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23 さらば、異世界生活!?

 テティは今も泣いている。

 リニィの横で、涙は未だ止まらない。

 

 そんなテティを横目に私は『念話』のスキルでユフェリスさんに話しかける。

 

 「ユフェリスさん」

 「な、なんでしょうか?」


 私の突然の念話に慌てるユフェリスさん。

 さっきまで一言も発していなかったんだ。急に話しかけて来るとは思ってもみないだろう。


 「一つだけ、この子たちも、そして……この森も再生して、呪いも除去する方法が一つだけあるんです」

 「そ、それは本当ですか!?」


 それはユフェリスさんがずっと昔から頭を悩ませた問題を全て解決できる。

 そんな夢のような救済だ。


 私も、最初は疑ってた。

 そんな都合のいいものあるわけないって。


 でもねー、こんなデメリットオブデメリットを提示されたらさ、

 まあ、そのくらいは出来るのかな?なんて思ってしまう。


 『星の慈悲』――所持スキル全てを消費することで使用可。呪い系統の効果を消滅、森における全ての損傷を再生。行使者の全魔力を使用する。


 全魔力。そう、全魔力だ。

 以前テティと話している時に聞いたものには、魔力の話もあった。


 そして、魔力がなくなればどうなるのか?

 という私の疑問には、テティは文字通り死が訪れると教えてくれた。


 でも、それでも、やっぱりここで引き下がるわけにはいかない。

 もう、後悔しないと決めた以上、私がこの二人と、森を再生させることは決定事項だ。


 もう、完全なるご都合展開。

 とはいえ失うものは大きい。

 

 だって、失うのは私の命なのだから。

 

 「私の全てを以て、呪い事消し去る。それくらいしか出来ませんし……」

 「全て……!!それは、どういう!?」

 「文字通り、何もかも」


 全魔力を今まで使ったことはないし、どうなるのかも分かったもんじゃない。

 恐らく転生は絶対に出来ないだろう、とは思う。

 奇跡が何度も起こるとは考えてない。


 「てわけで、ま、最後のご都合展開に期待させてもらいますわ」

 「ご、ご都合?何をおっしゃってるのですか?それに、幾らこの二人を救うためとはいえ、神樹様の命までは……」


 やっぱり、分かってしまうか。

 でも、もう決めたことだ。

 

 それに、まだ確実に死ぬと決まったわけじゃない。

 ご都合展開もそうだが、それ以上にこうして転生することもあるんだ。

 もしかしたら極小確率で生きてるかもしれない。


 「私の本体を起点に、この森全てを再生させます。代償は、私の命。やっすいもんです!」

 「そ、そんな事は認めるわけには……」

 「てなわけで、時間が無いので、そろそろ」


 もう時間が無い。

 今にもこの横たわる二人は死にかけているのだ。

 早く助けてあげないと、私は死に損になるわけだ。

 

 木や植物なら再生させることも可能らしいが、流石に精霊を無からの状態から蘇生させるなんて、そんな神様の奇跡は起こせない。

 てわけで急がなきゃならない。


 でも、その前に、


 「テティ」


 テティの中でテティに呼びかける。

 

 「ル、ア?」

 「……よっし」

 

 おっけ、もう覚悟決まりました!

 そんな顔されたら絶対助けたくなるのが人情でしょ?まあ、樹なんだけど。


 だからこそ、この後悔と一緒に、人間やめようと思います!

 そうだよ、逆に今まで人間やめてなかったのがおかしかったんだよ。

 後悔も、罪も、何もかも、人間であったことも、全部過去において来るとしよう。


 やだ、なんか主人公みたいでかっこよくない?

 

 「大丈夫。全部、私がどうにかするから」

 「どうにか?」

 「私が、絶対助けるから」 

 「助ける?」

 「だから、最後に……テティの笑った顔が私は見たい!」

 「……」


 あー、やっぱ駄目か。困惑してる。

 んじゃ、テティの笑顔も何もかも、それは生きてたらのご褒美ってことで。

 まあ、泣き止んだんだから良しとしよう。

 それにしても綺麗な涙だったなー。

 人間の涙って汚いやつばっかだったから、なんか凄く涙について考えちゃったよ。


 「じゃ、テティに、私からプレゼントです!」

 「ぷれぜんと?」

 「よく外を見ているように!!」

 

 私がそうテティに促した瞬間、ユフェリスさんが何かを察したのかテティに叫ぶ。

 

 「テティ!止めるんだ!!」

 「え?と、止める?」

 「神樹様を、ルア様を!!」

 

 そう言った時にはもう既に私とテティの繋がりは切れている。

 

 その瞬間に、私が『星の慈悲』を獲得したからだ。






 「あー、良い世界だった。皆可愛いしね。私もあんな風になれたのかな?美少女化も確約されてただろうなー」


 美少女転生。

 前世のオタクたちであれば、誰もが一度は夢見る美形転生。

 精霊って、そう言えば性別ってあったのかな?


