13 新必殺技、そして見える進化の兆し!?
書き直しました。
見直すと、結構酷い部分があるものですね。
私は今いる場所から入り口付近までの約半径一キロ程度の木々を操作する。
このスキルは本来は一つの植物を操作することを想定していたスキルだったのだろう。思った以上に情報が多く、私の頭は今にも壊れてしまいそうだ。
すげぇ、ガンガン痛い!!頭がぁー割れそうだけど、頑張れ私!!
そうして、操作した植物たちを魔力を使って伸ばしていく。根を更に伸ばし、人間たちを取り囲む。
「じわじわとなぶり殺しにしてやる?」
テティがそう言葉を発した瞬間、人間たちが悲鳴を上げる。
そりゃあそうだ。突然周りから凄い大きな根やら何やらが出てきたと思ったら、止めのテティの言葉だ。発狂して、今も泣き叫びながら頭を地面に擦りつける人間までいる。
いやー、前世の某戦闘漫画の悪役帝王の言葉はこの世界でも通じるらしい。
ほら、あの青年なんてDOGEZAしてるんだよ?日本人かな?絶対違うけど。
これは凄い。テティの言葉一つでここまで叫び狂うなんて。一番やる気があって、最初にテティに斬りかかろうとした青年なんて、もう額が割れて血だらけになってるのに今も額を地面に叩き付けている。正直森が汚れるのでやめて欲しいが。
そんな君の土下座見ても面白くないんだわ。
君たちに恨みはないが、森を汚したこと、そしてテティを泣かしたこと、後悔しながら迷い狂え!!
『狂迷の森』!!
なんかかっこ良さげな必殺技みたいなのが出来たから名前を付けてみた。
新技、というか私にとっての最初の技。
辺りの木々や根は、その形を変えて、迷路のように入り組んでいく。人間たちは分断され、それぞれに道が用意される。
行先は森の外。だが、幻覚作用のある木もあるらしいので、彼らでは出口にもたどり着けないかもしれない。そんな最悪の新技。
その迷路に囚われた人間たちは最初こそ悲鳴を上げていたものの、すぐにその悲鳴も消える。
騒ごうが、何をしようがこの迷路から出られないというその絶望的な状況が、彼らの希望を奪っていく。
いくら切り付けようとも傷すら付かず、逆に自分の武器が折れる。
その様を見てさらに瞳から光が失われていく。もし今何かに襲われても攻撃手段が無いのであればどうしようもない。
そこまで非道な真似はしないが、やっぱり少しは反省してもらいたい。
最初の方は、テティ達には悪いけどそのまま何もしないで帰らせてもいいと思っていた。彼らだって恐らくは雇われ人だ。責任は彼らではなくその彼らを雇った者たちにあるだろう。
でも、テティを傷つけようとしたのはいくら私でも見過ごすことは出来ない。
結構長い時間をテティと過ごしてきたからこそ、テティは今では一番大切な友人?というか子供?みたいな感じだ。
そんなテティに未遂とはいえ剣を向け、斬りかかろうとしたんだ。少しくらい怖い目を見てもらう必要がある。
そして、人間たちを迷路に閉じ込める事およそ一日経った頃。あまりのストレスで頭がおかしくなったのか、ついに発狂しながら走りまわる者まで出てきた。
それを空から俯瞰するテティは面白そうにクスクス笑っている。
そんでもって、テティの様にその騒いでいる人間を見ては、私まで笑いが込上げて来る。
「ふふふっ!ルア、人間て面白いね。楽しい。あの人間の叫び方、凄く面白いよ」
「うん、ぷぷっ!ごめんテティ。もう私……あははははは!!」
あまりにも情けない声を上げながら何かが壊れたように走り回るその青年を見て、私は昨日とは何もかもが変わり果てた様子を爆笑する。
昨日テティにイキリながら斬りかかっていたのが嘘のようだ。
だが、彼らもそろそろ限界だろう。もう森から出してあげるとしよう。
私はスキルを使って、最後に全員に出口を示してあげる。
なんて優しいんだろう?もうね、ほんと崇めて欲しいくらいだ。テティだけだったら彼らはとっくに森の養分に変わっていただろう。
あ、もしくはテティに森の外に捨てられてたかもしれない。うん、きっとそうだ。
て、考えると私って本当に女神じゃね?
おい人間!私を崇めよ!称えよ!君たちを救った、このルア様を!
