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40 それにしても目的ってなんなのかね?

毎日少しずつですがブックマークが増えていてとてもありがたいです。評価してくれた方、読んでくれている方ありがとうございます。

 さて、あんな啖呵を切った以上、私が彼らを配下に入れるのは決定事項となってしまった。

 私が森のいわば管理者?みたいなのになるとしても、やっぱりかなり荷が重い。今だってそこまで飛びぬけた力を持っているわけではない。

 いや、あるにはあるのだ。膨大な魔力が。

 でも、私はそれを使えない。幾ら何かを持っていても、使い方が分からなければ意味が無い。

 宝の持ち腐れもいいとこだろう。

 

 それでもやると言ってしまった以上やるしかない。

 

 それよりも今は少し疑問に思ったことがある。

 なぜ、人間たちはそんな大軍を引き連れてやってきたのか、という話だ。


 「そう言えば、ユフェリス」

 「なんでしょうか?」

 「人間たちの目的とかそう言うのが分からないんですけど?」

 「確かに、それはそうですね。聞き分けの無い人間でも、理由もなくこんな事をするとは思えませんし」


 考えてみても不思議だったのだ。

 まず、こんな場所まで兵を連れてくる以上、エルフの村があることは絶対に知っていることになる。

 だが、エルフの村はこの森と隣接しているらしく、外界への認識阻害の魔法は効いているらしい。それが今回は通じていない。はっきり言って謎なのだ。


 「リルート、人間の目的について何か聞いていないかい?」

 「人間の……いえ、私はすぐにこの場へ来ましたので。ですが、国の名前なら聞きました」

 「本当かい!?」

 「はい」


 目的は分からない。ここを知ってる理由も謎のまま。それでも国名は聞いていたようで、それをリルートはこの場にいる全員に伝える。


 「この森から北東方面に位置し、山脈を隔てた大国。フェルナンド王国、と」

 「そんな!?」


 そこで声を上げたのはユフェリスでもなければレリスでもない。もちろんリニィやテティでもなく、


 「セリア、何か知ってるのかい?」

 「……そ、そんな。なんで、そこまで!?」


 そう言えばセリアは人間の国で仕えてたと言っていた。

 あー、分かった。何となくだけどセリアが狼狽えている理由は分かった。誰でも分かる。なんてことはない。


 「フェルナンド王国は、私がずっと仕えてきた王国、です」

 

 やっぱりだ。そうじゃないかとは思っていた。

 私はそこで一つ疑問を解消するためにセリアに尋ねる。


 「ねえ、セリア。国を出ることは報告してきたの?」

 「……いえ、私はこの幻霊を持ち出して逃げてきたんです」

 「ん?その幻霊も国の物なの?」

 「いえ、元は幻霊の棲み処にいたものです。それを無理やり連れ去られて……」

 

 そっか。そうだよね。セリアは正義感が強そうだし、そんな誘拐紛いの事は見過ごせないはずだ。


 「元から、私はあの国から出るつもりだったんです。あの国は、もう昔と変わってしまったから」


 それからしばらくセリアからフェルナンド王国について話を聞いた。

 建国は今からおよそ400年前。つまりセリアもそのくらいから勇者になっていたという事だ。

 初代の王とは仲が良く、互いに信頼し合い、素晴らしい国を作り上げようと誓ったらしい。

 最初は一応弱小国。そりゃあ最初から大国の国は独立国とかしかないだろう。その独立国も大概が最初は小さいまま。つまりは始めは皆志を同じくして頑張っていたらしい。

 王は王でこれが凄く誠実で民想い、国想いの良い人らしく、だからこそセリアはその国に勇者として居続けたのだとか。

 だが、代は変わっていき、国はどんどんと拡大していく。

 最初は初代の王の悲願が叶ったと喜んだセリアも、昔と在り方が随分と変わったしまった王族を見て、少し考えを改めさせようとしたらしい。

 だが、王たちはそんなセリアの話には耳も貸さず、次第に強くなっていく強権を立場の弱い者や、小国に振りかざし始める。


 そりゃ嫌気がさすのも当たり前。それでもセリアは出来る限りの事はしたらしい。

 重税に耐えられなくなった家は子供を売ったりもし始める為、その子供たちのために孤児院を開いたり、そのほかにも生活が困難な者たちに支援をした。

 それでも全ての人は救えない。たった一人がどうしようとも何も出来ない。

 

 そこでセリアは一つの考えに至った。

 なぜこの国がここまでの強権を振りかざせるか、なぜ戦争で負けなしなのか。

 

 それは、初代との契約。勇者の力だ。

 自分の力が国を腐敗させた。自分の力が王たちに仮初の威光を与えてしまったのだ、と。

 そこでどうすればいいのか?そんなのはどんな馬鹿でも分かる通り、自分がいて間違った統治をし続けるなら、自分がいるべきではない。そう考えるのが道理だろう。


 自分たちが強いと勘違いをする国に、王族に、少しでも正しい事を教えるために、それがより良い明日へと繋がるから。それが初代との約束だから。


 「これが、フェルナンドの実状。そして、私が国を出た理由の一つです」

 

