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職業(ジョブ)がロリコンでした。  作者: とおか
一章「異世界」
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小話「ハヤトお兄ちゃん(2/3)」

次話更新は本日夜7時です

わたしは目を覚ましました。


そう目を覚ましたのです。


「あれ……わたし生きて……る?」


やっぱりあれは夢だったのかな……そう思った時、


「調子はどうだ? 痛むところはないか?」


記憶に新しい、かっこいいお兄さんに声をかけられました。


(あれ、この人は夢の……え? 夢?)


困惑しながら目を見ていると、お兄さんはわたしの前にしゃがみました。


目線の高さが一緒になって、顔が近くなって嬉しくなりました。


「ゴブリンに襲われていたんだが……憶えているか?」


「えーと、う、うん。覚えてる」


瞬間、あの時のことを思い出しました。


思い出しただけで、思わず体が震えるほどの恐怖が襲ってきました。


「そうか、辛かったな。だがもう大丈夫だ。安心しろ」


今までかけられたことのない、とても優しい言葉でした。


とってもとっても安心できました。


すると溢れそうになっていた恐怖が爆発し、彼の胸に飛び込みました。


背中がさすられ、ますます抑えが聞かなくなりました。


そしてふと我に返り、彼の体から離れました。


(はうぅぅ〜抱きついちゃったよう〜)


わたしの心臓はドキドキです。


しかし冷静な部分もあって、助けてもらったということもその時思い出しました。


助けられたらお礼をしなければダメです。


そうしないとたとえ生き残っても悪評がついて生きにくくなる、というのは奴隷商のおじさんの言葉でしたか。


そして誰にも助けて貰えなくなるとも聞きました。


だから彼にお礼をしないと、本当に誰も(﹅﹅)わたしを助けてくれる人がいなくなってしまいます。


でも奴隷であるわたしがお金を持っているはずありません。


「あの、わたし……えっとその、お金とか、ない、です」


「お金?」


お兄さんが聞き返しました。


「えっと、助けてもらったらお金を払わないといけないから……」


「気にしなくていい、俺が勝手にやったことだ」


わたしはそう聞いて安心しました。


「もしお金を要求したらどうするつもりだったんだ? 安心しろ、もしものはなしだから」


わたしは奴隷商のおじさんが言っていたことを思い出しました。


「お金がない時は体で払う、教えられました」


一緒のお布団に入って、身体を重ねるといいらしいです。


あれ? 一緒に寝て貰える上に、抱きついても許されるなら、逆にわたしがまたお礼をしないといけないんじゃあ……


「体で払え」るならそうすべきでした。


でも一度お礼を断られているので、しつこく聞くことはできません。


「誰だ、そんなこと教えたやつは」


「どれいしょうのおじさんです」


「奴隷商?」


そういえば、わたしが奴隷であることを彼は分かっていないのかもしれません。


奴隷の首輪をつけていないので、背中の奴隷紋を見なければ奴隷であることはわかりません。


わたしは奴隷であることを明かすために服を脱ぎました。


「あ、あれ? 痣が無くなってる」


今日作られたはずの痣が綺麗になくなっています。


そして同時に、ゴブリンに殴られた腕が痛くないことに気づきました。


折れたはずの腕も嘘のように治っています。


「ああ、俺が治したからな」


嘘ですよね⁉︎ 骨折はレベル5のヒールでも直すのが難しいのに!


どうしよう、やっぱりお礼がいるんじゃあ……


「えっと、わたし――」


「大丈夫だ。お金は要らない。それよりどうして服を脱いだんだ?」


あ、奴隷紋を見せるために脱いだのを忘れていました。


とりあえずお礼の話は後回しにして、わたしは背中を見せました。


「見てください。背中に刻印があります」


「それで?」


「わたし奴隷なんです。生まれた時からの。そこで教わりました」


これで彼に奴隷であることを伝えられました。


でも、奴隷の怪我を治すというのは、つまりせいどれいにするということです。


せいどれいは、嫌なことや恥ずかしいことをさせられるそうです。


嫌なことはやっぱり嫌ですし、恥ずかしいことも嫌です。


わたしは、すこし身構えました。


「なるほど、辛かったな」


しかし、かけられたのは優しい言葉でした。


「あの、せいどれいにしないんですか?」


「は?」


「怪我を治したってことは、せいどれいにするんじゃないんですか?」


「なるほどわからん」


どうやらお兄さんは、奴隷のことをまったくといって知らないようです。


わたしは、おじさんが言っていたことを教えました。


お兄さんはふんふんと頷きながら聞いてくれて、話していてとっても気持ちよかったです。


いつも、おじさんが鼻を高くしていろいろ話しているのを不思議に思っていましたが、すこし納得できました。


その後、せいどれいにするつもりがないことをちょっと飽きるくらい聞かされたあと、どうしてこの森にいたのかを聞かれました。


街へ行く途中で放り出された話をすると、彼は顔をしかめました。


わたしの話を聞いて怒ったりして貰えるのが嬉しくて、つい、いろいろと話してしまいました。


それでも彼はちゃんと聞いてくれます。


本当に優しい人です。


わたしは亜人として生まれたことを何度も悔やみましたが、今は亜人だったから囮に選ばれ、結果彼の優しさに触れることができたと思うと、すこし亜人でよかったと思えました。


でもあれ? 亜人に優しい人間なんているの?


――これなら目障りな耳が見えねえな――


そういえば、今、わたしは獣の耳が見えていないんでしたっけ。


「お前は奴隷商の所に帰りたいか?」


そう聞かれ、帰ったら彼に会えなくなると思って首を横に振りました。


(できるならこの人と一緒にいたいな)


「じゃあ俺の奴隷になるか?」


思いが通じたのか、お兄さんはすこしためらいながらも魅力的な事を言いました。


わたしは、この機会を逃すまいと、全力で首を縦に振りました。


そしてわたしは、奴隷の契約の仕方を教え――


契約(コントラクト)


晴れてお兄さんの奴隷となりました。


「そういえば名前を聞いていなかったな。俺は大鷹隼人――いや、ハヤトだ」


「クロネです。ふつつか者ですがよろしくお願いしますご主人様」

感想・ご意見・誤字脱字などなど随時受け付け中!


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