表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
うちのメイドは1歩前をゆく  作者: おしぼり
2/28

「一人暮らしがしたいんです」

「俺、一人暮らしがしたいんだ」


 数ヶ月前の朝食時。

 食卓を囲む中、俺はそう両親へと告げた。


 俺の言葉に、父と母は驚き、食事の手を止めた。

 母は、飲んでいたスープをこぼしたみたいで、側にいたメイドが慌てて拭きに来る。


「どういうことだ、リョウマ。一人暮らしをしたいというのは」


 父のその言葉に、母も同じ思いなのだろう、不安そうな目でこちらを見てくる。

 そんな思いに、俺も真剣に答えなければいけないと、震える気持ちを抑え、必死に訴えかける。

 

「俺、このままではダメだと思うんだ。この家じゃ、ダメになると思う」

「それはどういうことだ? この家の何が不満なんだ」

「そうよ、リョウマちゃん。何かいけないのかお母さんにわかるように言って」

「いや、この家では本当によくしてくれていると思っているよ。でも、逆になんでもしてもらえすぎだと思うんだ。身の回りの世話はすべて、執事やメイドがやってくれる。欲しいものもなんでも与えてもらえる。こんな環境じゃ、俺はダメになってしまう気がするんだ」

「そうか」


 父はナイフとフォークを置くと、少し考え、口を開いた。


「前にも話をしたが、お前は私たちの本当の子ではない。だが、私たちはお前を本当の子のように愛し、育ててきたつもりだ」

「うん。わかってる」


 そう、確かに俺、鳳両真は、この人たちの本当の息子ではない。

 ここ、鳳家は、日本有数の資産家で、父は鳳グループという巨大企業がいくつも連なるグループのトップなのだ。

 そんな父に子供が出来なかった為、俺は親戚筋から養子として引き取られた。

 しかし、その後すぐに弟が生まれる。

 弟の和馬が生まれたことで、俺はもう用済みだと思っていたのだが、どうやら父は俺のことをかなり気に入っているみたいで、今だに俺を自分の後継に置きたいと思っているようだ。

 俺自身は、和馬が継ぐべきだと思うが、実際、まだ起きてこないくらいズボラな性格の和真に鳳グループの経営が出来るのか、確かに俺も不安ではあるし、自分が継ぐことに抵抗もない。

 でも一度、外の世界を知りたい。そんな思いも俺にはあった。


「カズマのこと、遠慮しているわけでは無いのだな?」

「それはないよ」

「そうか。お前には、本当に、この鳳グループを継いで貰いたいと思っていた。そんな思いが、この広い家の中でも、お前を窮屈にしてしまっていたのかもしれないな」

「あなた、、、」

「わかった。考えておく。とはいえお前もまだ、来年から高校生だ。高校生の息子を一人暮らしさせる親もそうはいないだろう。あまり期待はするなよ」

「わかりました、お父様。よろしくお願いします」


 俺はそう言って、頭を下げた。父に頭を下げたのは、これが初めてだったかもしれない。

 そして先日、その許可がやっと下りた。

 一人暮らしの条件は、父が用意した家に住むこと。父が用意した高校に通うこと。そして将来は鳳グループを継ぐこと。

 俺はそれを呑み、ついに念願の一人暮らしが決定した。

 

 そのはずだったのだが、、、


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