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39 覚悟を決めました!

 今も目の前で土下座をするリルート。

 

 「どうか、どうか精霊様方のお力を、その慈悲をほんの少し私たちにお与えください。何卒、何卒私たちにご慈悲を!!」

 

 その場に頭を擦り付けるリルート。

 ユフェリスを含む精霊は、かつてのこの森の管理者であり、この世界の創造神である世界樹事エインさんの言いつけによってこの森から出る事、外界に直接何かしらの影響を与える事などを固く禁じられているのだそうだ。

 

 なぜそんな決まりを設けたか。

 これは推測の域を出ないが、それでも妥当な考えとして、精霊たちの強すぎる力の露見を案じたのだろう。

 もちろん世界はそこまで甘いもんでもないだろうし、ユフェリス以上の強者もいるそうなのでしゃしゃり出ると痛い目を見るかもしれない。


 それでも、それが人間などにとって強大すぎる事には変わらない。

 精霊たちが幸せで、自由であればそれでも良いのだろう。だが、そうはいかないのも現実だ。

 こんな決まりを作った以上エインさんとやらは恐らく人間にも詳しいのだろう。

 まあ、創造神であるから当たり前なんだろうけど。

 だからこそ、精霊たちが人間たちの私欲によって汚されないようエインさんは彼らの外界への接触を禁止したと考えられる。


 だとしても、やっぱりこうして助けを求めてきている相手を無下にするのはどうなのだろうか?

 力ある者は力なき者の為に、貴族の務め、ノブレスオブリージュの精神だったっけ?まあ、私は貴族でもなければなんでもない一般市民なんですけど。

 でも、そう言う事ではないだろうか?

 

 力が無い。どうしようもない。戦力が足りない。数が足りない。

 敵は多い、敵は強い、それでもこちらは何も出来ない。何も出来ずに逃げるしかない。逃げ切れるかも分からない。

 そんな相手を、助けを求めるエルフたちを、ただの昔の言いつけで、今はいない親の言葉に縛られて、容易に救えるはずのものを取りこぼす。

 少なくとも私はそれは嫌だ。なんてったって最悪の後味の悪さがあるだろうし、あの時助けてたら、なんて後悔を絶対することになる。絶対ね!


 別に私に何ができるのか?と聞かれても何も出来ないと答えるしかないだろう。

 でも、やっぱり、後悔しないって決めたんだから。

 

 そう。そうなんです。私、後悔だけはたとえ死んだとしてもしたくないんです! 

 この前だって死んですら後悔しない道を選んだんですもん!ここで中途半端に諦めてたらこの前のあれは死に損ってことになってしまう。いや、ならないんだけど。


 でも、やっぱりこうして土下座までされたんだ。

 助けられる。それも軽く赤子の手を捻るみたいにだ。

 それなのに助けないのは、やっぱり、ねぇ?


 「私は……助けたい」

 「それは、エルフを此処に受け入れる、と?まあ、避難だけならやぶさかではありませんが」

 「違う。人間たちを追い返す」

 

 確固たる意志を込めて、私はそう心で言い放つ。

 

 「それは、人間と戦う。そういう意味ですか?」

 「そう。それしかないでしょ?」

 「で、ですが、それはエイン様に!」

 「エインさんに駄目って言われてるから、ユフェリスは彼らを見捨てるの?」

 「いえ、ただ人間と戦うのは流石に」

 

 確かに、戦わない方が良いのかもしれない。

 平和的に、この森に立て来籠るのが得策なのかもしれない。

 でも、やっぱりそれじゃあなんか違う気がする。

 急に訳も分からず攻撃されて、村を壊されて、被害が出てるのに、それをこの森から眺めてるしか出来ないのは、それはとても歯がゆい事だと私は思う。


 「別に私だって戦いたいわけじゃない。戦わなくても良いならそうする」

 「で、であれば!」

 「それでも、やっぱりここはこっちの立場を示すべきじゃない?こんなところにまで人間がきて、我が物顔でエルフの村を壊していく。リルートさんはこんなにも必死になっているのに、それを人間たちは何食わぬ顔で踏みにじる」


 流石にこれはやり過ぎだ。やっていい事と悪い事がある。

 それに、彼らはここがどこだかわかっていない。精霊たちがいるのを知らないか、もしくは知っていて尚喧嘩を売る馬鹿なのだ。


 「あんな馬鹿な奴らにこの森も、森を守ってきたエルフたちも汚されるのは私は嫌だ!」

 「い、嫌だと言いましても……」

 「そんなに言いつけが大事?数万年も前の親の言う事をずっと守って、それでこれからもそうやっていくの?少なくとも私はそれは納得できない。私はこの森を出る。この森からいつか出て、自由に世界を見て回る」

 「い、言いつけは……」

 

 尚もしつこく言いつけに縋ろうとするユフェリス。

 

 「ユフェリス。あなたは何が嫌なの?なんでそこまで外を嫌がるの?」

 

 そこが問題なのだ。

 なぜユフェリスがこんなにも外を拒むのか、それが私には理解できない。

 だが、そこにも色々理由はあるらしい。


 「この誓約は、森だけではなく、他の色々な相手にも有効なのです。私たちがこの誓約を破棄しない場合、この森は誓約によって、神エイン様の名によって守護される。それが私が外を拒む理由です」

  

