10話 誰かのいつか-1-
俺は自由の町に産まれた。
寝る前に考え事をするのは習慣だ。
表情が上手く作れないから普段は誤魔化していた。
ある日、両親が借金の話をしていてうるさかった。
かー様に貯金するのが良いって言われたからそうした。
家族からよく食べかけを押し付けられた。
家の近くのアリの巣を基地化しようと試みた。
気に食わない奴を泣かせたら怒られた。
誰もが友達のようでいて、とにかく区別が無かった。仲良くやろうなんて微塵も思ってはいなかったし、意識も無かったけど、そういう性というか。
ただ楽しいだけの時代があったのを覚えている。
...あれから、全員どっか行っちゃったがね。
いつの間にか、かー親が俺にお小遣いをくれなくなった。
本当に感心した。年下のクソゴミが場当たりな言葉でアホな大人を騙した。
婆の肩でも揉んでお金を貯めることにした。
兄が笑いながら殴ってきて鼻血がでた。
俺は兄を殴り返すことにした。
サイコパスな同年代の首を絞めたら何故か気に入れられた。
ババアが俺の金を無断で借りる為に貯金箱を破壊した。
気に食わない奴の頭に石を狙って投げたら予想外にも当たった。
かー様によって家から修道院に通わないといけなくなった。
家から修道院に行くまでのあらゆる視線が怖かった。
自分でも今回は流石にやり過ぎたとは思う。親の手伝いをしなくて済むから皆は羨ましがるけど、俺は凄く嫌で、特別扱いが嫌で、それに一年は長いし、でも相応のことはしたから嫌でも我慢しなきゃならない。
あー、そうだなぁ、あの当時の先生は等身大の人間でしかなかった。
あと修道院には人間観察が趣味のミステリアスな女性がいた。
家に帰ると俺の兄がそこにいた。
それまでの友達は友達じゃなくなった。
あれから一年が経った。ようやく自由になれると思った。
それで、ウキウキで翌年の朝を迎えたらさ。かー様から二年目も行けって言われたんだけどさ。でも、きっと、俺が悪いんだろうけどさ。
もう失うものは少ないけど、なんでだよ。
俺より恵まれた奴の弱音を聞いた。
かー様と兄姉妹は俺がボッチなのを馬鹿にした。
兄と姉が共謀して俺の貯金箱を盗みやがった。
それでも俺は頑張って生きていきたい。目を逸らさないで、昔を抱えて、正直に、誠実に、そういう理想の男を自分らしく突き抜けていきたかった。
親が役に立たないからそう願っている訳じゃない。
あぁ、なんでこうも面倒な事になったんだろうな。
理想の男になりたいのは手段で、運命を乗り越えていこうとする過程で、つまりは不幸に勝ってから死にたいんだよ。




