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21 ヘビーローテンション

 あと3日。それが今目の前で横たわる精霊たちの寿命。


 「そ、そんな。り、リニィは……ユフェリス様なら何とか出来るでしょ!?」

 「すまないが、テティ。私でも、エイン様の呪いにはどうすることも……」


 悲痛で顔を歪めるテティ。

 その様子からも、リニィという精霊がそれほどまでにテティにとって特別だったというのが分かる。


 「な、んで?リニィは悪い事してないのに!」

 「それでも、呪いは触れれば、私たちでもどうすることが出来ない」

 「そんな、酷い、だってエインは、エインの呪いで……て、テティ、は」


 声にならない声で何かを訴えるテティ。

 きっと、今のテティの中にはいろんな感情が渦巻いているだろう。


 リニィはなぜこんな目に遭ったのか?

 リニィを助けたい。

 そして、この呪いがとても憎いだろう。

 

 テティにとってはこの森に生きるみんなが家族だから、それを傷つけた呪いが、泥が許せない。

 でも、それと同時に憎み切ることも出来ない。

 憎悪で身を焦がすことも、復讐することも出来ない。


 それはテティにとってはエインという母のような存在を完全に否定することに繋がるから。

 過去の記憶も、何もかもを、全て。


 だからこそテティは今どうするのが正解なのか分からない。

 泣きたい、それでも泣けない。

 怒りたい、でも相手が分からない。


 行き場のないその感情はテティにとって初めての物であるから、余計にテティの心を追いつめていく。

 

 「て、てぃ?」

 「り、リニィ!?起きたの?もう大丈夫だよね?」

 「ごめんなさい、テティ。私、またドジしちゃって、レリス様まで巻き込んじゃった」

 

 テティは初めて感じるその感情にどうするべきなのか分からず、戸惑いが隠せない。

 それでも一つだけ感じているのは、恐らく悲しみだ。


 「ほんと、こんなとこも、ずっと……治らな、くて」

 「リニィはドジなんだから、もっと、もっと注意しないと……なのに」

 「テティ、なんか、悲しそうだ、よ?」

 「あ、れ?なに、これ……」

 

 テティの目から光る雫が零れ落ちる。

 その様子に、他の精霊たちも誰もが驚きの表情を見せる。


 「な、涙?だが、それは精霊の私たちには……」


 精霊は涙も流さないのだろうか?

 いや、そんな筈はない。

 これほどまでにテティは優しくて、こんなにもリニィを想っているのだから、そんな事はある筈ない。


 「な、みだ?でも、テティは、精霊で、だから……でも、あれ?止まらない。どうしよう、これ、止まらなくて」

 

 テティは困惑したまま、流れ出る涙を必死に手で止めようとする。


 「こ、これじゃあ前が、リニィが見えない。なんで、何なの、これ!?」

 

 まるで胸が締め付けられるようだ。

 テティのその悲しみが、まるで私にもど届いてきそうで、

 

 いいや、違う。私は、この光景に似たものを知っているんだ。

 だから、こんなにも、私も悲しくて……


 やがてそっと目を閉じる。

 会話の途中だったはずなのに、力が抜けたように、穏やかな表情を浮かべてリニィは残り少ないその命を、終わりへと近づける。


 「り、にぃ……」

 「まさか、あり得ない。だが、我々も……いや、これはテティだからなのか?」


 動かなくなったリニィに声をかけ続けるテティ。

 その横で何やらぶつぶつと呟くユフェリスさん。

 

 「お願い、ユフェリス様。リニィを、レリスも助けて……テティの魔力も、命も使っても、良いから、お願いだから……」

 「それは、出来ない。私では、二人を治すこと以前に、呪いをどうすることも出来ないんだ」


 悔しそうに歯噛みしながら横たわる二人を眺めるユフェリスさん。

 テティは今もリニィの横で俯いている。


 テティの悲痛な声が更に私の心を締め付ける。

 テティのこんな顔を見て、胸にまるで針を刺されるような痛みを覚える。

 初めて見たはずの精霊なのに、少ししか話してない精霊なのに、どうしても助けたいと思ってしまう。

 どうにかして、二人を救ってあげたいと、何も出来ないのにそんな事を考えてしまう。


 多分、それは……私の後悔からも来てるものなのだろう。

 私の後悔、前世の後悔。


 悔やんで悔やんで、それでも今もなお悔やみ続ける、その後悔が。

 

 ここで、諦めて、何もしないで、そのまま見殺しにしたとして、

 私はこの先、今まで通りに居られるだろうか?

 木から進化して、樹霊になって動けるようになって、それで普通にいられるだろうか?


 いいや、無理だ!!

 後悔だらけの人生で、せっかく転生したのに、結局何も変わらない。

 結局あの日のまま。

 私はまた後悔を増やしていくだけ。

 

 それでいいのか?

 いいや、良くない。

 転生してまで、なんで後悔なんてしなくちゃいけないんだ!?

 おかしい、第二の人生、じゃなくて樹生くらい後悔ゼロで生きてもいいじゃないか!


 今まで都合のいいスキルばっかり手に入ってたんだ、今こそそのご都合展開があってしかるべきだろう。


 さあ、来い!

 今こそご都合展開の出番でしょ!


 なんでも来い!

 ばっち来いだ!

 私舐めんなよ!

 後悔だらけ、恥の多い人生送ってきたからこそ、分かることだってあるってんだ!!


 私の命以外ならなんでもくれてやる!

 

 だから、都合のいいスキルの一つや二つよこせやこらぁー!!


 《要求を確認》

 《スキル『星の慈悲』獲得条件 現在所持スキルの全てを消費》

 《スキル『星の慈悲』を獲得しますか?》


 そこに出された条件は結構ヘビーな物でしたとさ。


 

これ書かないと評価は要らないと思われるらしいので。

面白い、続きが気になる、などなど色々思われた方はページ下の☆☆☆☆☆を★★★★★にして貰えるとありがたいです。

皆さんのその評価が執筆意欲に繋がりますのでどうかよろしくお願いします!

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