第75話「障壁」
年齢層が低いのは都合です
人と魔物について詳しく書かれた人魔大全には、偶人と操者についてこう書かれていた。
『……操者は、うまく関係を築かないと、魔力を吸い尽くされるだけの存在になり果ててしまう……』
考えてみると、かなり恐ろしい。
魔力が減ると倦怠感や頭痛、耳鳴りなどの症状が出るが、絶えず搾り取られるとなると、それに悩まされ続けるということだ。
しかし要は、いい関係を築けば解決すると言うことだろ?
幼女を喜ばせるのは、職業柄当然しなければならないことだ。
それに死の可能性が出来ただけということ。
やるべきことは変わらない。
だが、
「そうなるとククラを屋敷から連れ出せないのは辛いな」
偶然で強制ではあるが関わってしまったのだ。
Q:幼女が幽閉されている状況があったらどうする?
A:助け出す。
「ククラは、マスターの魔力があればそれでいいよ?」
「そんなことはないだろう、この屋敷に時々響く悲鳴はククラのだろ? ずっと一人で怖くて寂しかったんじゃないか?」
「うん……でも出られないし……」
それなんだよな。
何か結界を破るような力があれば、ククラを助けられるのだが……
すると脳内に幼女の声が響いた。システムメッセージだ。
『スキル《結界魔法》を習得したのです』
……えっと、このタイミングでのこのスキル、明らかにククラを助けるためだよな。
神は言っている。
幼女を救えと!
「結界を抜けられるかもしれないぞ」
「ほ、ほんと?」
「ああ」
「さすがハヤトにぃ、結界もできるの」
「お兄ちゃんすごい!」
「ところでククラ、この本はどこにあったんだ?」
「二階の本がいっぱいある部屋だよ。気になった本とかは全部、地下室に持ってきてるけど」
「見せてくれるか?」
「いいよー」
棚に積まれた本を取って渡された。
『妖精のお姫様』、『三匹のウサギ』、『はじめての魔法系スキル』、などなど……
童話が主なのは、幼女だから仕方ないな。
ちょうど魔法系スキルのことを取り扱っている本があったから結界魔法について載っていないか探す。
「そういえば、どうしてこの部屋なんだ?」
俺は、本をめくりながら聞く。
「この部屋って?」
「見た感じここを拠点にしているみたいが、ここは物置だろう? 他にベッドがある部屋もたくさんあるのに、どうして地下室にいるんだ?」
「それは魔法の道具の所為だよ。ほらこれ」
ククラが差し出したのは鞘に収まった宝飾の多い短剣だった。
「これには魔物を出ないようにする力があるんだ~」
「へぇ~、そんなものがあるのか」
マジックアイテムと言うやつだな。
「でも力が弱くて、大きい部屋だと効果がないの」
「なるほど、だからここか」
確かに貴族の屋敷だけあってどの部屋も広かったな。
その点、地下室は狭い。
「かなり前にこの屋敷に来た人が、一階の部屋に飾ってあったこの剣を見てそう言ってたのを聞いたの」
ほう? 鑑定スキル持ちだろうか。
転生物の話では定番のスキルだが、相手のステータスを覗くことができるのだろうか。
まあ、今はどうでもいいな。
「前にも人が来てたのか、どうしてその人に助けを求めなかったんだ?」
「美味しくなさそうだったから」
「え?」
物騒な言葉が聞こえたきがする。
「魔力がここの魔物より不味そうだったから」
ああ、そういうことか。
魔力を吸って生きるんだっけか。
「外に出たら他にも多くの人や魔物に会う機会があったんじゃないか?」
「あ! それもそうだね」
どうやらククラは、魔力の味のこととなると周りが見えなくなるようだ。
結界魔法について書いてあるページを見つけたから、丁寧に読んでいく。
結界魔法は、イメージしていた通り範囲を指定してその内部に特別な効果を持たせる魔法だ。
この本によると、レベル1は、時間で消滅する透明な障壁を作れる程度だが、レベル3になると結界内部の浄化ができるようになる。
この屋敷に張られている結界は、条件障壁と呼ばれるもので、障壁に通れる条件がある。これは、レベル2から使えるようだ。
結界を破る方法としては物理で破る方法もあるにはあるらしいが、現実的でないため、普通は結界魔法スキルを持っている人が解除するらしい。
解除できるかどうかは、結界の強度と解除する人の力に依るみたいだが。
三人には本を読んでいてもらって、俺は結界魔法の練習をする。
まずは、最も単純な結界である障壁を作ってみよう。
手の中に立方体の障壁をイメージする。
「キューブ」
お? 目に見えないが、手に何か硬い感触が。
成功だ。意外でもないが、動かす事は出来ない。
しばらくすると、手にあった感触は無くなった。
障壁が消えたのだ。
もう一度障壁を作る。
試しに握ってみるとすぐに砕け散ってしまった。
しまった。強度をイメージしてなかった。
持続時間も合わせて考えながらもう一度。
そんな風にしながら結界魔法を練習した。
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