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悪役令嬢もの書こうとしたらただの悪者令嬢の超重量ストーリーになった件について

今回の目線主(主人公)は前作で名前が出なかった伯爵家令嬢。エリーゼです。

貴族の出で、どうしても悪い方向へ自ら足を踏み入れてしまう。そんな悪役令嬢ものです。

※え。悪役令嬢ってこういうのじゃない。とか、言われると傷ついちゃいます



目線主(主人公)はゲス...とまではいきませんが、悪者です

私は、グレモアリー伯爵家のご令嬢。そういう身分ですわ。まぁまぁ偉い。

ただ、やっぱりそういう地位につくと凄いのは父さまで偉いのは父さま。分かってるつもりでも、どうしても偉ぶっちゃうのよね。



えーと確か今から6年前だから...私が12歳の頃の事ですが。

その日もいつも通り偉ぶっていた私に、とうとう天罰が下ったのですわね。いつも人を追い込み虐めていた私。蔑んでいた私。全部が全部跳ね返ってきた。おまけに暴力もついてね。

あー。全てが全て、自分のしたことの重さ。辛さ。耐えて、耐えて耐えて耐え抜いたところで、全てを理解し、痛みを理解した上で、復讐すればいいのね。


えぇ。完全に意固地になっておりましたわ。

だって、しょうがないじゃないですか!

だって口ではわかっていても! そうやって強がっていないと、意地張っていないと、今にも泣きそうで。辛くて。私が今まで自分だって、とか、みんなは、とか。そう思っていたのに。ただ罵倒され、みんなに寄ってたかって悪口を言われる。それだけのことでもこんなに辛いって知らなかったから。

だってこの人が悪いから。

だって私が正しいから。

今まで理由をつけて人を傷つけて、自分が正義だとでも主張する様に、無意味に人につっかかって行って、最後には泣かれてそれでも尚『泣けば許されるとでもお思いになって?』何て言って。それじゃあまるで、憂さ晴らしじゃない......


だってだってだってだって!

自問自答して、現実逃避して、嫌なことから目を背けて、逃げ出して。

言葉は聞こえないふりができても暴力は出来ない。

結局この人達も憂さ晴らし? 私を虐めてスッキリして、味をしめたから今度はみんなの前で。それでは今度はあなた方のばんね。

せいぜい今だけはいきがってるのが良いでしょう。

……それは誰に言った言葉なのか。


「む?何をしている」

子供っぽい声。

「分からないのか?私の前で下衆な行為を見せるなと言っているんだ」

止めたいのか何なのか。

「知らぬ。そんなこと」

この人の声しか聞こえない。この人も声しか聞こえない。

「いいか?私は待つのが嫌いなんだ」

声の通り子供なのかしら。

「3分だけ待ってやろう」

あぁ、きっと某国のグラサン大佐の様な人なのですわ。

人が去る音が聞こえる

「見ろ、人がゴミ....」

「いや、それはアカン!」

「え」

「え」

それが私と殿下の出会い。ブリタニア王国、第二王子様との出会い。



私はその後、嫌な事があったら殿下に相談する様になった。普段は毒舌、嫌味の殿下だけど偶に気分がいい時がございまして。その時はお話を聞いてくださいますの。

でも殿下、ここ最近はずっと気分が良いご様子。聞いてみるしかございませんわね。


「殿下。ご機嫌麗しゅう」

「む?あぁ、エリーゼか」

「えぇ、エリーゼでございます」

「どうした、何様だ。また何か嫌な事でもされたのか?」

「いえ、最近は特に。それもこれも、殿下のおかげですわ」

「何のことだ?」

「ふふっ、いえ。何でもございませんわ」

そうです。私は殿下と同じ学校に通っておりますの。学力平均値、何か特殊・特攻のある訳でもなく、平々凡々な高学。変わってることは特にありませんが、他の高学に比べて安い。ただそれだけが取り柄の学校。なぜ、こんな学校に通ってるかはわかりませんが、私は殿下がございましたら何処へでも。


そんなことより聞いてください。私の惚気.....になりますのでしょうか?

