第76話「鎧」
遅れてしまって本っ当に申し訳ないです!
言い訳すると、テスト勉強()で寝落ちしました
魔法を練習していて、身体は通り抜けないが服は通り抜ける障壁を作ったり、片面からは通れるが逆からは通れない壁を何度か作っていると、結界魔法のレベルが2に上がった。
俺が作ったような特殊な結界は、条件障壁と呼ばれるもので、レベル2から使えるものだ。
いや、条件障壁が使えるようになるとレベル2になると言ったほうがいいな。
まあ、『はじめての魔法系スキル』という本によるとどちらでもあるそうだ。
加護 《このロリコンどもめ!》で少なくとも実力は倍になっているから凄くスキルレベルが上がりやすい。
しかし問題は、この屋敷の結界をどうにかできるかということだ。
本によると、二つの結界が重なっているとき、重なっている場所では両方の効果が発揮される、という。
これを逆手に取れないだろうか。
具体的に言えば、屋敷の出口に、どんなものでも通り抜けさせることができる結界を張るのだ。
通さない効果と通す効果両方が発揮されたとき、引き算的に考えて、効果がより強かった方の効果が残る。
そして結界を抜けた後、俺が張った結界を解けば、屋敷の結界は元どおりになる。
よし、効果を上回れるか分からないが、取り敢えずやってみよう。
三人が童話を読み終えるのを待ってから、部屋を出た。
◇◇◇
部屋を出た直後。
「お、お兄ちゃん、鎧が……」
振り返ると、後ろから部屋にあった甲冑がこちらに歩いてきていた。
「なんだこいつ、魔物か?」
しかし鎧から魔物の気配はしない。
はじめて気配察知がおかしくなったかと思ったが、その理由はすぐに分かった。
「あ、これ? ククラのスキルで操っているだけだよー」
そういえばククラのステータスに、傀儡操作というスキルがあったな。
「傀儡操作ってどんなスキルだ?」
他に気になることが多すぎて、すっかり聞くのを忘れていた。
「えっとねー、近くにいる人形を動かせるの」
そのまんまだな。
「この能力のおかげで今まで生きて来れたんだー」
俺は、思わずククラを振り返る。
そうだ、普通はこんな幼い子が魔物の巣窟で生きていられるわけないんだ。
「辛かったな、よく頑張った」
「えへへ、うんっ!」
頭を撫でてやると、ククラは嬉しそうに笑った。
「クロネも頑張ります!」
クロネ、撫でて欲しいのは分かったが、何を頑張るんだ?
まあいい。
取り敢えず撫でてやると、クロネの顔がにへっと緩んだ。
すると、気配察知に物欲しそうな気配が引っかかった。
「……よしよし」
嬉しそうにはにかむミズク。
そのとき、今度は気配察知に突如魔物が現れた。
しまった、湧く可能性もあるのに魔物の気配が無いから油断していた!
「みんな、前に魔物がいるから気をつけろ」
「はいっ」「分かったの」「え、魔物?」
首をかしげるククラ。
「俺は気配察知というスキルを持っていてな、魔物の存在が分かるんだ」
「マスター凄い!」
気配のする方に向けて水魔法を放ち、湧いたばかりのケープゴートを倒した。
「魔法も使えるんだ! すごいすごい!」
「そうです、お兄ちゃんは凄いのですっ」
「ハヤトにぃは凄いの」
幼女にすごいって言われると他の誰かに言われるよりずっと嬉しいな。
でも俺は、言われるほど大してすごくはない。
「俺は、クロネやミズクのほうがすごいと思うけどな」
亜人差別や他にもいろんな辛い経験を潜り抜けて来たんだ。そんな幼女、尊敬せずにはいられない。
「ねぇねぇねぇ! 二人はマスターとどういう関係なの?」
はいはいはいっ、と挙手する小学生のような勢いでククラが身を乗り出してきた。
「わたしたちは、ハヤトお兄ちゃんの奴隷です」
「なの」
「妹とかじゃないの?」
「うん」「なの」
「えー、クロネとマスター似てるから妹かなって思っちゃった」
「に、似てますかっ?」
「うん、髪とか眼とか一緒だよ」
「~♪」
ああ、確かに俺もクロネも黒眼黒髪だな。
それにしても、俺に似てると言われただけで凄く嬉しそうだな、クロネ。
目が会うとクロネは俺に飛びついてきた。
クロネは本当に甘えたさんだな。
「さあ、そろそろ動きだそうか」
放っておくといつまでも動けなさそうだったから、優しく肩を押してクロネを離す。
クロネも満足したのか素直に離れてくれた。
そして再び出口に向けて歩き始めた。
ガシャ、ガシャ、ガシャ、……
少しうるさい鎧と共に。
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