とある酒場にて
学園と隣接した都市の中にある1つのバーで男は1人の女性を待っていた。
この数ヶ月はその女性のせいで研究という男の平穏な日常が壊されていたわけだがその事を悪くは思っていない。むしろ、どこか忘れていたような感覚を思い出させるかのようなそんな感覚を男は覚えていることに不意に顔が綻ぶ。
「なーに、ニヤニヤしてんだ気持ち悪いぞ」
燃え盛る火炎の如くそれでいて深紅の宝石を彷彿とさせるその女性はその整った顔をクシャりと屈託のない少女のような笑顔で片手を軽くあげ、よっ!っとこちらに向かってくる。
「馬子にも衣装とはよく言ったものですね」
「そりゃどうも」
いつもの軍服ではなく少し丈の長い深みのあるグリーンのブラウスにクリーム色のパンツを履いている彼女からは普段は感じられない色気が溢れていた。
彼女は並んでカウンター席に腰掛けると彼と同じものと言ってジンベースだと思われるロングカクテルを注文する。
「で、どんな感じだい?」
「期待して貰ってかまわないですよ」
「ほおぅ、閃光様がそこまで言うんだったらかなり評価してるみたいだね」
「あなたから言われると嫌味にしか聞こえないんですけど…それにあんな脅迫めいた手紙寄越しといて…そりゃぁそれなりには仕上げさせますよ。」
そんな男のどこか嬉しそうな嘆きに彼女も悪い悪いと反す。
「それに、基本属性とは別の珍しい雷属性ってなればお前が適任だと思ってな」
「まぁ、この学園じゃ僕くらいですからね。でもまさか色つきだとは思いませんでしたけど」
「でそっちに関しては順調なのか?」
「いえ、まだ、なんの片鱗も現れてないですね……それでも彼は強いですよ」
落ち着いた雰囲気の店内にグラスの氷が溶けるカランっという音が響き渡る。
それは、明日から始まる嵐の前の静けさのような