先ほど、殿下は『何のことだ?』と申しておりましたが、殿下直々に私への暴力等した者にOHANASHI......もとい、お話して、注意してくださったそうですわ。何てお優しい殿下なのでしょうか。

口では罵倒、皮肉の数々ですが、根はお優しい方なのです。


おっと、話がずれましたわね。今はこちらのことです。

「それより殿下?最近、何か気分がよろしい様ですね?」

「む?わかるか?あぁ。顔に出てしまうか」

「いえ、いつも以上に罵倒がキレッキレなのでわかりやすいですわ」

「.....どういう意味だ?」

「まぁ、その話は置いておきまして、殿下が罵倒...もとい、顔に出てしまうほど気分が良いのはいかなる事でしょうか?」


「それはな....」

殿下は何かを言おうとするが、それよりも大事な事に気づいた様に『ハッ』と一声聞こえたか否か。殿下は音速で消えてしまわれた。




「結局見つからなかった....」

殿下、あなたは今何処かしら...

探し疲れたエリーゼには声が聞こえ。その方へふらふらと。そして見てしまった。令嬢は見た。

「殿下?私そろそろ時間なんですけど」

「良いではないか良いではないか」

いや、それ使うタイミング違くない?

いや、そんな事より誰ですのあれ!殿下を着物のなんか、真ん中の部分掴んでアーレーする人にしたあの女誰ですの!


「殿下、そろそろ帰らないとうちの母親に叱られます」

「む?先ほどから殿下などと....名前で良いと申したではないか」

名前よヴァッハ!?

え?何?え?ん?え?あれ?誰あれ?何?その関係?ん?ん?んん!?

「殿下こそ、私の名前、おい。そこの。じゃないですか」

「り、リリ、リリリアーネ!」

「リが一つ多いです。それではまだ名前呼びできませんね」

リが一つ多い?リリリリアーネ!?あ、それ増えてますわ。リリアーネ?なにか聞いたことありました様な。


「それより、殿下。きちんとお友達と仲良くしておりますか?」

「あ、当たり前じゃないか!こう見えても、近所ではムードーメーカー殿下と呼ばれてだな」

「左様でございますか。お友達と仲良くできない人、ましてや友達を傷つける様な人は私、嫌いですから」

……え?何あの小娘。何であんな偉そうなのですか?相手はあの第二王子様ですわよ?え。何であんな偉そうなのです?

「も、もちろん。人を傷つける様なことはせん。神に誓おう」

あぁ、嘘ついてしまわれましたわ。毒舌王子が人を傷つけないとか言ってしまいましたわ。神に誓ってしまわれましたわよ。



──あれ?リリアーネって噂の.........忌子...?



いけません。そう、分かっていても許せない。

私が許すことでもない。そう、分かっていても止められない。

何故、あの者が。何故、私ではないのか。

考えても仕方がない。分かっていても考えてしまう。

なら、一度見てみて、話してみて、じっくりと見極めてみましょう。きっと、何かがわかるはず。

私には真似できない何かが存在するはず。


ど、どういたしましょう。腹が立つ。殿下や陛下と話している時が1番面倒臭そうなのは何故なのですか!

殿下だけでなく陛下にもお気にかけられて何ですの!あの態度は!

一瞬目が合うと、リリアーネは少し笑ったように見えた。


───本当に、嫌な奴。

何となく、自分への警告の言葉の様にも聞こえるが、エリーゼはその警報にも気づけなかった。


私はある日『第二王子様ファンクラブ』のメンバーから衝撃の事実を聞きましたの

それは、もう数度クラブメンバーがリリアーネをお呼び出ししていた。と言うことでした。

……私は思ってしまったのです。それならば私も。聞きたいことがあるから一度参加するだけならば。

いえ!私は話を聞くだけでいいのよ。ただ、舐められないようにメンバーは連れて行きませんと。


あの時、気付くべきでした。これでは元通りではないか。と。


「ちょっと、リリアーネさん?後で少し、お時間くださる?」

「もちろんですわ。私如き名誉貴族出の者が貴方様のような伯爵家ご令嬢様のお誘いをお断りするなどという事はありえませんわ」

そこで、周りがざわつく。エリーゼが話している相手がリリアーネだと気付いたようだ。

私は、その皮肉のような自傷じみた物言いに目の前のリリアーネにも聞こえるかどうかという小さな舌打ちをして、少し文句をたれようと思ったのですが、その後ろから陛下が近づいているのに気づき、足早にその場を立ち去った。


そして、その後、教室にやって来たリリアーネ、廊下で待機させていたファンクラブのメンバーを引き連れて歩き出し、そこで声がかかる。

「あの〜どこに向かうのでしょうか?」

え?何処?何処って...考えて無かった。ど、どうしましょう!

