17 無理ですわ、こりゃあ無理です!!
物騒な言葉が聞こえてきて実に3秒。
はい。凄い言葉が聞こえてきました。
呪い?
しかも世界樹の?
世界樹は昔いたこの世界の神様でしょ?
その神様の呪い?
いやいや、アカンて、それはアカンよ。
だって考えても見て欲しい。ほら、前世でもアニメとかで神様が怒ると大洪水やら大地震やら他にもいろいろ起きてたじゃん?
てことはだよ?
私にはどうしようも出来ないって事だよ?
このまま呪いに殺されて第二の人生すら終わらせるなんて、ど、どうすれば……。
いや、私樹だからどちらかというと樹生か?
って、そんな事はどっちでもいいんじゃい!
「ねえ、テティ。これってさ、結構な頻度で起きてるの?」
「えーっとね。大体100年くらい?」
100年周期でやって来る呪いて、どんな時期に転生してんの私!?
「ち、ちなみに。私にはなんだか黒いドロドロしたものが見えるんだけど?」
「うん。あれが呪いに汚染された魔素。触れたらテティでも死んじゃう」
テティでも触れたら死ぬって、それ動けない私詰んでない!?
いやいや、いくらなんでもねぇー?
ほら、100年周期にしてはこんだけ木が生い茂ってるんだから、きっと生き残れたり、
「この森には100年に一度呪いがやって来る。でも、それに生き残れるのはほんの少し、それこそ数十本くらい。そこから100年周期でまたやって来るから、だんだん生き残ってた木も減ってく」
「つまり、一度生き残っても、あとから何度もやって来るからそれに耐えないと進化以前に死んでしまうと」
あれだ、高校の授業でやった、遷移とかだっけか?
火山が噴火して、その溶岩で植物とかが一掃されて更地になっちゃうやつ。
一つ違うのは、この世界の木は稀に生き残って、そこから進化していくくらい。
つまり、この呪いは前世の溶岩。そして私は……
「フッ……燃え行く定めか」
なーんて言うとでも思ったか!?
せっかく手に入れた新たな人生ならぬ樹生。
ここで踏ん張らずして、どうするんだ!!
私は諦めない!
呪いなんかに負けない!
頑張れ私!フレフレ私!
「ねえ、テティはあの泥何とか出来ないの?ほら、魔法とかで」
諦めない、負けない。とか言ってたくせに他力本願を貫く私。
でもさ、私にはどうにも出来ないんだもん。
「テティの魔法じゃほんの少ししか浄化出来ない。それに、そんなことしても、あの呪いは溢れ出てきた分は一気に浄化しないとまたもとに戻っちゃうから」
なるほど。つまりはアレだ。よくゲームである、一気に倒さないと分裂して増えていく敵みたいな。
その場で全てを浄化しきらなければあの呪いはすぐに元の姿に戻ってこの森のあらゆるものを押し流していく。
こっわ、テティでも何も出来ないって、もうそれ誰にも何も出来なくない?
大精霊でも恐らくは完全なる浄化は無理じゃない?
「ちなみに、いつもはどうやって呪いに対処を?」
「いつもは精霊王様の力で呪いを防いで、呪いが静まるのを待つ。えっと、半月?経てば収まるって精霊王様が言ってた」
半月?
この地獄に半月も身を置けと?
いやいや、無理です。多分あの泥に飲み込まれたら私死ぬ気がする。
精霊王様でも防ぐんでしょ?浄化しないんでしょ?つまり出来ない、と。
怖すぎだろ!?
なんちゅう呪いを残してくれとんじゃい!神様なら普通森を守る何かを残さない?
「わ、私は生き残れるかな?」
「多分ルアなら心配いらないと思うよ?だってルアの魔素量は物凄いから」
魔素が多ければ多い程、この特殊な樹の樹皮は相当に硬くなるのだろう。
でもさ、この泥物理攻撃より特殊攻撃って感じがするんだわ。
ほら、あの某モンスターを戦わせるゲームでもさ、特殊相手にリフレクター使っても意味ないじゃん?それと同じじゃん!
つまり私の防御はあの泥に聞かない可能性大なわけだ。
完全に詰みだ。
今もじわじわと迫ってきてるし。
到着まできっとあと1日くらい?
そしたら私は泥に呑まれてバッドエンド。
新たな命は早々にその芽を散らす。
なんて悲惨なの!?
私、まだここから一歩だって動いてないのに!
この世界の事なんにも知らないのよ?
……
ねえ、これ何か対処法は無いんですか?
なんかこの前までよく出てきた文字あったじゃん。
あのやたらうるさくてやかましい文字。
音声でもつけろよって、何度も心の中で突っ込んだあの文字。
ないんですか?
よりによって今更無くなるん?この大事な時に?
もっとこういうのって凄い解決策示してくれたりするんじゃないの?
今も私の視界(『感覚共有』の)では木々が泥に呑まれてその姿を消していっている。
泥に当たった瞬間、まるであの硬さが嘘の様に一瞬で脆く崩れ去っていく。
うん
……
ムリ!!
無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!
無理!!
いや、見た?
今のは無いでしょ?
あの硬い木がだよ?
人間でも切り倒すのにめっちゃ苦労して、それでも尚切り倒せてなかったあの木が、だよ?
一瞬でぼろっと、灰になって崩れるんすわー。
無理でしょ?
諦めない?
頑張る?
そんな夢物語はここで終わりさ。フッ……
やっぱり、現実はどこまでも厳しい。
私はそんな事を今更ながら痛感する。
この世界なら、あるいわ、前世ではできなかったことも何もかもを出来るようになるんじゃないか、と。
本気で思ってました。
魔法も、精霊もいるこの世界でなら、不可能なんて無いと思っていました。
浅はかだわー。
アレだね、夢なんて見るだけ損だ。
てことで、私は残り少ない余生を楽しむことにしよう。
「ルア?」
「私はもう諦めるよ、テティ。私じゃあの泥には立ち向かえない。おとなしく剪定されることにするよ」
もはや投げやり。
でも、仕方が無い。私ではどう足掻いても立ち向かえないのだ。
なら、ここで大人しくしていた方が良い。
「そっか。なら、テティは最後までここにいることにするよ」
テティはそう言って私の枝の上に座る。
その顔は少し寂しそうだが、それでもテティからしてみればこれは当たり前の事。
きっと私がいなくなっても他の精霊たちと仲良くしていくのだろう。
「うん。最後までありがとうね。テティ」
私は最後の時を待ちながら、のんびりと、まだ綺麗な目の前の森を眺めている。
この光景を、目に焼き付けるために。
この景色を、出来れば忘れたくは無いから。
これ書かないと評価は要らないと思われるらしいので。
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