 こんな話を聞かされた以上、やっぱり許せることではない。

 今エルフの村を襲っているのは彼女の元の国の兵士たち。

 恐らくは彼女を探してやってきたとの事だ。

 

 勘違いで強くなった国。

 セリアが立てた功績を自分のものだと勘違いしては、さらに力を強める愚かな王族。

 人を形作るのは環境が大きいとは言うけれど、やはり、どこか一度でも欲に目が眩むと、人間はどこまでも愚かな行為に走る生き物らしい。

 前世では少し発達した政治などでそれが上手く隠れていたようだが、それでもこの世界ではそうはいかないらしい。

 そりゃあそうだ。今も貴族やらが実権を持っている時代だ。

 民主制ではなく君主制がこの世界の常識らしいし、これだと民主制なんて言葉もないのではないだろうか?


 「ユフェリス様。私が愚かでした。ここで全てを、責任を放棄して逃げたから、エルフの方々にこんな悲劇が。私は、やっぱり勇者にはふさわしくは無かった」


 自分のせいで、セリアは一体どれほどそんな気持ちに悩まされてきたのだろ?

 国でもきっと私の想像のつかないほどの苦悩を味わったのだろう。

 勇者だから、というそれだけの理由で一国の王以上の重責と期待を一身に受けて、彼女は今まで耐えてきた。

 

 それなのに、まだセリアにこんな顔をさせるのか?

 どれほどまでにフェルナンド王国とやらは恩知らずなのだろうか?

 鶴でも猫でも恩を返すってのに、人が人に数百年にもわたる恩を仇で返すのは、悲しすぎる。


 「私は、やっぱり、最後のけじめとして、彼らと戦い、それをこの剣に捧げる最後の血とします」

  

 どんな思いでそれを言葉にするのか。

 そんなの私には分からないし、分かった気にもなれない。

 私如きじゃまだ400年もの苦悩は考えることも出来ないから。

 それでも、やはりできる事はあるだろう。


 「ユフェリス、私がテティと一緒に戦場に出る。セリアも一緒に」


 今度はこの場の全員に念話を繋げる。


 「こ、この声は?」

 「ああ、リルートさん?話はずっと聞いてたんです。初めまして、名前はルアって言いますかね?一応は、そうですね……神樹やってます!」

 「し、しんじゅ……神樹様!?」

  

 私の言葉に驚きを隠せないリルート。

 とはいえ神樹宣言は今のところここにいる人にしかしていない。

 

 「この場にいるみんなに言っとくけど、私はエルフを見捨てるつもりは無い。人間に好き勝手されるのもたまったもんじゃない。それに、セリアが必死になって守ってきた国をどんどんと腐らせるそんな害虫は、私も容認できない」

 「……ルア」

 「セリア、私はセリアの気持ちは分からないし、分かるなんて口が裂けても言えない。それでもあなたがしてきたことは間違いじゃないし、おかしいのはそのフェルナンド?の連中だから」

 

 きっと兵士たちの大半は何もわかっていないのだろう。

 それでもそれ以外の者は分かっているはずだから。


 「私はセリアと一緒に戦う。私が精霊たちの上に立つ以上、この森を舐めてるヒトには痛い目を見て貰わないと」

 

 エルフを襲い、森を汚し、精霊を侮辱するその行為。

 いくら私が元人間で、人間の心が分かるとは言え、やっていい事と悪い事の常識まで変わったつもりは無い。

 その基準は昔も今もそこまで変わるもんじゃない。

 恩を仇で返すのは言うまでもないし、何も言わずに人を襲うのも頭がおかしいとしか言いようがない。

 森を汚す?論外だわ!


 まじ、なに森汚してくれちゃってんの!?お前らにオゾン層張り替えさせんぞ!?

 いや、まあ、森を汚してこの世界が温暖化するかは分からないけど、少なくとも森を汚すのは良くない。

 まじで火でもつけられてたら1万の軍勢全員燻製にしたるわ!!


 「という事なので、私とテティが戦うので、他の人たちはここでお留守番てことで!」

 「で、ですが!!」 

 「いや、ユフェリスが来たら過剰戦力だから!精霊級の戦力が二人いればいいでしょ?そこまでの地獄絵図を作り上げようとしてるわけじゃないからね?」


 いくら怒ってるからといって蹂躙しつくしてそれを嗤う趣味は無い。

 少し捻って痛い目を見てもらえれば結構。

 

 最も戦うのは私じゃなくテティとセリアなわけだけど

 

 「それじゃ、行きますか」

 「ありがとうルア!」

 「友達の為に動く。うん。悪くないね!」

 「みんななんの話してるの?」


 話がまとまった頃、一人マイペースに机にあった木の実や果物を全て平らげたテティがそう呟く。


 「これから、少し面白い悪戯をしに行くんだよ、テティ!」

 

 そう。調子に乗った人間に、少し怖い目を見せる悪戯に、ね!


これ書かないと評価は要らないと思われるらしいので。

面白い、続きが気になる、などなど色々思われた方はページ下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして貰えるとありがたいです。

皆さんのその評価が執筆意欲に繋がりますのでどうかよろしくお願いします!

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