45 オハナシしましょう?
セリアの元にたどり着いた時、セリアは血だらけになって兵士たちに囲まれていた。
みんな怯えるようにセリアに槍を向けている。
なぜここまで血だらけなのかは分からない。
はっきり見たわけでもない。それでも理由はこいつら以外ないだろう。
とりあえずスキルでセリアの周りに壁を作る。こういうことも出来るから『森林操作』のスキルはとても便利だ。
『森林操作』と『感覚共有』を使って残りの兵の数を確認する。
ざっと残り3000くらいだろう。
セリアが7000近くを一人で倒したらしい。一騎当千どころの話じゃないね!
「テティ、やれる?」
私は残りの3000の兵を見てテティに聞く。
「殺す?」
「いや、なるべく殺さないでもらえると良いんだけど」
「分かった!」
お、おう。凄い自信だ。テティさんは自信に満ち溢れている。
でもこいつらは殺す価値もないし、殺して死体がこれ以上森に転がるのも嫌だ。
だって、自分の庭に死体が転がってるって思うとさ、ね?
それに、これからまたここでエルフたちが暮らしていくわけだ。
そんな場所を人間の死体で一杯には出来ない。
この森は精霊の森の近くの為心配はいらないが、普通は死んでから適切に対処しないとアンデッドとして復活するらしい。
そんな普通だったらアンデッドな人間の死体なんて、やっぱり増やしたくないじゃん?
もし、何かの手違いで埋めたはずの地面から出てきたりしたらホラーだよ?
って、事で殺しはしない。
殺しはしないが、それでもやっぱり全員無力化して、
「あそこの王とオハナシしないとね!」
「じゃあ、始めるよ?」
「おっけー!じゃあ、やっちゃって、テティ!!」
そこは周りの木と同じくらいの高さ。
多分10メートルくらいの位置。
テティは地面に、兵士に向けて手を翳す。
すると辺りから風が兵士たちを中心に渦巻き始める。
あれ?なにこれ、やばくない?
「テティさん?これって?」
「テティのスキル、『風操作』」
おいー!『風操作』ってなに?操作って、レアスキルじゃなかったの?
いや、別に精霊だから持ってても不思議じゃないんだけど……
「効果が、ねえ?」
目の前、テティの視覚を共有して私の意識に映し出されるその光景は、一言で言えば圧巻だった。
今まで下から私たちに槍を向けていた筈の兵士たちが、いつの間にかその竜巻に呑まれているのだから。
そして、何より驚くべきはテティの腕だ。
あの数の兵士たちを巻き込むとなると、それぞれが接触して、それこそ大惨事にすらなりかねない。
槍だって舞ってるし、鎧の一部が外れている兵士もいる。
そんな武器や防具も丁寧にぶつからないように、ただただ人間たちの戦意を挫くための見事な竜巻。
今までだって凄いのは知っていた。それでもやっぱり、この光景はやはりおかしいくらい圧倒的だった。
やがて兵士たちも風の中では無力だと知ったのか動きを止める者も出てきた。
初めから動かず失神している者もいる。
「そろそろ良い?」
「う、うん。もう、いいんじゃないかなぁー、は、ハハッ」
テティは怒らせてはいけない。これも徹底しておこう。
そして、兵士たちはそのまま舞っていた全員が無傷で地面に下ろされる。
何が起こったのか分からない者、分かって絶望する者、はたまた未だ気を失ったままの者。
彼らは一様にテティを見て、そして誰もが恐怖で顔を引きつらせる。
見た目は本当に小さな精霊。
それでも、その力は人間など全く以て脅威になり得ない、そこまでの能力を秘めた魔王にも匹敵するような、そんな圧倒的存在。
もはや誰もそんな精霊に対して敵意を見せるものはいない。ただ数人を除いては……
テティ(私)は、そんな倒れる彼らにはもう興味を失い、今も後方でふんぞり返っている王と思しき男の元まで近づいて、
「無礼であるぞ!貴様がたとえ精霊であろうと、我らが王の前出ようなどと、この私が許さん!!」
なんだこいつ?
『テティ、ちょっと私が喋らせてもらうね』
『ん。分かった』
私が最近見つけた新しい『感覚共有』の使い方。
使い方が上達したから、今では声すら共有できるようになりました!
まあ、言っちゃえば、テティの口を私が一時的に動かせるだけなんだけどね。
だから声はテティのまま。
「あー、あー、っと、前にも一回出してたけど、やっぱりテティの声は慣れないなー」
「貴様、聞いているのか!!」
「あー、もううるさいな。聞いてますよ!ていうか怒鳴らないでくれない?今ちょっと大変なんだから!」
「ぐ、こ、この近衛総指揮である私に向かって、やれお前たち!精霊なんぞ今の我らの敵ではない!」
その総指揮さんが声をかけると周りにいた少し強そうな兵士さんが私たちに斬りかかって来る。
『テティがやっつける?』
『ううん。私がやる。人の話は最後まで、社会人の基本だっつーの!!』
指パッチン、かーらーのー!!『森林操作』!!
ここは恐怖と共に格の違いを見せつける必要があるのさ。
彼らの下から勢いよく出てきた根やらなにやらは一瞬にして彼らの動きを封じていく。体を押さえつけられる者、高い壁に阻まれる者、幾ら切り付けようと傷すら付かず武器の方が駄目になっていく。
「な、なんだこれは!?」
「うぐ、こ、これは抜け出せない!?」
「かはっ!?か、体が、」
兵士たちはそこから必死に脱しようとするが、それでもやはり何も出来ない。
良かったわー、これで普通に抜け出せるような人がいたら私にはどうしようも無かった。
ちなみに、この前セリアに使ってみたらすぐに斬られて終わってしまった。
「まあ、こんな奴らに斬られるほど、この森は柔じゃないけどね!」
さて、邪魔な人たちも今はこうして私のスキルで行動不能。
攻撃とかは流石に出来ない。いや、出来るのには出来るが、単調な動きしか出来ないのだ。もし触手みたいにうねうねと動かそうものならあまりの複雑かつ膨大な情報量の処理に追われ、私の頭がパンクしてしまう。
まあ、そんな必要はないので今は動きを止めるだけにしているわけだ。
「さて、それじゃあオハナシを始めようか」
これ書かないと評価は要らないと思われるらしいので。
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