表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰還志望の受難生  作者: シロクマスキー
二章 深緑の墓場
59/107

4話 魔女の歓迎会


 こちら三人組、現在は森の真ん中で大乱闘。

 ハランは襲ってくる獣の排除、サジタリアスはその補佐役として、戦闘能力の低いロストは木の裏に隠れて考察を続けていた。

 あの激しい戦いに巻き込まれないように。


 (例の鳥がもともとそういう種族なら話は簡単だった。)


 戦場からキノコが逃げ去る。


 「畜生共の世話は楽しいねェ!!!」


 「吾輩も同感だ。」


 いまでも、ロストの真横ではズドンボゴンと戦争が繰り広げられていた。

 現在の襲撃者は蛇と狼の異種間同盟、まさに異様、森全てがまるで敵、木々ですら敵意を宿らせているような。

 その事について、思う所があったのは何もロストだけではなかった。


 「ガハハ!! どうやら、森で何かが起きてるようだが、俺と一緒にそれを覗いてみてぇ馬鹿はここにいねぇのか?」


 こう言いながら、ハランは焦げた狼の死骸で蛇を叩き潰す。

 それが最後の獣であった。

 それで、あの野次馬のお誘いに対して二人の返事はこうだ。


 「お主がいなくなってくれれば静かでより良いな。」


 「えっ?! あっ! 僕は検討しておきます。」


 このつれない態度にハランは仏頂面をして。


 「ふーん、まぁいい。ギルギュセス、行くなら早く決めろ!」


 と、血に染まった剣を背負い込む。

 ロストはより一層緊張が増した。


 (傭兵のハラン・ピーク、賞金稼ぎのサジタリアス、どっちに付いて行けば安全なんだ。僕に詳しくなさそうなハランさん?)


 (いや、自分が信じられない。裏を返してサジタリアスさん?)


 この事態にロスト・ララは悩むに悩んだ。

 森の不思議に接触したいハラン、自分に詳しいサジタリアス、一見してサジタリアスの方が安全なように思える。

 これとは別の懸念として彼は考えた。

 ここから森を抜けるまであと僅か、とは言え、いままで出会った異常が二つもあって、残りの道にだけ平穏があるとは信じられない。

 つまり、サジタリアスと行動したとしても、大なり小なり森の異常な現象を避けて通れないだろうこと

 そうなればハラン・ピークも殆ど同じだ。


 (それは一人で逃げても同様のこと。悩ましい。)


 そこでロストは決断した。


 「僕はハランさんと行きます!」


 彼の動悸は激しさを増す。


 「よく言った! さっそく地獄の窯を見に行こうぜ!」


 「ふむ、では吾輩は先を行くぞ。」


 これを聞いてハランは大喜び、一方でサジタリアスは気に留めない様子。

 それからちょっと数時間が経った頃になる。

 森にあったのは、鼻歌を奏でるハランと、彼に恐る恐る付いていくララの姿、そんな主人が心配でたまらない鞄の中の黒縁猫さん。


 こうも慌ただしい彼らだが、周りには急に襲ってくるような獣の姿はなし。

 一旦、話が落ち着いてきた所で森の情景でも。


 森では木々が天高く空を覆い、日光が当たらない分だけ肌寒さが目立つも、それを忘れさせる程に、この環境の生み出す木漏れ日は美しく。

 その僅かな日当たりに咲く草花の池もまた格別。

 ここに風が吹き込めば、影と花が揺れ動き、これが陸にもサンゴ礁があったのかと思えてしまう幻想的な風景であった。


 「おぉ、珍しい。」


 そこが友達に語りたくなるような場所であるのは間違いなかった。

 だが、ハランの感嘆はそうした幻想に向けられた物ではない。

 彼らが見る物はいつだって荒事、落ち着いた時間はもう過ぎたのだ。


 「この怪我の仕方、見たことがないや。」


 彼らが見ていたのは体中に穴の開いた熊の死骸。

 乾いた血に包まれて、酷く痩せ細った姿で息絶えていた。


 「あれの狩り方は特殊だからな。」


 「あれ?」


 ロストが疑問に思っていると、ハランは指を上に指し。


 「()()だ。」


 ララが上を見ると、やがて大きな瞳と出会った。

 そして、彼の頬に血が垂れ落ち。


 「...えっ? に、逃げ。」


 逃げよう、ロストはそう口にしながらも彼の足は動かなかった。

 恐怖と困惑で身体が強張っていたのだ。


 そこへハランは。


 「大丈夫だ、腹が膨れている内は襲ってきやしねぇよ。普段ならな。」


 と言って、そいつと目を合わせた。


 そいつの名前はギタイザモク、森の狩猟者なり。

 普段は樹木に擬態して獲物を待ち、足下にやってきた生物を脚で一突き、そのまま脚から血を吸い上げてしまう。

 見た目は頭と脚だけの奇抜なもので、樹皮に似た外骨格、大きな頭部と瞳が一つ、後頭部から細長い脚が四つ、脚の関節からは緑色の体毛が生えている。

 数ある脚の内、二つは地面に立つ為に、残りの二つは枝に扮して、獲物を仕留める為の脚と、臓器の詰まった脚である。

 簡単に言うならば、一つ目で四本脚の蜘蛛のような何か。


 ギタイザモクの性格は大人しく、必要以上の殺生を避ける傾向あり。

 何かを捕食した後は特にそうである。

 だが、確かにそうなのだが、彼らの頭上の個体は何やら違う。


 ギリリリ、ギタイザモクが威嚇を放つ。


 「なぁ、なんか興奮してないか?」


 「みたいです、ね。」


 怪物の充血した瞳が彼らを捉えていた。


 「ロストいいか? ゆっくり後ろへ、下がるんだ。」


 珍しくハラン・ピークは逃げの姿勢、戦いたくない理由でもあるのだろう。

 ともかく、これに従ってロストは擬態生物から距離を取る。


 ズドン!!


 そこへ銃声がどこからともなく訪れた。

 これに後押しされ、ギタイザモクは重い脚を振り下ろす。


 「クソっ! あの間の悪ぃ奴め!」


 ハランは恨みを吐きつつ回避行動、彼の真横で地面が抉れる。

 そして反撃、をせずにそのまま逃走。

 一方で、ララの方はギタイザモクから走って逃げて木の裏へ、ここに隠れて腰を付き、粗い呼吸を整えた。


 (あの銃声は間違いなくサジタリアスさんの銃。あっちも戦闘中か?)


 なんて、人の心配をしていると。


 「おい馬鹿! お前の後ろもギタイザモクだ!」


 その声でロストは上を見て、自分の隠れた木が怪物であることを知った。

 だが既に、あの熊を貫通する攻撃が彼の瞳に一直線。


 「あっ。」


 その一撃はとても速い。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