さあ、もう帰り給え。これに懲りたら二度とここには来ないように。今度は本当にテティに殺されてしまうからね?
さっきから思ってたけど、多分、テティは人間を殺すことにはあまり抵抗が無いのだろう。
というよりかは、この森の命以外はどうでもいいのだろう。
まあ、精霊だし、それでいいんだろうけどね?
でも、なんだろうな。テティがそんな無情な殺人精霊になるのは、なんだか嫌だな。
「テティはさ、人を殺したりするの、どう思う?」
「人間を、殺す?えーっと、特に何も思わない?何もしてこないならテティも何もしないし、今回みたいなのは、殺したりもするかも」
「それで、何か嫌な気持ちには?」
「うーん?この森の命が消えるのはテティ嫌だけど、人間は別にどうでもいい?」
やっぱりだ。
テティは精霊。そこのところは非常に淡白なのだ。
とはいえ、そう言うのは案外他の生物も変わらないのかもしれない。
そうだ。人間だって、猿が殺されても特に何も思わないだろう。ペットの犬が死んだ、とかなら悲しむだろうが、特に関係の無いものが死のうと何も思わない。
何なら、会社であまり接点のない人が死んでも何も思わないくらいには、人間も精霊もあまり変わらず淡白なのだ。
私がそうだったからきっとそうだ。
え?そうだよね?営業部の山田さんとか言う人が死んでも、私なんとも思わなかったよ?部署違ったし。
それはやっぱり変える必要はないし、今更変えようとも思わない。
テティの気持ちはよく分かったし、やっぱりそれで良いと思った。
考えていたような快楽殺人鬼になる兆しも見えないし、人間から何もしなければテティも何もしないだろう。殺して喜びを感じることもないだろう。
森の入り口、そこに出る事の出来た人間たちはお互いのその酷い顔を見合っては、さらにさっきまでの恐怖を思い出す。
彼らはもう、ここには来ることはないだろう。
あれだけの恐怖を味わったのだ。
自分たちを容易に殺し得るほどの精霊に、まるで手のひらの上で転がされるように。
生殺与奪は完全にテティ(ルア)の手の中。
殺そうと思えばすぐにでも殺せるだろう自分たちを生かして面白がる精霊。
彼らの目に光は無い。誰も欠けず、全員がまた揃う。喜ばしい事の筈なのに、彼らは喜び合う事すら出来なかった。
殺されるわけでもなく。何なら迷路に閉じ込められた後は無干渉。
文字通り何もしてこない。それ故さらに恐怖心は募っていく。
あんな地獄を味わった。しかもなんだか変な夢まで見せられていたのだ。きっと幻覚作用のある木のせいだろう。
きっと彼らの脳裏には永遠にあの恐怖がこびりついて離れない。
この日、ギルドに帰った冒険者一行は、そのあまりの変貌ぶりから色々な噂が広がった。
そして、最も有益な情報として広まったのは、
未開の森は悪魔の魔窟だという事だ。
そしてギルドや、その他各国も調査に乗り出すかを考えている。
そこは今までどの国も見つけてこなかったとして、どこの国の領土にも属さない。
故に、各国が牽制をしあいながら、出方を窺う。抜け駆けを許さず、あくまで公平を窺いながらどう出し抜くかを腹の内で考えているが、それをルア達はまだ、知る由も無い。
――――――
人間たちが去ってから、しばらくして、私は自分の本体に戻るためにスキルを解除する。
そこでテティとの繋がりは消え、自分の本体に戻るのだった。
が、そこで私の頭に、多くの情報と共に文字が浮かんで来る。
《規定条件の達成を確認。種族:聖木の進化が可能です》
私に進化可能だと告げるその文字。
もうすぐでテティが帰ってきそうだが、ここで断ってこの先一生進化出来なかったりすると怖いからすぐにでもしてしまおう。
進化かー。
ここまで魔素を取り込んでかなりの時間が経っていたが、ようやくこうして最初の進化が出来るそうだ。
楽しみだなー。一体どんな風に進化するんだろうか?
もしかして私だけ人型に進化できたりして。
そんな妄想を膨らませながら、そこで私の意識は消失した。
《了承を確認。種族:聖木を、種族:聖樹に進化します》
そして、沈みかけた意識の中で、何やら声が聞こえてきて……
結局それが何かは分からないまま、私はこうして眠りにつくのだった。
進化はまた明日投稿になります。
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