第79話「スライムの味(魔力)」
めぼしい物を持って屋敷を出て、昨日と同じように屋敷の裏で食べ物を食べる。
そこで結界の便利さに気付かされた。
腰くらいの高さの結界を張って、そこで肉を切ったり、
火の上に熱を透過する障壁を張り、その上で肉を焼いたり、
大きさの違う円柱型の結界を組み合わせて椅子と机を作ってその上でご飯を食べたり。
「ハヤトにぃ、結界ってこういうものじゃないと思うの」
ミズクが右側から首を傾げている。
「いいじゃないか、便利だし」
「そこは否定できないの」
そうして一日は暮れていった。
◇◇◇
翌日から再びセメカインストに向けて歩き始めた。
「迷宮市街、楽しみだな~♪」
ククラは、朝ごはんに話してからずっとこの調子だ。
生まれて初めての町だ、そりゃ楽しみだろう。
そうでなくてもククラはホーンデッドマンションの外に出るのは初めてなんだからな。
ボサボサで薄汚れていた長い髪も、水魔法による浄化と、さらに《ロリ整然》の加護による効果で見違えるほど綺麗になり、水を乱反射する金の川のように輝いている。
《ロリ整然》の効果として、幼女の魅力を引き立てるくせ毛などは治らないようになっているのもあって、くるんとアホ毛があるのもグッとくる。
と、気配察知の範囲にスライムが入ったのを感じた。
「この先にスライムがいるけどどうする?」
「スライム? 食べてみたい!」
「分かった、遭遇するように進もう」
しばらく進むとスライムに遭遇した。
「動きを止めればいいんだな?」
「うん」
「よし、分かった。キューブ!」
のろのろと迫ってくるスライムを結界の中に閉じ込める。
「外からだったら問題なく触れるぞ」
「マスター、ありがとう!」
ククラはスライムの魔力を吸い始める。しばらくするとスライムが震えだし、ぐったりと地面に広がり始めた。
「うーん、ほとんど味がしない。水みたい」
「まあ、なんとなく水っぽそうだしな」
魔力を吸われたスライムはクロネが短剣で切っただけでも倒すことができた。
「ククラならスライムも倒せるんじゃないか?」
「え、ほんとに? ククラにも魔物倒せるの?」
「あれ? ケープゴート倒してなかったっけ?」
「ううん、いつも鎧で動きを止めた後に魔力だけ吸って逃げてたの」
そうだったのか。
ちなみにその鎧は俺たちの後ろで荷物を背負っている。
ククラが申し出たのだ。
マスターのお手伝いをするのが偶人の仕事なんだとか。
ククラの体に負担が掛かったりはしないみたいだから頼むことにしたのだ。
「よーし、どんどん食べちゃうぞー!」
ククラがやる気になっているから、いつの間にか広げられるようになっていた気配察知の範囲を広げ、積極的にスライムを探してやる。
スライムが現れると、ククラはスライムの周りをぐるぐる回ってスライムの攻撃から逃げながら少しずつ魔力を吸い、最後には持たせたダガーでスライムを倒した。
「やったー♪」
「すごいぞ、ククラ!」
褒めてやるとククラは、すごく嬉しそうだった。
「ククラちゃんかわいくて強いです!」
「なのなの」
気が抜けてしまうようなふにゃっとした笑顔に幼女共々和まされながら、ゆっくりと旅路を歩んでいった。
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