我ら、ナメクジ隊!!
参上ナメクジ隊!
「我らナメクジ隊参上!」
三人の少女達が声を合わせ殺伐とした状況に現れた。
辺りは静まり返り視線は少女達に集まっていく。
一人、男が少女達を睨み付けた。
「なんだお前ら。 状況わかってんのか!?」
そう、完全に少女達は場違いであったのだ。
周囲には大柄な男達が覆面を被りかしこまったスーツを着ている男性に銃を突き付けている。
まさにそこは銀行強盗の現場である。
「おい、ガキ。 死にたくなければさっさと失せな」
そう言って覆面の男は三人の少女の中の一人、一番小柄でおとなしそうな桃色の髪の少女に銃を向ける。
「ご、ごめんなさい。 でも私は銀行強盗は悪いことだと思うんです」
蚊の鳴くような声で少女は答える。
その少女の言葉に苛ついたのか、男は少女の手前の床に発砲する。
「失せろって言ってんだよ! なんだ? 一回痛い目見ないとわかんねぇのかよ」
「あわわわ、ごっごめんなさい!」
「大丈夫だよ桃ちゃん。 あんな臭そうな豚の話は聞かなくていいんだよ」
頭を押さえて謝る少女を宥め、どさくさに紛れて男に悪口を浴びせるのはナメクジ隊を名乗った少女の中の一人赤色の髪の気の強そうな少女である。
「お前、調子に乗るんじゃねえぞ。
誰のことを豚って言ってんだ!」
赤髪の少女は一言、
「あんたのことに決まってるじゃない。 ほんっと、豚臭い。 喋らないで、近づかないで豚が移るから」
「くそガキが! もう許さねぇ、ガキだからって手加減してもらえると思うなよ!!」
罵倒され続けた男は憤激し、赤髪の少女に銃を向け発砲しようとするが仲間の男に押さえられる。
「しっかりして下さい、貴方があんなガキに踊らされてどうするんですか。さっさと盗るもん盗ってずらかりましょう」
押さえられた男は部下らしい男に説得され銃を納める。
そして少女達ではなくスーツを着た公務員に銃を向ける。
「さっさと金持ってこい。 何ならあいつらを殺してもいいんだぞ?」
さっきまで存在を主張し続けた少女達三人を指差す。
……が、一人居なくなっていた。
「ナメクジ隊のことをなめない方がいいですよ」
そう語るスーツ姿の公務員は銃を突き付けられているのに笑顔だ。
「な、なにいってんだお前」
直後、男が持っていた銃が取り上げられる。
取り上げた本人はナメクジ隊の桃色の髪の少女でもなく赤髪の少女でもなく
ナメクジ隊の三人目、銀髪の少女だった。
「…………これ、危ないよ?」
普段から無口そうな雰囲気で口を開く銀髪の少女。
その印象と容姿はナメクジ隊の中の二人と一緒で可愛らしいがやっていることは可愛くなかった。
バリバリと悲鳴をあげながら銀髪の少女に握り潰されていく銃。
最後には原型を留めていない破片たちが少女の掌から落とされる。
「な、なんなんだよ、お前は!」
少女に向かって拳を振り上げるが少女は拳が当たる瞬間に霞がかって消えてしまう。
「…………私はここだよ」
チョンチョンと人差し指で男の背中を小突く。
男は振り向き顔色を真っ青にするが
部下達に焦りながらも今優先すべきことを伝える。
「お、お前ら逃げるぞ!」
しかしその言葉は部下たちには届かない。
部下達は地に倒れ付しそこに立つのは少し攻撃したことで飛び散った相手の返り血で赤に染まる赤髪の少女と桃色の髪の少女。
恐怖で慄く男は末期の言葉を口にする。
「お、お前ら何者なんだ!」
「炎のように舞う紅き花、りん!!」
「も、桃色の戦士、もも!!」
「…………闇夜を駆ける銀の光、こう」
「ナメクジ ウジムシ 悪い奴等はみんな滅ぼす小学4年の少女達
それが
我らナメクジ隊!!!!」
「警察だ! 全員手をあげろ!!」
少女たちが決め台詞を言い終えたあとタイミングを合わせたかのように警察が強盗団(倒れている)を包囲する。
「…………タイミングバッチリ」
独り、こうと名乗った少女がそんなことを呟いた。
そう、ナメクジ隊とは超人小学生の女の子の集まりなのだ!!!!!