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職業(ジョブ)がロリコンでした。  作者: とおか
四章「迷路の街セメカインスト」
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第86話「報告」

「あ、あの、冒険者のお兄さん……」


クロネの先導のもと居住区に戻っていると、お姫様だっこされている女の子が恐る恐るといった感じで声を掛けてきた。


「なんだ?」


「その、さっきは突然抱きついてごめんなさい」


「そんなことか、気にしなくてもいい」


幼女に抱き付かれて嫌なはずがない。


「でも、その……汚かったし」


「それも気にしなくていい」


糞尿(アレ)は彼女の所為ではないんだからな。


それにすぐ洗ったからな。


「でもね、あのね……おしっことかうんちは仕方なかったの」


「何かされたのか?」


まったく気にしていないのだが、言い訳したそうだから聴いてあげよう。


幼女の言い訳は、直接的でないにせよ何か幼女の欲しているものが含まれているのだ。


「うん……変なお薬を飲まされて、そしたらお腹がぐるぐるになって……」


話を聞く限り、インプは下剤を使ったようだな。


また、喉に手を突っ込まれ無理やり吐かされたらしい。


どこかのホラー小説で食人族が人を食べる際、すぐには食べずに数日間水だけで生かすという話があったが、それは胃腸の中身を無くさせるためで、インプの行動はまさにそれが目的だったのだろう。


そして彼女の言い訳には、汚い女の子だと思われたくないという切なる想いがあるように思えた。


「そうか、インプに汚いことをさせられた(﹅﹅﹅﹅﹅)んだな。でも、俺が洗ったから大丈夫だ。まったく汚くないよ」


「ほんとに?」


「ああ」


俺の予想は正しく、女の子は心底安心したように笑った。


「あのっ、わたしエルイーズって言います。ルーって呼んでください。お、お兄さんの名前はなんですか?」


「俺か? ハヤトだ」


「ハヤトさん……」


エルイーズは、俺の名前をつぶやきしばらくぼーっとしていた。


これは睡眠不足だろうか。あんな手足を縛られた状態で満足に寝られたとは思えないから、おそらくそうだろう。


その証拠に、暫くするとエルイーズは寝息を立てていた。



◇◇◇



眠った彼女をギルドまで連れて行き、あったことを報告する。


「インプですか⁉︎」


「ああ、ゴブリンを更に醜くしたような見た目に蝙蝠の翼が付いていた」


そう言って証拠になるだろうと思って剥ぎ取ってきたインプの翼を差し出す。


「間違いなくインプですね。ですがこんなところにいるはずが……、まさかカタストロフでしょうか」


カタストロフ、魔物の沸き方が変わってしまう災害だ。


「いや、周囲に他のインプもいないようだったしどこかから飛んできたんじゃないか?」


「インプは普通飛べないんですよ。まれに《飛行》のスキルを持っているインプもいますが、今回のインプはそれですかね」


暫くは冒険者に向けて調査依頼を出し、様子を見ることになった。


自作自演を防ぐため俺は調査依頼を受けることはできないが、幼女が攫われる恐れがあるなら依頼でなくても調査はするつもりだ。



その後、できれば依頼者が来るまで待っていてほしいと言われたから快諾し、眠っているエルイーズの近くに座って待つこと十数分。


人組の男女が慌ててギルドに入ってきた。


受付と少し話をし、俺たちの方に向かってやってきた。


二人は思った通り、エルイーズの両親だった。


彼らは寝ている娘の容態を確認すると、俺に向き直って何度もお礼を言ってきた。


「娘は魔物に攫われていた、と聞きました。できれば、何があったか教えて下さいませんか?」


俺は、彼女を見つけた時の様子を偽りなく詳らかに話した。


嘔吐物や糞便で汚れていて酷い有様だったこともしっかりだ。


そこで母親の方が疑問の声を上げた。


「あの、娘はかなり綺麗で悪い臭い一つしなかったんですけど……」


「ああ、俺は水魔法が使えるんだ。身体や髪の毛の汚れは聖水で洗った。その点に関しては娘さんの裸を見てしまって申し訳ない」


「いや、わざわざ聖水まで使って身体を洗って頂いて……。報酬は1000エソ上乗せしておきますね」


「いや、俺がしたくてしたことだ。報酬はそのままでいい」


すると二人は驚いて顔を見合わせた。


「すいません、意外だったもので。どうやらあなたは普通の冒険者とは違うようだ」


「そんなつもりはないが」


少しムッとしながら言うとエルイーズの父親は慌てて言い直す。


「ああ、悪い意味ではないです。冒険者は大抵金に目ざといのですよ」


ああ、そういう意味か。


まあ俺が金を求めないのは、洗ったのが幼女だったからなのだが。


幼女のためにしたことに見返りを求めるのはナンセンスだからな。


幼女じゃなければ迷わず報酬を受け取っていただろう。


それに、


「女の子に優しく、は基本だろ?」


「ははは、あなたはユーモアもあるようですね。では、娘が心配なので今日はこれにて失礼します」


「娘を助けていただきありがとうございます」


そして俺たちは通常通りの報酬を受け取り、宿に戻った。

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