女医は男の浪漫
倒れた仁を放って置けるわけ無く取り敢えず医務室まで連れていく事にした。
「とんだとばっちりだな」
周囲には聞こえないであろう大きさで俺は、愚痴を漏らす。流石に180を超える大男を背負っているのだなかなかの重労働なのだ。
だが、目前に医務室と書かれた部屋を見つけ気持ちもいくらか楽になった時に気絶してたはずの仁が背中でもぞもぞとしだす。
「うへへ、先生こんな場所で、うへへ」
「なっ、、」
仁が寝言を言ったかと思うとその両手が俺の胸をまさぐり始めたのだ。咄嗟の出来事でそのまま背負っていた仁に俺は見事な背負い投げを決めていた。
「あっ、、」
医務室の扉にすごい勢いでぶつけられた仁は断末魔のような声を上げながら、意識が戻ったらしいが朦朧とした様子でへたりこんでいる。
バンッ と勢いよく医務室の扉が開かれ何事だと言わんばかりの形相の医務室の先生であろうおじさんが出てきた。それと同時に扉にもたれていた仁が床に激しく頭を打っていた、、、
意識は戻ったようだが立て続けに起きた災難でボロボロの仁はそのまま医務室で診療を受けている。
背負い投げの件で悪い気はするのだがあれは事故のようなものだ。元はと言えば寝ぼけて俺の胸をまさぐったあいつが悪いのだむしろここまで運んであげたのだから、、
自分に変な言い訳を心の中でしているうちに仁が診療を終えて昼食をとることにした。
授業の疲れとその後の一連の出来事で忘れていたのが嘘のように急な空腹に襲われる。学食の昼食はなかなかのバリエーションに驚かされた。
「てか!おっさんはないだろ!!」
「おい、食べなから話すなよ…」
口いっぱいに詰め込んだ状態で訴えるので見苦しい…仁の言っているおっさんとは医務室の先生の事だろう。まぁ、言わんとしていることは分からんでもないのだが。どうも仁は医務室の先生は美人なお姉さんを期待してたらしくその落ち込みはもはや怒りに変わっていた。
そして、医務室のお姉さんの理想を語り出したので適当に相槌を打ちながら唐揚げカレーを食べたのだった。
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この学園は授業は通常午前中だけになっており午後は生徒の自由な時間に充てられているのだが、それぞれの能力の育成に充てる生徒が大半だろう。
デュアルの能力も千差万別なので個人で自分に合った方法で能力の育成に励むのだ。
しかし、個人での修練にも限界はあるので同系統の友達と協力したり先輩や先生に指導を仰ぐのがセオリーとなっているようだった。
仁は土系統の先生にコツを聞いてくると言っていたのでそこで別れていた。俺はというとまだ、静電気程度しか操れないので自室で少しずつ練習を始める。
数週間が経つ頃には多くの生徒が自分の能力を理解して少しは使いこなせるようになっていた。驚いたのは仁が体中に岩を纏った状態で先輩と組手をしていたのだ。
俺も自主練だけに限界を感じ始めていたので指導をしてもらう人を探すことにした。
「で、私に相談をしてきたと?」
立花先生しか、交流が無い俺は先生にしか頼る宛がなかったのでとりあえず相談をしてみたところ適任がいるぞ!とその人に指導を仰いで貰えとの事だった。
俺は、立花先生に言われた科学実験室へと向かうのだった。