 ま、あるか。

 みんな美形すぎて男でも女でも通る容姿をしてるだけだもんね。


 《スキル『星の慈悲』を発動しますか?》

 

 相変わらず喋んないんだね?

 AIくらい搭載してくれればいいのに。

 でも、別に困らないから良いけどさ。


 《スキル『星の慈悲』を発動します》

 《最終確認 スキル『森林操作』『魔力感知』『感覚共有』『苦痛耐性』『念話』を消費しますか?》

 

 ここでノーっていえばこのスキルの発動も全部キャンセルできるのか。

 つまり引き返すなら今ってわけだ。


 いや、イエスですが?


 《承諾を確認……スキル『森林操作』『魔力感知』『感覚共有』『苦痛耐性』『念話』を消費します》

 《スキル『星の慈悲』の発動条件を満たしました》

 《スキル『星の慈悲』の発動に必要な魔力を確認……完了しました》

 

 そうして全ての条件が揃い、スキルの発動が開始される。


 《これより、スキル『星の慈悲』を発動します》


 私はその瞬間、真っ暗な、初めて意識が目覚めた時のあの状態へと戻っていく。

 何も見えない。

 何も聞こえない。


 それでも、私に不安はない。


 森では今頃浄化が始まっているだろう。

 呪いの除去、霊脈に定着している呪いは、全てこの浄化で綺麗さっぱり消滅する。

 

 《呪いの効果の消失を確認しました》

 《スキルを再生に切り替えます》


 最後に、そんな文面が私の目の前?というか頭の中に現れて、森の再生が始まったことを知らせる。


 良かった、どうやら呪いは消えて再生が始まったらしい。

 ああ、やばい。もう意識が……


 もの凄い眠気が、そう言えば、前世ではどうやって死んだんだっけ?

 死んだ瞬間の事って覚えてないんだね?

 足元が崩れて、木に頭を殴られたとこまでしか覚えて無いもんなー。

 まあ、そのおかげで特に苦しむこともなく死ねたのかな?


 なーんだ。

 案外死に際は結構恵まれてんじゃん、私。

 

 まさか死ぬのなんて人生一度切りだと思ってたのに。

 まさかもう一回死ぬなんてなー。


 でも、最後はしっかり、後悔しないで死ねるんだからいいかな。

 前世は後悔だらけだったけど、今回はたった一度の選択を間違えないで済んだ。

 

 なら、こうして全てを投げ出した甲斐もあるってもんだ。

 せめて、もう一度くらいテティと話したかったっていうのは叶いそうにないね。

 

 テティはこの世界に木て初めて出会った精霊で、何よりも大切な、多分家族とおんなじものだった。

 前世じゃ、色々と蔑ろにしていた家族。

 お父さんが死んでから、

 親友が死んでから、

 私はお母さんとも碌に話さなかった。

 結果、お母さんも私が成人したころに病気で死んじゃって、

 その時に初めて家族について考えさせられた。


 一度失って初めて気づくのが人間の悪いところだ。

 でも、そのおかげで私はその家族がどれだけ大切なものだったのか知ってるから、

 

 今度は、助けられて良かったなー。

 

 よし、最後だ。

 意識は薄い。

 感覚もない。

 でも、多分、これが腕だと信じて!


 ……フッ!我が生涯に一片の悔いなし。


 決まったな。



 

 あ……さようなら私の第二の人生!ありがとう、そしてさらばだ、まだほとんど何も知らぬ異世界よ!


これ書かないと評価は要らないと思われるらしいので。

面白い、続きが気になる、などなど色々思われた方はページ下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして貰えるとありがたいです。

皆さんのその評価が執筆意欲に繋がりますのでどうかよろしくお願いします!

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