 誓約を破棄すればつまりは今までエインさんの名前と誓約によって手を出せなかった連中が、手を出してくるかもしれない。そう言う事だろう。


 「この森をより危険に晒すことになるかもしれません」

 

 精霊の森として、そして神の森として、今まで手を出してこなかった奴らがいろんなものを巡って手を出してくるかもしれない。


 「私が誓約を破棄すれば、その時点でエイン様の加護は効力を示さない。外界への大規模な認識阻害の結界は消えてしまうでしょう。安らかな時は終わり、問題が押し寄せることになる。私はそれがとても恐ろしい。それがとても怖いのです」


 森を危険に晒すこと。それは精霊たちを、家族を危険に晒すのと同じ。

 人間たちの悪意がこの森へ向いて来る。今までエインという名に対して何もしてこなかったものが、急に出てくるかもしれない。

 そうなったときに、これほど膨大な森を管理するのは如何に精霊王と言えど骨が折れるだろう。

 それこそ仕事に忙殺されることになる。

 責任も全てが彼にのしかかる。

 彼にはこの森全てを守る自信が無い。だから躊躇う。

 

 「やはり、私には……でき」


 出来ない。そうユフェリスが口を動かしていく。

 彼には出来ない。その自信が無い。一人でやる自信が。


 「ねえ、ユフェリス」

 

 そこで私はユフェリスたちの言葉を思い出した。

 私が呪いを払って、眠りから覚めた日。

 あの日の事を、思い出す。


 「ユフェリス。私はあなた達が思うような神樹様ではないと思う」

 「……?」 

 「みんなが思うような完璧には程遠い存在かもしれない」

 

 それは覚悟。いや、けじめだろうか?

 人の上になんて立つのは柄じゃないし、出来ればやりたくない。

 でも、それでも誰かが助けを求めてて、その手を取らなければいけない人がそれでも迷ってる。

 決められるのは今のところは彼だけ。それでもその重大過ぎる責任からは目を背けてしまう。

 それはそうだろう。何せ鎖国状態の国に対して「んじゃ、明日から国開いといてくださいわ」なんていうのと同じだからだ。

 いくらペリーさんでもそこまで横暴ではなかったはずだ。

 でも、私が今しようとしているのはそう言う事。

 

 少しずつではあるが、それでも外界にこの森の事を知らしめる必要があるとも思う。

 それで森が危険に晒されようとも、やらなければいけない。そんな風に思う。

 

 「でも、もうそろそろ、お母さんの言いつけを守って何も出来ないような時期は、卒業するべきじゃない?」

 

 マザコンなのにも限度がある。

 別にマザコンが悪いとは思わない。親の言う通り、親の喜ぶように、親の言いつけを守って、

 それは別に悪い事でもなんでもない。何もしないより全然いいだろう。

 それでも、そろそろ、少しくらい自分たちの足で歩くべきだ、と私は思う訳です。


 「勿論こう言った以上、あなた達の期待も、それなりには受け止めるし、やれっていうなら神樹様みたいに振舞うこともする。動けるようになれば率先して私が上に立つようにもする」

 「ルア、様?」

 「だから、そろそろ、親離れしてみない?」


 もうそろそろ、何か自分で考えるべきだ。

 親の名前に頼って生きていくのは流石に数万年も経ったなら、少しずつでもやめるべきだ。

 完全に変えろとは言わない。忘れろともいうつもりは無い。

 それでも、やはりこれからを作るのは私たちなのだから。

 

 「ユフェリスが不安だというのなら、仕方が無いので私が神樹様ポジに就きますわ!この前、私の配下になるって言ったでしょ?正直あの時は面倒だとも思った」


 それは本気だ。本当に面倒で、できる事なら誰かの上になんて立ちたくもない。

 

 「それでも、私は彼らを、エルフを助けたい。見捨てることは出来ない。人間たちにいいようにやられるのも我慢ならない……後悔だけは絶対にしたくない!」

 

 そんな私の言葉にユフェリスはいつしか口を出さなくなっている。


 「だから、あなた達が望むなら、分かった。なってやりますわ!その神樹様とやらに!」

 「……本当に、よろしいのですか?」

 「もういい!決めたことだから。多分、凄く面倒だと思う。それでも、女に二言は無い!その代わり、そんな数万年前の約束なんて、ここでは忘れてもらいます!まずはエルフの村の救出と……」

 

 そこで少し考える。

 正直、敵が1万とはいえ、ここはユフェリスたちが出る幕じゃない。

 なんなら精霊一人で事足りる。

 

 よっし、んじゃ、今回は私とテティの無双劇で観客を沸かせるとしましょうか。


 「なんかルア楽しそう?」 

 「もう色々吹っ切れて笑うしかないみたいな?」

 

 テティにそうそう笑うと私はユフェリスに最後に一言言い放つ。


 「この森を、私たちを舐めてるんだからさ、少しは痛い目見て貰わないとじゃない?舐められっぱなしは、私嫌いなんで!」

ついにルアが神樹様になることを決意!

ですが、それは肩書だけ。スキルが増えたり超パワーアップ、なんてことは起きません!


これ書かないと評価は要らないと思われるらしいので。

面白い、続きが気になる、などなど色々思われた方はページ下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして貰えるとありがたいです。

皆さんのその評価が執筆意欲に繋がりますのでどうかよろしくお願いします!

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