルを使う気が無いからだ。

 

 さっき私は精霊は大気の魔素に直接干渉できると言った。

 もちろんテティも出来るし、目の前のティルシェも出来るだろう。

 でも、ぶっちゃけてしまうと、私は出来ない。

 そう。私には直接魔素を操ることが出来ない。まだ……。


 だって、いきなりそんな力を手に入れても、今まで魔素なんてものとは無縁の世界で生きていたのだ。そんな私に急に目に見えない神聖物質を感じて直接操作しろ、なんて言われても出来るわけが無いのだ。

 幸い大気中の精霊――元素霊との対話は出来るのでどうにかはなる。

 だが、それでも自分で直接操作するのと、いちいち意思疎通しながらだとどうしても差が生じてしまう。

 

 それが今、私とティルシェの差となっている。

 では、なぜ『森林支配』を使わないのか?ということになって来るが、これに関しては『森林支配』の力が未知数なのも理由に挙げられる。

 『森林操作』ですらあれほどのスキルだったのだ。それが操作から支配、なんて大仰な物に変わったのだ。操作範囲や限界は言わずもがな、それ以外にもまだ解放されていないような出鱈目能力もあるかもしれない。それ以上に『支配者権限』というものを見て、何やらとんでもなく危ないような感じを覚えたのだ。


 いや、だって権限だよ?支配者だよ?普通にそれってゲームのラスボスとかが持ってるようなスキルじゃん?なんか一部は想像できそうだけど、それでもどんな能力なのかは分からないし怖いじゃん?

 そんなスキルを、いくらティルシェを少し静かにさせる為とはいえ、殺してしまう可能性がある力を使うのはやっぱり躊躇われる。

 最悪私がこの森を滅茶苦茶にする可能性も無い事も無いのだから。

 と言う訳で、私は少しの不利を甘んじて受け入れることにする。とはいえ『万能者』もあるのでそこまで言う程やばい事態にはならない、と思うが。


 そんな事を考えながらレリスが張った結界の中で私は構える。

 テティの力は借りない。これは私とティルシェの一騎打ち。私が進化した時の良い目安になることだろう。


 「ふん。負けても恨むなよ?」


 ティルシェはそう言い放ちながら私に向かって魔法を放ってくる。

 それは『精霊魔法』であり、属性は火に分類される。

 以前の人間とのいざこざの時に見た火とは比べるまでもなく巨大で、その大きさは直径約三メートルほどの巨大な火球となっている。

 それは物凄い速さでティルシェの手から放たれて、地面の花や草を焼き尽くしながら凄まじい熱量と共に私に迫って来る。

 

 はっきり言って舐めていた。精霊を舐めていた。

 今までまともに戦っているところなんてほとんど見たことが無かったのでついつい舐めていた。

 でもまさかティルシェのですらこれほどの魔法を使えるとは思ってもみなかった。やはり魔王に匹敵するというのは伊達じゃないらしい。

 

 さて、では私はどうするべきか?

 私は発動速度が格段に遅れている。故に相殺を目的とした魔法は隙となって相手に付け入る隙を与えてしまうだろう。

 それは流石に駄目だろう。相殺はしたが敵の攻撃スピードに追い付けず、結果負けました、なんてことになったら私はこれから配下に負けた弱小神樹として笑われてしまうだろう。

 

 別に私は勝ちにこだわるような性格はしていない。基本は今が楽しく、それでいて問題なんて無く平穏に暮らせればそれでいいただの普通のOLだったのだ。

 だが、この勝負はある意味私のこれからの平穏が掛かっている。ここで勝つか負けるかでまわりからの風当たりも変わって来る。


 なら、私は今ここで負けるわけにはいかない。

 私は、負けるわけにはいかないんだ!!


 うん。なんかそれっぽい主人公みたいで興奮してきた!

 よっし、それなら私が考えるのは……、

 まずは火が相手なら水が有効だ。敵は球体。そしてその力は圧縮されているよりかは放出されているイメージだ。まだまだ魔法の腕は甘いらしい。テティも今ため息を吐いていたくらいだ。

 ならその強度はそこまでのものではない。恐らくだが魔法を槍状に変形させ、少し風の力を加えてやればいとも簡単に弾けて消えるはずだ。

 あとは狙いを定め、少し風の魔法で推進力をプラスする。


 「ふっ!私の力、思い知るといい!弾けて、消えろ!!」


 ここで混ぜてしまうとそれはそれでだめなので、ここは素直に消えろと言っておく。

 だが、そんな私の言葉が効いたのか、その水の槍は目にも止まらぬ速度で火球と衝突する。


 「はっ!そんな貧相な水如き、俺の火球……が!?」

 「貫け!水槍(ウォータースピア)!!」

 

 『万能者』の検索能力で調べてみたところ、通常の魔法には水の形状を変えて槍にして攻撃する魔法もあるのだとか。その魔法は水槍と書いてウォーターランスというらしいが、私の場合は風による加速効果も上乗せされているため威力は私の方がはるかに高い。

 と言う訳で差別化を図るためにランスではなくスピアにしたのだ。ま、ほとんど変わらないんだけどね。


 だが、その威力は凄まじく。ティルシェは火球が一瞬で壊されたことで目を白黒させている。

 それだけで終わることは無く、その後も水槍は凄い速さでティルシェに迫る。

 

 「な、なんだ、これ!?んな、俺の魔法が……」


 もはや戦意などとっくに失われたのかその場で何も対策を講じようとしない。

 

 まずい、このままだと直撃する!?

 流石に死にはしないだろうが、それでも重症になったりはするかもしれない。

 そんな事になれば弱小神樹の汚名回避から、今度は悪逆神樹と周りから恐れられてしまうかもしれない。

 

 だが、そんな心配はどうやら杞憂だったらしく、槍がティルシェの眼前に迫ったあたりでレリスが何やら魔法を使う。

 それに阻まれて槍はしばらく推進力のままにその障壁を砕こうとするが、やがて失速し、魔素になって消えていく。


 ティルシェはその槍のせいか、その場で気絶して空中から地面へと落下していく。それはリニィたちが救出する。

 

 一時はどうなる事かと思ったが、どうやら事なきを得たらしく一安心だ。

 それにしても、初歩的な魔法ですら結構威力が高くなった。風魔法の併用による速度アップをしたのがどうやら過剰な威力へと繋がったようだ。

 もともと『精霊魔法』は通常魔法よりも威力が高くなりやすく、結構危ないらしい。

 

 これからは使うときはもう少し良く考えよう。

 そんな事を考えながら私はとりあえずレリスに促されるまま、また部屋へと戻るのだった。


 出来ればティルシェにもすぐ目覚めてもらいたいものだ。

これ書かないと評価は要らないと思われるらしいので。

面白い、続きが気になる、などなど色々思われた方はページ下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして貰えるとありがたいです。

皆さんのその評価が執筆意欲に繋がりますのでどうかよろしくお願いします!

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[一言] 返信ありがとうございます! いえいえ!20話と言わず40話はたまた100話200話先でも全然良いです!何話先になろうと読みます!面白いので!
[一言] 早く主人公の人化が見たいです!(あ、でも早く出せって意味じゃなくてそれが出てくるくらい作品がおっきくなってほしいって意味です!)
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