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帰還志望の受難生  作者: シロクマスキー
二章 深緑の墓場
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6話 墓参りニャ

投稿がおそーーーーくなりました


 現在、ロスト・ララとハラン・ピークの両名はクレシェント大陸の中央付近、レイトフリック高原にあるウィリディスダ―トゥムの森にて冒険中。

 最初こそは、本人達はただ森を横断するだけであったが、現れた暗殺者の存在に加え、森の怪奇現象やギガスを中心とした関係上での誤解により、どうしてかそうなってしまった。

 現在の時刻は真夜中、彼らの周辺は地獄のような寒さ。


 そこでハランは立ち止まり、腕を振ると、風は踊って木の葉は集い、今度はそこに火が付いて、あっという間に焚火の誕生。

 その灯火は闇夜の中に安息を生み出した。

 ロストはそれを求めて近寄った。


 「んん。」


 「?」


 けれども、こうも神秘的な風景で無言のままとは味気ない。

 それを嫌って男は喋り出す。


 「んーん。もし、疑問があるなら聞いてくれやい。」


 ロストは少し前の事を思い返して。


 「...やはり、サジタリアスさんが森全部を把握しているとは思えません。だから、こっそり森を抜けられるのではないでしょうか。」


 「ん、あぁ、奴は森の境目だけを見張っていればいいのさ。しかも、空白地帯(フリーセクト)の方面だけで事足りる。」


 そして更に詳しく。


 「なにせ、お前さんがアーマレントに引き返しても、無魔(デノム)人には聖国の餌食になるのが関の山。だったらもう、出来ることは前に進むだけ、それを奴は知っているだろうさ。」


 これを聞き、ロストは激しく頷きながら。


 「確かに、確かに。」


 それからのこと、彼は旅の事に付いても相談した。

 水筒の件でも分かるように、アーマレントでは慌ただしく飛び出て行った為に、旅の備えや心の準備が出来ていなかった。

 そればかりか、ギタイザモクなんて変な危険生物への知識も足りていない。

 そして彼の信条がこれである。


 (情報集め第一! 好奇心は第二!)


 そんな訳で聞いたのだ。


 「おっ、それなら俺の所属する傭兵団に来いよ。」


 「よ、よ、傭兵団ですか?!」


 軽い気持ちでとんでもない事になった。


 「あぁ、そうさ。俺はとある傭兵団の幹部してんだ!」


 そこで一度、ララは自分が傭兵となった姿を想像した。

 鎧で身を包み、戦った後なのか傷まみれ、ひしゃげた剣を片手にして、ベタベタに血で汚れ、矢で頭部を貫かれたその姿を。

 流石だ、想像の中でさえ負けている。

 実際にロストが戦争へ行ったら大体そうなってしまうだろう。


 (僕って奴は...。)


 それはそうとして、ハランの話にはちょっと可笑しな点がある。


 (ところで、なんで幹部が一人でいるのか。)


 感が良いのかハランは言った。


 「嘘じゃねぇ。普段は単独行動をしていて、ある時がきたら一か所に集まる約束なんだよ。パラ゠ティクウがそれだ。」


 傍ら、ハランは短剣を肉に刺し。


 「で、どうよ。傭兵団に加入すんの。」


 それを焚火で炙っていく。


 「しかし、自分は子供ですが。」


 「んあ関係ねぇよ、戦場に立てば誰だって戦士だぜ。」


 「しかし、自分は賞金首ですが。」


 「よかったじゃねぇか、俺達の団長とお揃いだぜ!」


 ぎゃはははとハランは木を叩く。


 「...自分は役に立ちますか?」


 腕を広げて自分のそれを主張した。

 戦に行かずとも、服は穴まみれ、体は傷まみれ、どうにもこうにもオンボロな状態で、ある意味では彼のしたたかさを表している。

 それを笑ってハランは言った。


 「うーむ、もしかして自信がないのか。」


 そして彼はララを指してこう言った。


 「お前は面白い。それで十分。」


 そして、ハランは肉を食べながら喋り始める。


 「んぐんぐ。なにも、俺らが求めているのは戦力だけじゃない。」


 「笑いさ! だってそうだろ? 傭兵だからって殺し合うだけの人生じゃねぇのよ。食べるし、飲むし、騒ぐんだ。」


 「そんで、稼ぐだけ稼いだら、思い出を手土産に故郷へ帰るのさ。」


 息を呑む、ロストにはそれがあった。


 「ここまで聞いておいてごめんなさい。傭兵団には入れません。」


 それは地球帰還、それこそが彼の目指す大きな夢。

 そして彼は地球に帰ったらやりたい事が一つある。

 しかし、ほんの少しだけ、この世界で生きてみたい気持ちが芽生えていた。


 「そうか。」


 ハランはその内容を聞くこともなく話は終わった。


 「仮眠してろ。見張りは俺がやっておく。」


 「はい、お言葉に甘えて。」


 「日が見えたらすぐに行くぞ。森の異変はもっと東にあるとみた。」


 その頃、サジタリアスは月明かりを手掛かりに銃を磨いていた。

 とんでもなく凍える夜の最中に焚火を使わず、それでいて凍死しないのは、熱魔法で体温を上手く制御しているからだろう。

 そればかりではない、彼を知るにはあと二つ語るべき事がある。


 「そこの猫獣人、吾輩が獣に見えたか?」


 これを聞いたのか彼の背後、猫獣人が木陰から弓をつがえて現れる。


 猫獣人、猫の特徴を併せ持った亜人の一種。


 そして月明かりに照らされて、彼女の逞しく美しい姿が露わとなる。

 青みがかった茶色を基本にして、白い波模様を組み合わせた体毛が、両頬から首の裏、手の甲から肩、背中からお腹、腰から足先までを覆っていた。

 もちろん腰には尻尾、頭部には猫耳がぴょこりと二つ。

 服装は動きやすいように、裾の短い麻のズボンとチュニック、そして薄手の外套で身を包む。


 見た目ばかりではない。


 「高等魔法の熱魔法と並行しながら魔力の感知、それを聖石を持った状態でやるにゃんて、帝国の親衛隊にもそういニャン。この森に何の用ニャ!」


 獣人は共通して、身体能力がかなり高い。

 そして生まれながらに魔力を感知する能力も高い。


 「まさか、魔女狩りだにゃんて言ったり。」


 「吾輩は人間専門の賞金稼ぎ、ここに来たのもその用事。けれど、お主に魔女の生き死にを気にするような事があるのかの。」


 「魔女が暴れたら森で狩りが出来にゃい、それだけだニャ!」


 そう言い放ち、彼女は弓を下ろして走り去っていった。


 (パラ=ティクウの狩人といった所か。しかし、ここもまだまだ森の奥、獣を狩るには浅い場所でも十分だろうに。)


 「ふぅむ、他人の詮索はやめとくか。」


 サジタリアスは目の前の洞窟を見つめた。

 レイトフリック高原は、ルナトリス山脈へ近付くつれて標高が高く、それと同時に地面の高低差も激しくなり、渓間や洞窟の数も増えていく。

 そういった所は魔物の住みかとなりやすい。

 だが、場合によってはそれらを通らなければならない時もある。


 「ここで仕留める。」


 そう言って彼は銃に火薬を詰めた。


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