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帰還志望の受難生  作者: シロクマスキー
三章 珍獣街パラ=ティクウ
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13話 魔法使い


 グラティア家は、古代帝国の名家たるミーク家を出自に持つ英雄ゴート・ミークが創設した栄えある分家。数多の優れた士官を輩出する軍事色の強い家柄です。

 現家長は軍政次官にしてのエッヘガウ伯爵サバル・グラティア。彼個人の話をすると、軍団長経験やマキシマム計画を立案するなどの活躍、それによる高い評価を受けており、近々属州総督の任命があるという噂まで立っている。

 そして去年の出来事であるが、ジェドという息子の葬儀をされたらしい。


 「だから、俺がグラティア家って何処で聞いたんだよっッ!!」


 じゃあ、目の前にいるのは誰なんだろうか。


 「......精霊がな、勝手に喋ったんだ。」


 修道院長ブライアン・アッシュは口を開いた。


 「精霊から聞いてしまった以上は、自警団の者に裏取りしてもらって、こうやって鎌をかけにきて、確かめずにはいられなかった。」


 「正直、貴族関連の問題を持ち込まれるのは嫌だからな。」


 青い血には火薬がたっぷり。


 「しかし、ここは自由の町パラ=ティクウ。訳ありばかりの来訪者には辟易もするが、彼らあってこその示される愛、君もまた僥倖なのだよ。」


 「...????」


 「まぁ、火のついた爆弾じゃないのなら別に構わない。」


 「...?」


 「パラ=ティクウ側としては外部に介入される余地を持ちたくないが、そうやって臭い物に蓋をするばかりでは自由を失う、それだと本末転倒で。だから、直近の論争点にならない限りは貴族だろうと歓迎するし問題無いってことだ。」


 「...?????」


 「ケツが吹けなくても、外で出した糞を町に持ち込むな?」


 「誰がウンコ野郎だアァッッ!!!!」


 「――――――ああ、もうッ!!!」


 アッシュ先生は姿勢を改めて話を続けた。


 「憂いも無くなったことだし、ということでお前に魔法を教えたいと思う。」


 ジェドは長考した末にこう呟く。


 「...これこそ分かんねぇな。」


 「妥当じゃなきゃ嫌か。俺はこれでいいと思うがね。可能性を試したい、取り戻したい、悲しい、他人を打ち上げ花火にしたい、端から不純な動機だぞ。」


 「自分がパラ=ティクウにやってきた理由ですらある。」


 初めてではないが、彼の前には自分以外の他人がいた。


 「興味があるなら修道院にとっとと来てくれ。」


 魔法使いは世界を洞察することから始まる。誕生から昇天に至るまでの人のあれ、我思う故の存在を支える世界のこれ、即ち、小宇宙と大宇宙のこと。

 ここで言う大宇宙とは神の意思に(そく)した概念的叡智のこと。

 これらは悪魔の業たる魔術を行使する為に必要となる訳だが。


 「暴かれた神秘なぞ既に形無し。」


 「とうの昔に魔法の一部は学問になってしまった。」


 やがて、神すらも殺すでしょう。


 「これから教えるのはそういうものだ。」


 修道院のとある一室にて。同じ数の机と椅子が等間隔に並べられ、教壇に先生、机に生徒、両者のお手元には可哀想な神秘主義者ヤコブス著作の魔法論。

 ジェドが試しに捲ったページでは専門用語の成り損ないに占領されていた。

 今から、ブライアン・アッシュの授業が始まろうとしていた。


 「魔力、霊魂、魔法の順で軽く進めていこう。」


 第一に魔力、神秘を起こす為の力について。


 「魔力には様々な()()()()が存在している。火や水などの各属性、活性魔力と不活性魔力、更には活性化中傾向などなど...。」


 魔法論の5ページ目、目次の直後。


 「そして、こういった多種多様な魔力が世界に満ちている。」


 「我々の隣にある魔力は基本的には不活性魔力である。不活性魔力は活性魔力に比べると属性間の差異に乏しく、魔力同士の反発も少ない、物体に(こも)ることもあれば、魔石といった形で見つかることもある。最も扱いやすい形態と言える。」


 「対する活性魔力はというと全くの真逆だ。飛空艇が空に浮く原理たる活性化中傾向や、これに連なるエーテル圏域、龍脈、千差万別の様相を(てい)す。」


 因みに、何かしらの形で消費された活性魔力はおおよそ不活性魔力となる。


 「少なくとも、この二つの要素を覚えて貰えれば他は問題ない。」


 アッシュ修道院長がジェドを確認すると半分ゾンビになっていた。


 「...この調子で続けるけど、大丈夫か?」


 「あ? あぁ!!」


 第二に霊魂、魔法使いの正体について。


 「生命は『肉体』『霊体』『魂』の三つから構成されている。」


 「その内の霊体と魂、霊魂についてだ。」


 魔法論の9ページ目、挿絵が多め。


 「霊魂には、魔力感知や魔力量や魔力操作から魔法への抵抗力に至るまでぇ、えー、気息という精神エネルギーを帯びるなど、様々な機能が働いている。これら諸事を全部纏めて『霊魂能力』と呼ぶ。呼んでくれ。」


 「霊魂は先程解説した通りに魔法使いの正体とも言える。」


 故に、魔術師の天敵は呪術師となる。

 霊魂は呪いで容易く損なう。


 「魔法から逸れ過ぎないように必要最低限の要点を心掛けてはいるが、しかし、己の専門がこれで終わるとは寂しいな...。」


 第三に魔法、実体化してしまった貴方の意思。


 「ようやくだ。」


 魔法論の18ページ目。


 「魔法を行使する為の手段は数あれど、根本的には、魔力を活性化させてから形成することによって起こしている訳だから、ほぼ魔力操作の話になる。」


 「魔力操作には、基本的な動かす&込めるといった単純なものから、魔法陣を敷く&物質に転化させるといった複雑なものまであるのだが、活性操作と形成操作というものさえ出来れば魔法は起こせる。上手く扱えるかは別だがね。」


 アッシュ修道院長は本を閉じた。


 「では、本日のまとめをしよう。」


 「霊魂能力が高ければ大体なんとかなる。」


 これにて授業終了。


 「次回は実地訓練。今日よりも魔法の出来が良かったら褒めてやる。今回来た理由は知らないが、俺をボコりたけりゃまた来てみろ。」


 「では、さようなら。」


 修道院の敷地出入口付近の段差にて。


 (...つかれた。)


 今朝と同じ体勢で項垂れているジェドと真横にいる猫獣人ニーニャ。


 「楽しみにしていたチキンフリッター? おーい、チキンフリッター? どこ行ったのかにゃー、分からにゃいにゃー、困ったにゃー??」


 「うっせぇ。」


 「あ゛?」


 すかさずニーニャがジェドの頭を掴んだ。


 「なにをすッ!」


 圧力。


 「ア゛ア゛ア゛アアあああああああああ!!!」


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