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30 やっと元通りですわ!いやー、長かった!

ようやく元通り!

 フッフッフ、フハ、フハハハッ!

 

 ……はぁー、まるで地獄だったわー。

 こりゃあ、大事な事を忘れてましたわ。


 つい最近、ようやく『植物操作』のスキルを取り戻した私。

 でも、考えて見ればこのスキル、結構ヤバめなスキルだったんだわー。


 というのも、これは言っちゃえば今の情報にもういくつか情報が増えていくもので、当然相応の負荷がかかるわけだ。


 で、それを失念していた私は、目につく木に片っ端からスキルを使っていったわけだ。しかも『感覚共有』のスキルも併用して。

 馬鹿だった。本当に自分で自分を疑いました。

 だって、これで私相当苦しんでたしね!

 

 「いったーい!!ああ、目が、目があー!!って、目は無いんだけどさー」

 

 今も無いはずの目がまるで抉られるような痛みを伴って私を襲う。

 これね、ほんとやらかしましたわ。

 つい調子に乗ってスキルの限界まで挑戦してしまったわけです。


 だって、ようやく取り戻したスキルだったわけだし、少しははしゃぎたい気分があったわけで……


 てわけで、今は頭を抱えてのたうちまわっている、ような状況だ。

 本当にのたうちまわってるわけでもないし、何ならその場から一歩も、それどころか一ミリも動けていない。

 当たり前だよね。だって、木だし。


 ……この木ネタ何回使ったんだろ?

 考えてみれば結構な回数使ってるよね?

 でも、案外これ便利なんですわ。

 出来ないこともこの一言で納得できるじゃん?


 私、木ですから!


 いやー、便利な言葉だね?

 我ながらいい言葉だと思うよ?何なら大概の事はこの言葉で切り抜けられる。

 会社で上司に仕事のミスを指摘されても、皆これからは「私、木ですので!」って言ってみよう!

 きっと翌日には会社側から辞表の提出を求められるね!


 いや、今はそんな事を話してる場合じゃない。

 この状況について考えないといけない。

 スキルは手に入れることが出来た。

 一応まだ『植物操作』のスキルのままだが、それでもこのスキルによる情報の負荷が重い事は自分が良く知っている。


 「ルア苦しそうだよ?」

 「うん。凄い苦しい。痛い。もう死んじゃうわ」


 眠る前までは『苦痛耐性』のおかげでそこまでの苦痛を味わうことが無く、そのおかげで耐性が無い事で得るはずの苦痛を忘れていた。

 

 こんなの忘れるとかマジでどうかしてたわー。

 いや、本当ならこんなにはきつくないのか?

 ああ、そっか、そうだよね。そうですよ、私が今調子に乗って目につく限りスキルを使ってたからこんなに苦しいんだわ。


 「テティ、私は、これからは調子に乗らないようにするよ」

 「う、うん?」

 

 そうだよね。テティには何言ってるか分からないよね。

 でも、調子に乗るのは良くない事だ。それを知れただけでも良しとしよう。

 

 そうそう、調子に乗ると言えば、もうあれから100年程度経ってるわけだけど、この森に人間たちは来なくなったのだろうか?


