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清水春香の独白

作者: とりのかわ


「私は佐山君が好きなの。協力してくれないかな。」


 この高校で私はそれなりの発言力があると思う。そんな私が、あまり発言力が大きくない少女である、山田渚沙に初めて話しかけた言葉がこれだった。


 私の名前は清水春香。高校2年生になったばかりのJKである。自分で言うのもなんだが顔が整っていると思う。美少女と言っても過言ではない。立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花。私はこれをまさしく表現できる姿形をしていると思う。幼いころからの周りの賛美と鏡に映る事実。私は美少女だった。

 この顔のせいで嫌なこととか損なことはたくさんあったけれど、得することのほうが多かった。学校にいれば黙っていても人が寄ってくるし、微笑んでおけば面倒だなと思ったことは誰かがやっておいてくれる。それは、男子でも女子でも。

 もちろん私の美貌と人気は日々の努力によって作られている。毎日のスキンケアと毎朝のウォーキング。そして何よりぼろを出さないために学校ではほとんど喋らない。とにかく微笑む。本当はお喋りが大好きだし、もっと趣味についてボロボロこぼして生きていたい。しかし、小学生の時に学んだ。私は人前で喋ってはいけないと。

 小学生の時にモンスターをボールでゲットするゲームが流行った。私は、そのゲームにとてつもなくはまった。それはそれは、はまった。四六時中やっていたし何なら色違いのモンスターも持っていた。だから、ついその話をしている子たちの会話に混ざろうとしてしまった。つい話過ぎてしまい、引かれた。それはもう盛大に引かれた。正直悲しかった。元々ガラスだった私のハートはその時に粉々に砕け散ってしまった。幸いその時の小学校はそのあとすぐに転校することになり、新たな学校では何もしゃべらず微笑むだけにしようと心に決めてから今日にいたるわけだ。

 黙っていれば美少女が黙っていたらそれはもうモテるしちやほやされるし周りの人が美少女を求めてくる。その期待に応えるためにも私は美少女を演じてきた。

 

 

 佐山雄介は完璧な男子だった。陽気で軽快。運動も苦手ではないらしく運動の部活に入っていないのに体育ではヒーロー。テストでは毎回上位に食い込む。おまけに生徒会に1年生の時から入っていて、それはそれは人気がある。男子にも女子にも。文武両道で良い奴。おまけに顔も良い。モテないわけがない。  

 私は最初、彼を尊敬の目で見ていた。私が頑張ってしがみついているこの地位を彼は地で獲得しているように見えていたからだ。だけれども見ているうちに彼は周りに気を許していないのかなと思うことが多々あった。自分の話をしたがらず相手を立てて、話を振る役に徹することが多く見られた。

 そんな彼が気を許すというか息をしているという顔をするのが、彼の親友である黒木海斗と山田渚沙と話しているときだった。

 彼らとは生徒会で一緒らしく、3人で話す姿や一緒に帰る姿などをよく見かける。佐山君に一番近い女子は間違いなく山田さんだった。そしてあんなにすばらしい佐山君の近くにいる山田さんは彼のことを好きなんだろうなと思っていた。


 さて、ここで私が山田さんに冒頭のセリフを吐いたのは半年前に遡る。

 あれは暑い夏の日だった。私はイカがナワバリをインクで取り合うシューティングゲームのイベントに来ていた。マスクに眼鏡にツインテールという変装をして。そしてそのイベントにいたのだ。佐山君が。彼も変装とまではいかないが眼鏡をして髪型も少し変えていて雰囲気が学校のそれとは違い一目ではわからなかった。しかし、学校でそれはもうとても観察している私には分かってしまった。あ、佐山君だと。

 しかもその大会の個人の部で彼は優勝していた。その姿に、私はキュンとしてしまった。何が良かったって特にはないけれど。ゲームをしている佐山君はとてもキラキラしていてまぶしかった。あの笑顔が自分に向いたらすてきだなと。そう思った。


 そこからの私の行動は早かった。自分でも驚くぐらい早かった。大会が日曜日にあったので次の日には山田さんに突撃していた。

 正直自分の行動は卑怯だなと分かっていた。山田さんは私の頼みを断りずらいだろうし、断らなかったら佐山君を好きとはこの後には言いづらい。唯一の問題はすでに付き合っているというものだが取り巻きの話によると付き合っていないということもあり、私は暴走した。

 後々考えると山田さんにはかなりひどいことをしたかもと思ったが、断られたら諦めるつもりだったので許してほしい。

 そして案の定山田さんは私の頼みを断らなかった。


 そのあとは山田さんの助けもあり順調に佐山君と仲良くなれた。何よりうれしい誤算は山田さんととてもなかよくなれたこと。自分がゲーヲタであることは隠してライトな話を山田さんとたくさんできたのは正直本当に楽しくて山田さんのことも大好きになった。

 流れで一緒にいることが多くなった黒木君は元々あまり話さない人なのか私がいてもいなくても物静かだから気にしなくても良いと山田さんに言われた。

 一緒にいて思ったのが山田さんも黒木君も佐山君もこの3人の近くは息がしやすいということだった。ほとんど素の自分をさらけ出してもこの人たちなら幻滅しないとなぜかそう思えた。

 もちろん佐山君のことは好きだし付き合えたらうれしいけれど、このままの関係が続くのも悪くないのではないかと思い始めていた。もし佐山君に告白して振られたら、この3人と一緒にいられる機会もなくなってしまうわけで。それならいっそ告白しないまま、このまま青春を謳歌するのも悪くないなと思っていた。

 

 そんなぬるま湯精神でいたら、山田さんにキレられた。めっちゃキレられた。本当に怖かった。だから私は決心した。高校2年生の間に佐山君に告白すると……‼


 さて、長い自己説明も終わったところで、これは私が佐山君にきっと告白することになるまでの長い長い1年の物語だ。多分今年の3月までにはおそらく告白する。ちょ、え怖い山田さん怖いよ。顔、あ、やだやめ!……ハイ!今年中に!必ず‼告白します!!

多分続きません。でもいつかは春香ちゃんに告白させたいです。

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