02 これぞ植物状態!?
木になってしまった。
普通に考えればあり得ない事。
これぞ植物状態!木だけにね!
いや、笑えないわ!
それともう一つ、さっきから考えてみたが、もしかしたら私は本当に異世界転生をしてしまったのかもしれない。
最初は真っ暗で植物状態になってるのかと思っていたが、それも木に生まれ変わっていたのなら説明がつく。だって、木に目は無いし。
そして現実世界じゃあり得ないスキルや、頭の中に浮かんだあの文字からして、恐らくはここは地球ではないどこか別の世界なのだろう。
では、どうするか?木になってしまった。どうするか?
結論、どうしようもない。
まず、ここから動けない時点でどうにもならない。
高確率で異世界転生なのに、全く以て喜べない。
いや、まあ人間じゃないのはまだ良いんだよ?ほら、最近は人外転生ものって流行ってるしね?
でもさぁー、木は無いでしょ?動物じゃないんだよ?動けないんだよ?植物だよ?
何にも出来ない。あるのは『魔力感知』と『感覚共有』だけ。
いや、もしかしたら他にも何かあるのかもしれないけど、それでもこれは無いわ。
だってさ、動けないんだもん。どんなにキモい虫に転生したり、遺伝子操作でもされたのか?みたいな奇怪な生物に転生しても、動けるからいいよ?
でもさ、私木ですわー!
動けませんわー。
いや、そりゃあ前に木になりたいとは言ったよ?言ったけどさ?まさか異世界で木になるなんて思わないじゃん?向こうの世界で、しかも少しの間で良かったのにさ、なんでこんな心躍るであろう異世界に来てまで植物ライフを送らにゃならんのじゃい!
なにさ?スローライフでも送れってか?確かにこりゃあスローライフにぴったりだろう。でも、別にスローライフって人間でも出来るのよ?
なのになんでわざわざスローライフしか送れないような木にしちゃうわけ?私をこの世界に呼んだ神様とかがいるとしたら完全なる嫌がらせだよね?
もう何にも出来ないよ?
ここから動けない。出来るのは視点を変えて少しいろんなものを見るだけ。それも数日あれば飽きてしまうだろう。
なんで異世界来てまで自由を制限されてんのさ?おかしくね?
まじで、そのうち称号スローライフキング!とか獲得できちゃうよきっと。ノーライフキングみたいで少しカッコいいわ。
とにかく、どうにかして私はここから動きたいわけだ。
でも浮かんでくるはずのないアイデア。もしかしたら私はここで本当に一生生きていくことになるのかもしれない。
いや、まあね。異世界スローライフはさ、結構好きだったよ?可愛くてフワフワしてたりさ、人外物もあった。
でも、それでも一応皆人型とったりしてたよ?始めから動けない事なんてまずなかったよ?
もう、何もかもがイレギュラー過ぎて悩ましい。
このままスローライフを送っていくか?それともなにか他に動く方法を探そうか?
そういえば、私ってスキルあったよね?そこになんか都合のいいものあったりしないわけ?
ないですよね、そうですよね。すみません。
《現在保有スキル》
『植物操作』『魔力感知』『感覚共有』
頭の中にそんな文字が浮かんで来る。
『魔力感知』と『感覚共有』は使った通りだけど、『植物操作』ってなんだろうか?
『植物操作』――この周辺の植物を操作できる。
言ってしまえば、これで蔦や根、葉、枝を動かしたり、成長を促進したり、色々出来るらしい。
へー。特に使いどころ無くない?こんな何も出来ない状態で、一体どうしろと?
あー、もうなんか凄く詰んでる気がするんすけど?
いや、だってさ、動けないんだもん!動ければ一応どうにかなったかもしれないよ?でも、動けなければ何も出来ない。
『感覚共有』も範囲に限界があるから遠くは見えないし、本当にここでずっと突っ立ってるしか無い訳だ。
仕方ないから寝ようかな?まあ、それがいっか。何も出来ないしね。だって、私木だから。動けないから。
私はそこで取り敢えず諦めて眠ることにする。
まあ、お約束通りなら、いつかは人型になれるであろう。
あれ?でも、大体人外転生って、魔物とかになるじゃん?私って、魔物じゃ無い訳じゃん?
というか、何なら凄く神々しさすら感じるわけでさ?
まあ、もう良いか。いつか、何とかなるだろうし。それまで眠ることにします!
『植物操作』の光合成で栄養、つまり魔素をひたすら蓄えていく。
何日も何日も。私はそれからも特に何か考えることもなく、ただひたすらに日の光を浴びながらボーっと過ごしていく。
日が昇って、そして落ちていく。それを30まで数えた辺りから、面倒になってやめる。
もうね、いつの間にか魔素量が凄い事になってるんすわ。何だろ?これってもしかして私の転生の特殊能力みたいな?
ま、そんなはずないか。だって考えてもみれば、魔素なんて一度も使っていない。つまりは、私は初期状態にあったであろう魔素にプラスで、この何日経ったかも分からない中、ずっと魔素を溜め込んでたわけだ。
あーあ。せめて動いたりできれば、魔法の使い方とか調べるんだけどなぁー。
もう誰でも良いから私のところに来てくれー!!
心の中で、そうやって大きな声で叫びながら、また今日も日が沈んでいくのであった。
ステータス
種族‐聖木
名前‐なし
称号‐スローライフキング(笑)
能力‐『植物操作』『魔力感知』『感覚共有』
前世は一般会社員の31歳独身。アニメやラノベ好きな純潔の乙女!(乙女は自称です)
これ書かないと評価は要らないと思われるらしいので。
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