 「テティ、前みたいに人間たちがこの森に来たりはもうしてない?」


 それはあの日、森を傷付けようとしていた人間たち。

 彼らには相当の恐怖を与えて帰したはずだ。

 その彼らが森の事を周りに伝えれば森に手を出す者もいないはずだが、実際どうなのかは分からない。

 ほら、人間なんて欲深い生き物だからさ?何があるか分からないわけですよ。


 「ううん。人間たちはあれから多分来てないよ?」

 「そっか、なら良かった」


 相当怖い思いをさせたとはいえ、以前よりも遥かに豊かさを増した森。

 だからこそ、痺れを切らした人間たちが森の資源を狙ってやって来ることもあるかも、と考えていたがそんなこともなく、実に穏やかな100年が過ぎていたようだ。


 「それより、ルアはもう目的のスキルは手に入った?」

 「うーんと、目的の第一段階はクリアしたけど、第二段階に進む前にもう少し色々することが増えちゃったんだよね」


 それは『苦痛耐性』というスキルの獲得だ。

 これは『森林操作』を獲得するのにとても必要なものだ。

 『森林操作』を獲得するのに必要な条件はある程度分かっている。あのスキルは言ってしまえば『植物操作』と『感覚共有』を合わせて2を掛けたようなスキルだ。

 つまり、その二つのスキルを併用していればそう遠くないうちに手に入れることは出来る。


 そこで必要になるのが『苦痛耐性』のスキルと言う訳だ。

 耐性もないままこの二つのスキルを併用するとどうなるのか、それは私が良い例だ。


 「何事も備えが必要だって事だね」


 そう、備え無くして何事も務まる筈が無いのだ。

 急に上司から大量の仕事を渡されたところで、何も知らなければまず何も出来ない。

 前世じゃそれで「じゃあ、3日後には終わらせといて」なんて言われて、そりゃ泣く泣く休日出勤したものだ。

 チッ!奴の顔を思い出しただけでムカついてきたぜ!

 今でもあの日の恨みは忘れない。折角帰ってアニメを見てだらだらと過ごす計画を立てていたというのに……


 おっと、つい私の恨み節が発動してしまった。

 

 でも、もう『苦痛耐性』の獲得条件も薄々気づいてはいる。

 嫌だ。出来ればもっと穏便な、楽な方法が無いか、それを考えてしまう。


 まあ、世界が私に優しい事なんてほとんどないんだし、ここは諦めて大人しくスキル獲得に勤しもう。

 なに、スキルが同時に二つ手に入ると思えば……

 

 「そ、そう思えば……き、きっと頑張れる、よね?」

 

 うん。

 そうだ。

 頑張れる!


 そうして私はスキルの同時獲得を目指して……また1週間ほど、今度は苦痛に耐え続けるのだった。


 




 ――――――


 もうね、なんか1週間もこんな苦痛を味わっていると、これがスキルによって何も感じなくなってるのか、それとも感覚が麻痺しているのか分からなくなってくる。

 

 それでも、ついに、私はやり遂げる。

 

 《スキル『植物操作』がスキル『森林操作』へと進化しました》

 《スキル『苦痛耐性』を獲得しました》

 

 こうして私はあの日から約100年。

 そして目覚めてからおよそ1か月で、ようやく元の力を取り戻したのだった。

 

 ちなみに、魔素量は以前よりもとんでも無い事になっている。

 そして……


 フフッ!フハハハハッ!

 ついに、ついにこの日が来た!!

 長かった、実に長かった。

 目が覚めてからずっと待ち望んだ元通りの状態。

 まあ、これでスキルを元に戻したから何かあるわけでもない。戦闘なんてそうそう起きないし、まず戦闘になったら私では勝つことは出来ない。


 こんな直立不動の大きな木なんて的でしかない。

 そして、ここで戦いが起こるとしたらこんな場所にまで平気で入ってこれるような存在。

 そんな相手に植物操ることしか出来ない私がいようと何かが出来るわけでもない。

 私のスキルは全然これっぽっちも戦いじゃ役立たない。


 よくアニメとかで植物を動かしたりするキャラがいてなんか凄い強かったりする。

 某モンスターをポケットに入れてるゲームも、つるの鞭とかいう技があるけど、そして私もあんなのを想像していたけど、あれをしようとすると情報過多で私が死ぬことが分かった。


 そう、つまりはほとんど何も出来ないわけだ。

 もう少し何か演算スキル的なのが欲しいところだけど、でも獲得の仕方は分からない。それどころかそんなのがあるのかすら分からない。

 

 そう言う訳で、私はこのまましばらく元のスローライフに戻ろうと思う。

 もう苦痛に悩まされる生活は一旦終わり、これで私はまた、心おきなくぐうたらできるわけだ。


 いやー、スローライフ最高だわー!

 これねえ、木になる覚悟のある人にはお勧めですわ!


 色々文句は言ったけど案外悪くはない。

 

 今なら転生の選択肢にスライムや蜘蛛と並んで木が出てきても私は迷わず……いや、なんかまだスライムの方が良い気が……

 


 

これ書かないと評価は要らないと思われるらしいので。

面白い、続きが気になる、などなど色々思われた方はページ下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして貰えるとありがたいです。

皆さんのその評価が執筆意欲に繋がりますのでどうかよろしくお願いします!

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