20 一難去って、今度は多難!?
「分かりました。んじゃ、ユフェリスさん、あの泥について聞かせてください」
それは至極もっともな質問だろう。
泥について、呪いについて知っておかなければ、この先数百年長くて数千年この森に居るわけなのだから。
「泥に、呪いについて、ですか……申し訳ありませんが、それは私たちにも分からないのです」
「分からない?」
帰ってきた言葉は無知を告白するもので、有益な情報どころか、情報自体がほとんどない事を示している。
「それじゃあ、なぜ呪いが世界樹――エインさんの呪いだと?」
「それは、かつてエイン様がこの世界を去られた際に発生したものだからです」
それって、つまりエインさんのせいかも分からないのに、エインさんのせいにしてるってことか?
それは駄目じゃね?
あ、でも、確かに前世でも悪い事があったら少なからず神様のせいにしてたり、罰が当たったとか騒いでたっけ。
宗教的なそう言ったことには神様のせいにしたがるのはよくあることなのだろう。
「エイン様がこの世を去られたころ、突如として表れたのがこの呪いでした。それはこの森の霊脈に定着し、日々魔素を変質させているのです。そして、私の力が及ばぬ呪い。となるとそれは私よりもさらに高位の存在によるものだと思われます」
「ユフェリスさんよりも高位の存在はこの世界にはエインさん以外には?」
「一応はいます。が、この森はエイン様の森。原初の神の名のもとに、この森への外界からの干渉は禁止されているのです。特に力の強い方はエイン様との誓約がありますから、外界から干渉は出来ません」
結構エインさんはこの森の事をよく考えていたらしい。
それにしても、このユフェリスさん以上の存在がこの世界にはいるという事が分かった。
世界は広いね!世界最強なんて目指すのはもう諦めとこう!
そんな事よりも、呪いについてだ。
この呪い、現段階では解呪も不可能らしい。
ユフェリスさんで無理なら誰にも無理なんじゃ?
私とユフェリスさんが話をしていると、テティがユフェリスに叫ぶ。
「ユフェリス様!!り、リニィが……レリスも!!」
「ま、待て、何が……わか、った……」
二人の表情に焦りが浮かんで来る。
なにかあったのだろうか?
というかリニィってこの前の精霊ちゃんだよね?
レリスって人はさっきテティが言ってた大精霊だよね?
「し、神樹様。申し訳ございませんが、私たちの仲間が、怪我を負ったといことで私はここで一度戻らせていただきます」
「は、はぁ。それは構いませんけど」
そこまで言って、私は何か胸に突っかかりを覚える。
なんだかここで私も行った方が良い。そんな気がしてくる。
「あ、あの」
「なんでしょうか?」
「め、迷惑でないなら私も一緒に行っても良いでしょうか?」
「神樹様が?」
驚いた顔を向けて来る。
それは驚くだろう。だって、私樹ですもん!
「いえ、ただ意識だけテティと共有してもらえれば私も向かえるので」
「それは本当ですか!?な、なんという事だ。まさか神樹様がこれほどまでに凄まじいお方だったとは。私たちは神樹様を拒むことなどいたしません!どうかご一緒ください!」
「それはありがとうございます。い、良いかな?テティ?」
「うん。ルアならいい」
そう言って了承の意を示してくれたので、私はテティと意識を共有する。
これで準備完了。
さあ、早く行こう。
なんだか早く行かなきゃいけない気がしてきたし。
「それでは向かいましょう。私たちの村へ」
――――――
「これが、精霊の住処」
そこは大きく、そして太い木が何本か並び、その中に精霊たちの部屋がある。
いわゆるツリーハウスのようなものが立ち並んでいる。
周りには精樹霊たちが忙しそうに飛び回っている。
中には恐らく精霊だと思われるものも含まれていた。
誰もが緊迫した表情を作りながら今もいろんなものを運んでいく。
「ここがテティ達の住処。精霊たちの村」
ツリーハウスに住む精霊。
なんともファンタジーだ。
私も精霊になれば部屋が貰えるのかな?
私は特にこれと言って何も考えないまま町を見渡している。
「ユフェリス様、テティ、こっち!!」
「アルナ、リニィは!?」
「お、落ち着いてテティ!リニィも、レリス様も一応は無事だから」
出てきた精霊?はかなり取り乱し気味なテティを宥める。
それにしてもテティがこんなに……まあ、数少ない仲間で、しかも家族のようなものだそうだし。
それが怪我をしたなんて聞いたら心配するのが当たり前だ。
テティはそれに優しい子だから、これは普通の反応だろう。
「アルナ、怪我をしている子たちの元へ」
「は、はい!こちらですユフェリス様!」
アルナと呼ばれている精霊は、テティとユフェリスを怪我人の元へ案内する。
大きな木の部屋に入る。そこはやはり、本で読んだようなツリーハウスそのもので、私の好奇心を掻き立てる。
しかし、そんな私の興奮も、次の光景で一気に冷め切ってしまう。
「り、リニィ!?」
そこにいるのは小さな精霊と、その横には人間の成人女性くらいの背丈の精霊が横たわっている。
二人とも目は閉じられていて、そして、青黒いまるで何かの染みのようなものが体中に出ている。
「なんで、リニィが……」
「そ、その、ね。リニィと、レリス様は呪いを、食い止めようとして……他の樹霊たちを、助けようとして……」
「それで、泥に触れてしまった。それでいいかな、アルナ?」
「は、はい」
どうやらこのリニィたちは、他の樹霊たちを守るために呪いを何とか食い止めようとしていたらしい。
精霊って本当に優しい子ばかりだ。
テティもそうだけど、自分の身を顧みずに助けるなんて、少なくとも前世の私ではできなかったと思う。
「少し待っていてくれ。私が容体を見るから。テティも、少し落ち着きなさい」
「……うん」
横たわる二人を何やら調べていくユフェリス。
そして、調べ終わったユフェリスは驚きの事実を告げるのだった。
「……あと、3日。恐らくそれが、この子たちに残された時間だよ」
これ書かないと評価は要らないと思われるらしいので。
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