お、落ち着くのよエリーゼ18歳。ここは余裕をもって答えるのよ。相手に答えを求めるのよ。出来る、貴方ならできるわ!エリーゼ!


「ふふっ何処だと思います?」

ぃよぉ〜し!完璧ですわ!凄く余裕を持った答え!

「ふ、フリースペースでお茶会......とか?」

天才か!それだ!....って、フリースペース4階じゃない。もう3階に降りてしまったのに今更どうして『そうですわ。フリースペースでお茶会ですわ』って来た道を戻れますか!

「......冗談がお上手ですわね、リリアーネさん。そんなに面白いから第二王子殿下のお眼鏡にも適いましたのね」

少し意地悪をするつもりが、悔しかったので『きっと』とひとこと呟きながら前を向く。


し、しまったぁ!校舎裏に来てしまいましたわ!これじゃあ完全に虐める気満々じゃないですの!

何か、周りの殺気だったメンバーが手を出さないように話さないと。えぇい行くわよ!

「貴方、どっち?」

何が?え、何が?自分で何の質問がよくわかりませんわ!周りのメンバーは頷いてるけど言った私がわからないのに何を分かっているのでしょう?


え、しかも無言?それこっちも辛いので話して欲しいのですが...

「ちょっと?無視?」

「これは失礼いたしました。ですが、質問の意味がわからず......」

私もわかりませんわよ!何か。何かつながなくてわ。

「全く、頭の悪い人ね。貴方は、万が一にも、億が一にもありえない事ですが、あわよくば、第二王子殿下と付き合いたい。とか、星に込めるような願いを持っているのかいないのか。と言う事に決まっているでしょう」

周りのメンバーは.....


頷いてる!セーーフ!!!

これか!これでしたか!

「は、はぁ。何故、殿下が私の様なものに御話しかけになるのかは理解に苦しみますが、私が殿下に色目を使う事はないのでご安心くださいますよう」

何ですか!それでは殿下が忌子のような嫌われ者を好きになる物好きだとでも言いたいような口ぶり!殿下を馬鹿にするつもりですか!!

それに、殿下と話す時はいつも自分が殿下と対等のような口の利き方をしておいて、私の様なもの!?私には言えない関係だとでも言いたいのですか!!

「ふ、ふ、不敬な!殿下が貴方を気にかけているわけないでしょう!殿下が御優しいから、誰にでも分け隔てなく接してくださるのです!」


ハッ!?そもそも、殿下とそういう関係になりたいのか。聞いた事に関して色目を使う事はない。ですと、色目を使えば落せる。と言っている様なものじゃないですか!

「わ、わかりました。色目を使うとか、そんな考えが浮かぶなんて。あ、あなた。さては本当に色気を使うつもりですね!?」

「いや、そんなつもりはございませんと申しましたでしょう?」

うぐっ....確かに。私の早とちりの可能性も....

「そんな事ありません!絶対に嘘です!」

あぁ、もう!また意地を張って!これではあの頃と同じではないですか!

「貴方が態度を改めるのならばと、貴方とお話をしにきましたが......しょうがありません」

でも、もう引けない。ここまで来ては引くに引けない。


屋敷のベッドにダイブして、エリーゼは1人考える

あぁ、またこうなってしまった。今度は昔と違って暴力までふるって。暴力を直接しているのは私ではない。などと言い訳をするつもりはございません。もう私は、戻れないのかもしれません。

そう言えば、昔こんな事を思った事がございましたわね。

今度はあなた方のばんね。せいぜい今だけはいきがってるのが良いでしょう。

なんて。今度も私の番でしたわね。はぁ。もう殿下に顔向けできませんわ。


そんな事を考えていると、王国騎士だと言うものが屋敷を訪ねてきた。

「こんな晩に何様ですかな?王国騎士殿」

父さまがドアを開け、尋ねる。

「ハッ!私は王国、第二王子殿下直属騎士部隊の者であります!第二王子殿下より、グレモアリー伯爵家ご令嬢、エリーゼ様へお手紙を!続きまして、殿下のご学友であらせられるリリアーネ様より、お手紙と写真をお届けにあがりまし....あ..」

