表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/81

43 親友と約束

セリアさん視点です。

10万字も突破しました。少しずつ評価ももらえてます。本当にありがとうございます!

 私は、今もエルフの森へ隊列を組みながら進行するその軍の前へと歩み出る。

 一方で周りのエルフたちは段々とその姿を森の方へと隠していく。どうやらルアとテティの言葉が間に合ったようだ。


 そして、私が前に出ると足並みをそろえながら進んでくる兵士たちはその動きを止める。中からは男が一人出て来る。


 「アルベール。やっぱりあなただったのね」

 「勇者……いや、愚者セリア。貴様はおよそ400年にわたる我が国への忠誠を捨て、幻霊を盗み出し、この国を裏切った」

 「それは、あなた達が間違っているから……」


 アルベールはしたり顔でそう言い放つ。

 なんとも嬉しそうに、まるでこうなることを望んでいたと言わんばかりに、だ。

 口では忠誠だのなんだのを口にしつつ、私の想いも全てわかっているのだろう。そのうえでこうした行動に出ている。

 

 「アルベール。あなたはなぜこの場所を?」

 「なぜ?そうだな、貴様の裏切りの匂いを嗅いで来た……」


 何が面白いのか必死に笑いを堪えるアルベール。


 「ク、ククッ!100年前だ。100年前の冒険者の情報。そして古き文献、最後に商人の噂だ」

 「それじゃあ、あなたはここがどういう場所なのか、知っているのでしょう?」

 「ああ、知っている」

 「じゃあ、なんでここに来たの!?ここに来たら、森を汚せばどうなるのか、」


 “森を汚せば裁きが下る”

 アルベールが言ったようにこの森を100年前に見つけた冒険者が死に際に残した言葉。

 精霊の怒りに触れて、恐怖を植え付けられた当時最強の冒険者がなおも後世に過ちを起こさせないように残した世界への啓蒙。


 それを知っていて尚、アルベールはこの森へと侵攻してきた。

 私を殺すためだけならこんなにも大軍は用意しない。そこまでまともな思考は、あの男は持ち得ていない。

 つまり、あの兵士たちが鎧を付けているということは、そう言う事なのだろう。


 「精霊と戦う気?」

 「頭の足りぬ貴様でも、この鎧を見れば分かるか?そうだ、この魔王を想定した鎧があれば、いかな精霊と言えど余の敵ではない!この森は資源が豊富なのであろう?」


 恐らく初めは幻霊を取り戻し、私を処刑する。それだけを考えていた。

 でも、どこかでこの森の存在を知って、そして森の資源に目を付けた。

 この森の木々が常軌を逸した硬度を持っているのも100年前に知れ渡っている。それにアルベールは目を付けたのだろう。


 だが、それも甘いと言わざる負えない。相手を過小評価しすぎている。舐めているとしか思えない。 

 そもそも、未知に挑むとなれば、最悪を想定するべきなのだ。それを単に脅威度を魔王程度と決めつけているのがそもそもの間違いなのだ。


 「アルベール。警告よ。今すぐここから立ち去りなさい。森に立ち入っていないのならまだ許してもらえるわ。死ぬより怖い目に遭いたくないのなら、すぐに、」

 「セリア、貴様はどこまで余を侮辱すれば気が済むのだ?もう余は引き下がらぬ。貴様の首、そして精霊を退け、ペットにでもして凱旋してやろうぞ!今の余は無敵の軍を持つ。たとえ相手が魔王や精霊であっても敗北は無い!!」


 そう高らかに宣言し、最後に振り返る。


 「余はエルフ、及び森の精霊たちに、宣戦布告を宣言する!!さあ、再び前進せよ、そして最初に目の前の大逆人を処刑してくれる!!」


 止まっていた兵士たちは再び侵攻を開始する。今度は私に向かって武器を構えながら。

 その光景を見て私は思ってしまう。(人間はなんて愚かなのか)と。

 

 「そう、もう警告を聞く気は無いのね」

 「さあ、その女を、フェルナンドに弓引く大罪人を此処で殺すのだ!!」


 そう兵士たちに叫ぶアルベールを見ながら、私は深くため息をつく。

 長く、本当に長く仕えてきた。人間にしては永劫にも等しい、それほどまでに長い400年だった。

 国をより良くしようとして、それで、だんだんと腐っていく国をただただ見つめるしかない自分を恨むこともあった。

 確かに外から見れば、街は整備され、人々は皆幸福そうに見えるだろう。

 だが、その実状は決して幸福ではない。


 富と権力は横暴な貴族たちが独占し、平民たちは高い税を払うことを強いられる。

 結果、税を払えずに乞食になる者、野垂れ死ぬ者、はたまた罪を犯す者も現れる。


 外から見える煌びやかな印象は全てが虚像であり、全てが王侯貴族の虚栄に満ちたものでしかない。

 少し足を踏み入れて、陽の射さぬ裏道を見れば、そこには多くの人や子供が今も死に絶えている事だろう。


 この400年、本当にあらゆるものが変わってしまった。

 多くの物が昔とはその姿を変えてしまった。

 

 これは私の責任だろう。私が何も出来ず、彼らの愚行を止められなかったが為に、今こうして森までもその欲で汚そうとしているのだ。


 「ごめんなさい、約束を守れなかったわ……ルイン」


 今はもう亡き遥かな時代の親友に向けてそう謝る。

 彼はきっと、「仕方が無い」「セリアはよくやってくれた」そう言って私を労ってくれるだろう。

 私が勇者だということも、私が戦場で傷ついてはその私の気持ちを察して寄り添ってくれた彼なら、きっと自分の席として捉えるのだろう。

 アルベールとは違う、とてもアルベールの祖先とは思えない、そんな誠実で真っすぐで私が知る限りの最優の王。


 だからこそ、そんな彼の為にも、彼が後を託すと言ってくれたのだから。


 「最後くらいは、あなた達の間違いを正す!」


 自分にはもう時間が無いのは知っている。

 早くしなければいけないのも分かっている。

 これが人の身でありながら長き時を生きてしまった代償。


 「言ってしまえば、こっちの方が呪いのようね」


 そんな事を考えながら私は進んでくる兵士たちの約3割程を剣のたった一振りで薙ぎ払う。


 「これは、私への罰。あなたのその命を以て私はこの世界での罪を、フェルナンドの罪を背負う。私の名前はセリア、セリア・フロール!!私は、親友との約束の為に、あなたを殺すわアルベール!!」

 

これ書かないと評価は要らないと思われるらしいので。

面白い、続きが気になる、などなど色々思われた方はページ下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして貰えるとありがたいです。

皆さんのその評価が執筆意欲に繋がりますのでどうかよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