19 最近じゃ現地人の方が強いってあるあるだよね!
「お待たせいたしました。神樹様。遅ればせながら、私が対処させていただきます」
そう言って目の前に現れた、少し大きい。
それこそ人間と同じか、それより少し大きいか?
まあ、そのくらいの……精霊?が立っていて、
次の瞬間。
私の元へ流れ込もうとしていた泥はいつの間にか浄化されていた。
「え、すっご!!」
これは凄いわ。
なにが凄いって、私の周りの泥を一瞬で浄化してのけたのだ。
テティですら一点集中でしか浄化出来ていなかったのに、目の前の精霊(仮)はそれを手を払っただけでやってのけたのだ。
おかげで今も開いた口が塞がらない。
あ、心の口ね?
心はまだ少し人間だから!
「え、でも、え?」
私は食い止めることが精いっぱい。テティも少ししか浄化出来なかった泥を、魔法で広範囲を浄化していく目の前の精霊(仮)。
押し寄せていた泥は瞬く間に周辺から消えていく。
それでもやはり完全には消えず、そのまま絶えず呪いが泥を元へ戻していく。
「ここは呪いに汚されても尚、魔素が濃い。流石は神樹様の聖域。呪いが神樹様の残したものであるならば、それを払うも神樹様の力。少しばかり、お力をお貸し願います。どうかご容赦を」
私に振り返り、そのまま跪く。
やだ、凄い美形!!前世なら鼻血が止まらなかったろうに。
でも、私こんな凄そうな人に跪かれるのは慣れないからやめて欲しい。
「あ、あの。出来ればそんな畏まらずに」
「な、なんと!?神樹様は本当に会話が御出来に!?」
さっきから神樹様神樹様って、私を誰かと間違えてない?
多分神樹様って世界樹だったエインさんの事だよね?
私そんな大物じゃないんですわ。
「会話は出来ます。でも、私は神樹じゃ」
「お、おお!!」
え!?
なんか凄い泣いてるんですけど?
なんで?ねえ、テティ!!
「もう、精霊王なのに泣き過ぎ」
「すまないテティ。でも、私は、やはり……見ていてください、神樹様!!私がこの泥を今から食い止めて御覧に入れましょう!!」
お、おう。なんとなくやる気は凄いというのがよくわかる。
まあ、とにかく頑張れ!!
私を助けてくれ!!
精霊王さん?が泥に向かって手を翳す。
翳した手に大量の魔力、そして空気中の魔素が集まっていく。
さっきテティは魔素が無いと言っていたが、私から数メートル部分には今も大量の魔素があるらしい。
もしかしたら私から漏れてる説ね。
でも、この呪いをどうにかしてくれるのなら私はそれで構わない。
「うっそ!?」
翳した手から大量の光が迸った、と思ったら近づいてきていた泥がまたもや一瞬で消えていく。
とんだチート能力じゃねーか!!
転生者の私のスキルよりも遥かに凄まじい能力なんですけど?
あれ、多分攻撃とかにも使えるよね?魔法?スキル?どっち?
「あれは精霊王だけに仕える『霊王気』ていうスキルだよ」
「れい、おうき?……霊王気か。名前からしてチートじゃん」
「あの霊王気はテティたちの纏ってる霊気よりもさらに格上の霊気で、たとえこの呪いでもその霊気に阻まれるんだ」
なるほど、つまりは前世の大人気漫画の覇気、みたいなものか。
そんな覇気的なものを目の前の精霊王さんは恐らく手元から前方に拡散させたのだろう。
呪いすら弾く霊気。
そりゃあ強い訳だ。
「あとは、ここに……!!」
なんか精霊王さんが呟き始めた。
あれは……詠唱?
「始原の森、聖なる樹、楽園の創造主。それは、悠久を刻む星の意思。
我が願い、我が想い、大地の嘆きを聞き届け給え。原霊隔絶壁!!」
おお、なんか凄いカッコいい詠唱と共に大きな壁が!!
なんか光ってる、それに凄く綺麗だ。
壁に当たる泥は絶えず浄化され続け、そしてまた生み出され続ける。
近づけば浄化され、そしてまた触れていない部分から呪いは泥を生み出し続ける。
「これでもう一安心ですね」
精霊王さんはそう言って私の方に振り返る。
うん、一安心なの?
でも、あの壁がとんでもなく凄いものなのは分かる。
だって、あの泥が、テティですら太刀打ち出来なかった呪いが、この壁で完全に食い止められているのだから。
「この壁は?」
「この魔法は、エイン様が消滅するよりも前にエイン様から教えて貰ったものです。全ての邪を払い、我らを守る絶対障壁。たとえエイン様の呪いだとしても、この魔法もまたエイン様の力の一端。あの泥が呪いである限りこの障壁が崩れることはありません」
エインさんていろんなところで出て来るよね。
どんな人なのか一度会ってみたいわ。
「それよりも、神樹様は大事ないようで何よりです」
「は、はい。で、その神樹様って?」
「お話はテティから聞いておりました。ご挨拶が遅れて申し訳ございません」
「い、いえ。って、私に挨拶なんてしても……」
そんな事されたところで、私は別に神樹でもなければ、エインさんでもない。
元はただの会社員。毎日毎日仕事に明け暮れて何をしてるのかも分からない、そんな人間だった。
それをいきなり神樹様呼ばわりって、しかもご挨拶なんてされるなんて、私はそんな大層な人間じゃない。
「私は、そんな大層なものじゃないですよ」
「いえ、だとしても私たちからしてみれば、この場所に確かに命がある。それだけで特別な事なのです。この約数万年の間、どれほど木を植えようと、魔法を使おうとこの場所にだけは何も芽吹かなかった。でも、あなた様がここに誕生した。その事実がある時点であなた様は私たちにとって特別な存在なのです」
面と向かって言われるとなんか恥ずかしいな。
でも、数万年?そんなに長い間ここには何も芽吹かなかったって?
こんな私の周りには花とか色々あるのに?
信じられない。
それでも、恐らく嘘は言っていないのだろう。
それに、どうあっても私は特別らしい。
私が特別、というよりは、私がここに生まれたという事象そのものが特別らしいけど、
でも、それでもこうして喜んでもらえているなら私としても悪い気はしない。
でも、今はこうして話をしている場合ではないだろう。
この泥が、この先何百年もやって来るのなら、私としても対策の一つや二つは考えておきたい。
「精霊王さん、でいいのかな?」
「私の事ならユフェリスとお呼びください」
「分かりました。んじゃ、ユフェリスさん、あの泥について聞かせてください」
魔法の詠唱はこの先少し変えたりするかもしれません。
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これ書かないと評価は要らないと思われるらしいので。
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