写真を俊足で取られ、自室まで消えてしまったエリーゼに王国騎士は悲しそうな顔をしてから敬礼して帰って行った。


殿下からのお手紙。その言葉だけが頭の中をぐるぐるぐるぐる。

さぁ、開けよう。と、そこで気付いた。

もし、これで酷いことが書いてあったら。自分は立ち直れるだろうか。もう、誰を頼って生きればよいのだろうか。それでも、優しい殿下ならば。私と殿下の付き合いならば。と手紙を開けてしまった。


『私だ。おい、エリーゼ聞いたぞ。お前、リリアーネに酷い事をしたんだってな。お前は昔、同じ事をされていたよな?同じ事をしてもいいのか?昔されたから、痛みを分かっているから。だから良いのか?

自分でしたことの重み。された側の気持ち。全て理解したのではないのか?だから今まで私に相談はしても、報復はしなかったのではないか?エリーゼ。君には失望したよ。 最後に一つ、リリアーネにはきっちり謝れ。僕からは以上だ』


それを読み終わると....いや、正確には読んでいる途中から涙が溢れ出していた。それはとめどなく。それは限りを知らず。

そこでようやく考え至る。殿下が自分の話をよく聞く様になったのは、リリアーネが友達を大切にしないものは嫌いだと言ったから。ただそれだけのことだったのではないか。と。だが、それを思うともっと悲しくて、切なくて。ただただ、頬に冷たい感覚が残る。

そして、そのままベッドに倒れると、頭で何かを潰した。カサッという音、頭に少しチクリと刺さる紙の角。

そこで上体を起こす。確かリリアーネからも手紙が来ていた。どうせ嫌味だろう。だが、何とは無しに見なくてはならない気がして、その衝動のまま、手紙を見る。


『エリーゼ・グレモアリー様。なんか、殿下は厳しいこと書いてそうだから言っておくね。あの子はアホだから。友達とかできないし、出来てもすぐ嫌われるし。だから、エリーゼさんと友達になれたのは嬉しかったんだと思うよ?だって、私と話してる時も「エリーゼが、」とか「僕の友達は」って(笑)友達1人しかいないから丸わかりなんだけどね(笑) エリーゼさんも、昔同じ体験したんだってね。それなら、どれだけ辛いか。わかるよね?きっと、今もその事で悩んでて、自分を追い込んだり、苦しんだりしてるんだよね。それなら、私に謝罪の気持ちとして、友達になってくれるとありがたいかな。ほら、私って友達少ないからさ(笑)

それと、殿下も落ち込んでるみたいだし殿下の友達、やめないでくれるとありがたいです。 リリアーネ』

な、何ですの?この圧倒的聖母感。これは...負けちゃいますわ.......


と、そこでまたまた気づく。ん?あれ?何で殿下直属の親衛隊がリリアーネさんの手紙を.....?

あ、そう言えば写真もあるって───

写真を見て絶句するエリーゼ。


写真には、嫌々土下座させられている殿下と、何か焦った様子でリリアーネさんに話しかける陛下に、『ごめんなさい』と書いた紙を持って額に青筋を浮かべて微笑むリリアーネさんが.....


殿下に何させていますの!?とか、リリアーネさん何者ですの!?とか、色々言うことはあるはずなのだが、エリーゼはこれだった。

「何で貴方が王城にいますの!?」

何か、先を越された感じで腹が立つ!

いつの間にか、先ほどの悲しみなど吹き飛んでいたことにエリーゼ本人は気付かない。

「貴方には絶対に負けませんわよリリアーネさん!こぉんの、ちぃくしょぉぉぉぉう!!」

その夜、ブリタニア王国全土に少女の声は響き渡った。




その後、紙とペンを用意し、机と向き合うエリーゼは紙に友達。と書いては捨ててを繰り返す。


「友達...かぁ」

その呟きは彼女の耳に心地よく響いた。

今作も、生暖かい目でご観覧してくださいましたでしょうか?

今作で名前が出たのは

エリーゼ・グレモアリー

だけですので、前作と合わせて、現時点で名前がわかるのは

リリアーネ(転生王妃)

エドワード(男性教授)(名前だけ出演)

エリーゼ・グレモアリー(今作目線主)

になります。

今後もシリーズは続きますので、高評価お願いします。

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