35 敬語ってむず痒い
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「あ、えっと、異世界人、がどうかした?」
緊張が走る。
異世界人、そんな一言で場が凍るような錯覚を覚える。
「本当に、異世界人、なのですか?」
「それは……」
やばい!!
これって、はいそうです!って答えたら首、じゃなくて幹が真っ二つにされるやつじゃない?
だって、この人腰に如何にも凄そうな剣持ってるもん!
「あ、え、いやー」
「ルアは異世界人だよね?それも転生者」
「あー!!」
テティさんがぽろっと言ってしまいました。はい。もう私の体は真っ二つに……
なってない?
「本当に異世界人なんですか!?」
「ま、まあ。ハハッ」
笑うしかない。そう。笑うしか。
笑ってればいい事起こるって私は信じてるよ!
「そうでしたか」
ん?なんか意外とあっさりしてないか?
もっとこう、「異世界人はこ○す!」みたいな感じかと思ってたんだけど?
なんだか珍しい物を見るような目で私を見る。
「異世界人が転生して、木になるなんて……こんなことがあるなんて」
木に転生。そしてそんなことがあるなんて、だって?
まるで異世界人は人間にしかならないみたいな言い方……
「もしかして普通は人以外に転生してりって」
「聞いたことが無いです。それに転生してきた異世界人もほとんどいませんし」
まじかー。私イレギュラーの中でさらに記録を打ち立てちゃったわけかー。
いや、まあ木に転生することなんて億分の一も無い可能性であることは疑いようがない訳だけど、だとしても人外転生も無ければ、転生だってほとんどない。
そんな中で木になるって、宝くじ当てるより難しくない?
「でも、随分とあなたは異世界人に詳しいけど、関係が?まさかあなたも異世界人!?」
あるかもしれない!
ここで同郷の人とかだったら奇跡じゃない?
あんな話やこんな話をしたり、私は万人向けの漫画も広く読んでたからそういう話も出来るわけだ。
まだ暗黒面に染まり切っていないような者とも会話が続くように訓練してきたその努力が、今!
「いえ、私はこの世界の人間です」
報われなかった。
そうですよね。そんな偶然がそうそうあるわけがない。
それでも異世界人の事について知れたのは結構な僥倖じゃないだろうか?
「でも、私の先生が異世界人なので、そういう話をよく聞いてたんです」
「先生!?」
おおー!!やっぱりこの人は異世界人との繋がりがあるらしい。
でも、待てよ、確かこの人100年以上生きてるって言ってたような、
「それ先生はもう生きてないんじゃ?」
「あ、先生は今も生きてます。私よりもずっと長生きですから。なんせ半霊ですから」
「半霊?」
霊って、精霊とかの霊だよね?
つまり半分が精霊みたいな感じ?目の前のこの人よりさらにハイブリッドな感じじゃん!?
はー!?同じ異世界人とは思えない待遇の差だな、おい!?
「なので、先生はもうずいぶん前から生きているんです。見た目は変わりませんけど」
へーそんな人もいるんだなー。
凄い有益な情報を貰ってしまった。
もし私がここから動けるようになったらその人の元へ行ってみるのもありかもしれない。
それから少し彼女が黙る。
なにかを考えているようで、でも決心がついたのか口を開く。すると彼女は衝撃の事実を口にする。
「私、『勇者』なんです」
「……ほへ?」
あまりにぶっ飛んだその言葉につい間の抜けた声を出してしまう。
賢者と勇者。確かに鉄板のコンビだろう。そのうえ精霊の森に加護なんて言ったら前世のとある騎士物語を思い出してしまう。
「小さな頃に先生に出会って、それから勇者になって……でも、もう終わりにしようと思うんです」
「終わり?」
果たして何を終わらせるというのだろうか?
「『勇者』は本来『魔王』と対となる存在なんです。ですが、私はこの手で、魔王や魔族だけでなく、多くの人間までをも手に掛けたんです」
「それって……」
「初めは私も私の信念のために戦いました。でも、もうそれも終わり。私はやっぱり、あの光景の間違いに気づいてしまったから。だから、この森で、」
彼女は確かに疲れたような、そんな表情を浮かべている。
それでも、その瞳には確かに信念が宿っているようで、
「この力を、加護を……返しに来たんです」
返しに来た?でも彼女は確か加護によって生きながらえてるんじゃ?
「その力を返したらあなたは死んじゃったりはしないの?」
「……?ああ、私の魔力の話ですか。確かに私は加護によって生きながらえています」
やっぱり。つまり彼女から加護を失くしたら彼女は死んでしまうことに……
「でも、加護は通常の魔力と違って、成長を止める効果があるんです。なので私は今は17歳くらいの頃から成長が止まってるんです」
「つまり……加護がなくなっても17歳の頃から普通の人間と同じ様に時間が流れるだけ、ってことで合ってる?」
「はい。流石はルア様ですね」
どうやら加護がなくなってもそのままぽっくり逝くことは無いらしい。
それにしても、
「えっと、さっきからその様っていうのはやめて欲しいんですが」
「え?ですが、これは神樹様への、」
「まず私神樹様じゃないし。関係ない。もはや会ったことすらない!完全なる別人!」
「で、ですが……」
「あとその敬語もやめてくれると助かるなー、なんて。ほら、私普通の異世界人だから?みんなが尊ぶ神樹様とは何一つ接点無いから」
木であるという事以外は全く何一つ接点のないその神樹様。
「……」
「私には敬語はいらないし、普通に接してくれればいいの!」
「……わ、分かった。じゃあ、ルア?」
「うんうん。そっちの方がしっくりくるんだよねー」
なんか敬語使われると凄くむず痒くなってくるというかね!
「そう言えば私あなたの名前まだ聞いてないんだけど」
「テティもそう言えば聞いてない」
今まで私たちの話はそっちのけで木の実や果物を一人だけ頬張っていたテティが私の上から飛んで来る。
ほんとこの子はマイペースだわー。
「そうだったわね。それじゃあ。私はセリア・フルーレ。セリアって呼んでくれればいいよ」
「んじゃ、よろしくねセリア!」
「ほほひふ、へひは!」訳:よろしく、セリア!
食べる手は止めることなく口を膨らませながらそう言うテティ。
いや、せめて呑込んでから話そうよ?
「ふふっ。相変わらず精霊さんは面白い子ばかりだね!」
うん。その意見には全面的に賛成だ。
マイペースなテティ、おっちょこちょいでいつも泣き顔のリニィ、なんだか少し暑苦しくておかしいユフェリス。レリスはあまり話したことないから分からないけど、今のところは真面目組にカテゴライズされてる。
「それじゃあ、もう少しだけお話ししようか!」
セリアそう笑顔を浮かべる。
それからしばらくして、ようやくセリアはユフェリスのところへ向かうのだった。
もちろん、私もついて行くのだが。
え?動けないって?ざんねーん!私はもう『感覚共有』でテティと感覚を共有できるんですー!
いざ、ユフェリスの元へ!
これ書かないと評価は要らないと思われるらしいので。
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