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王城仕えの爺やですが、王妃様の事を忘れたい!

王城に使えてる爺やの話です。


※爺やは奥さんがいます。

※ロリコンじゃありません。孫に対する愛情のようなものです。

「……い。...じい。......起きて?じい」

私は何か、体を揺さぶられるような感覚に目を覚ます。

そして、椅子に座った体勢のままの事に気がつき、ゆっくりと頭を上げる。その頭は重く。どこか恐れるようにも見える。


しまった。私は寝てしまっていたのか....


そして、頭を上げ終わった所でふわりと良い香りがする。

そこには長い髪を腰まで伸ばした、金髪の少女がいた。

少女は質の良い洋服に身を包ませながらも、そんなの御構い無しとばかりに裾を地面につけながら、屈み、私に目線を合わせようとする。

私が慌てて立ち上がると、少女はくすりと笑う。


「じいも疲れていたのね。ごめんなさい。いつも私のお話相手になってもらって。その分グレンを叱って良いから、これからもよろしくね?」

「め、滅相もございません。それより妃殿下、ご容態は?」

「平気よ?じい、おかしいわね。貴方の方がよっぽど辛そうじゃない」

その少女は堪えられられない。とでも言うように口を押さえてクスクスと笑いだす。


こんなに健康体に見えるが、妃殿下は生まれつき病弱で、陛下お抱えのお医者様でさえただの風邪でも、どれだけの時間の治療になるか、どれだけ重体になるかわからないと言われ、風邪を引かれた昨日の晩は生きた心地がしなかった。


「そうですか。それは何よりです」

安堵する私に妃殿下は口を膨らませる。

「何をおっしゃっているのですか!今のは皮肉ですよ。今日はもうおやすみなさい」

「そのようなわけにはいきませぬ。妃殿下、貴方様は私のようないつ死ぬかもわからぬ、いや。生きているのか死んでいるのかさえ分からぬ老骨を心配していてはなりません」

「じいも分からず屋ですね。ですが安心なさい、もともと今日は休みです」

「私に休みなぞありませんぞ」

「あら?この間グレンが『住み込み王城勤めの者たちにも、1人ずつ交代ならば休暇を取っても良いであろう!ものは試しにやってみようぞ!』と言っていたではありませんか。今日は貴方の番ですわよ」

「陛下....王城の者が1人ずつとは..一周するのに何年かかることか」

「ふふふっ。グレンが飽きる前に休みが入って良かったではないですか」

「私は好きで働いているのですが......」



結局使用人部屋まで付き添ってもらってしまった......寝るか。

妃殿下が付き人でも何でも、無下にすることは許しません。と、全員の部屋に購入したふかふかのベッドに横たわる。

そこでふと思う

妃殿下もそろそろ17歳で成人。そうなれば妃殿下。なんて呼ぶよりも、王妃様。と呼んで差し上げなければな。

そして、少しづつ瞼が重くなる。






私は目を開けられない。閉じた瞼から溢れ出し、年も初老になり、顔じゅうに出来たシワを伝い不規則に顔を駆け回る涙。

目の前の事実を理解した上で、全てを忘れたい。

王妃様(・・・)も目を瞑る。ただし、その表情は柔らかい。優しげで、擽ったそうにも微笑みかけるその表情は、この世の勤めを終えたものとは思えなかった。




「陛下。そろそろ外に出てみてはどうですか?」

「うるせぇ」

良い加減にしろ

「陛下。外には沢山の人々が貴方様を心配して、毎日王城に来ています」

「うるせぇ」

辛いのはお前だけじゃないんだ

「陛下。この間、陛下が気に入った。と言っていた店に新しい女子(おなご)が入ったとか」

「うるせぇ!......この間?」

わかってるよ。そんなこと

「ほら、3日ほど前でしょうか?陛下が酔っ払った勢いで風俗屋に入り、騒いでいるところを妃殿下(・・・)に叱られたではないですか。私も巻き込まれたのですから、忘れたとは言わせませんよ」

「そうか...お前ももうとっくに壊れてんのか」

……わかってるよ。もうあの人がいないなんてこと。


あの日、妃殿下が死んだ日。

原因は、元々体が弱い上に、病気を患っていたため、体力が減っていた。だが、いつもその程度では、翌日あたりにはピンピンしていた。いつも、心配して徹夜して、眠ってしまった私に掛け布団をかけて、「起こしてしまった?」と微笑んでくれて.....いや、この考えは止めよう。話を戻すが、普段はその程度では平気だった。



だが、その日はまだ0歳の殿下の誕生日だった。

つまり、出産したのだ。

体力が減って弱っているところに、出産をしたため、体に負担がかかりすぎた。

王城の皆は心配して、最悪、下すことも考えた。

みんなが。

ただ、1人だけは違った。いや、2人だけ。かな?

私はなんて愚かだったのか。

陛下は皆を止め、頭を下げ、子供を産ませてやってくれ、と言ってきた。

その時私は妃殿下を見捨てるのか。と、そう言ってしまった。

何を勘違いしていたのか。

陛下が辛くないはずがないではないか。

何を見捨てるだ馬鹿馬鹿しい。自分も殿下を見捨てようとしたではないか。

陛下は下すためにも死ぬ可能性が付きまとうのなら。と、産ませてやってくれ。と言ったのに。

その真意を見抜けず、陛下に非難の目を向けてしまった。

『産ませてやってくれ』陛下はそう言っていたのに。



その後、陛下は私を部屋に招きいれ、最初は酒を飲んで王妃様の愚痴をいっていたのに途中から良いところを話し出し、最後には愚痴に戻って。

陛下は怒って笑って、泣いて放心。落ち込んだり喚いたり、嘆いたり喜んだり。短い時間で色々な表情を見せてくれた。

それを見た時に初めて気づいたのだ。

あぁ。この人は王妃様が大好きだったんだな。

と。


えぇ。

わかっております。

そうですね。

すぐに行きます。

ですから、もう少しだけお待ちください。

いえ。すぐに向かいますよ。

はい。これは決定事項です。

そうですか?

...では、私は今日も勤めがありますので。

はい。また───



私はゆっくりと目を開ける。傷だらけで、皆に買い換えろと言われる硬くなったベッドから身を起こし、

陛下の寝室へと向かう。

勢いよくドアを開け、思いっきり口を開きながら布団を取り上げる。

「起きて下さい!陛下!!」


私は、ブリタニア王国、王妃様(・・・)に仕えし執事長。通称、爺や。

今日も陛下に付き添います。

どうですか?題名につられました?(笑)

怒らないでくださいね?人を寄せる題名が見つからなかったのですよ。


今回は名前が分かったキャラはいませんので記載しません。



短編はもう少しありますが、分けたほうが見られると聞いたことがあるので、仕事帰りか、帰った後貼ります。

短編としてならあるので、先に見たければ見てもいいと思います(笑)

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